紋切型辞典 (岩波文庫 赤 538-10)

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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003750131

作品紹介・あらすじ

本書に編まれた項目は、衣服、飲食物や動植物に関するもの、礼儀作法、身体と病気についての俗説、芸術家にたいする評価など、多岐にわたる。フローベールはその記述に様々な手法を用いて、当時流布していた偏見や言葉の惰性、硬直した紋切型の表現を揶揄し、諷刺してみせた。「辞典-無知な人間のために作られたもの」。

感想・レビュー・書評

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  • 『紋切型辞典』これがまた面白い。ついでにフラ語の勉強にもなる。

    岩波さんの書物案内によると
    --ここに編まれたおよそ1000の項目は,衣服,飲食物や動植物に関するもの,礼儀作法の規範,身体と病気についての俗説,芸術家,歴史的人物の逸話と彼らの評価など,多岐にわたる.フローベール(1821-80)はその記述に様々な手法を駆使して,当時流布していた偏見や言葉の惰性,硬直した紋切型の表現を揶揄し,諷刺してみせた--

    と、まぁ、このとおりなのであるが、『紋切型辞典』の着想をフローベールは早くから抱いていたらしい。
    ジュリアン・バーンズが『フロベールの鸚鵡』という本を20年ほど前に書いているが、このなかに、『紋切型辞典』の形式を真似、アルファベット順にユーモアたっぷりの簡単な『紋切型辞典』を書いている。こちらもアイロニーが効いていて楽しい。

  • 慣用句の中には、語源のよくわからない変な言葉が多い。そんな言葉たちにツッコミを入れたらどうだろう?あるいは、人々の思い込みを一つずつチェックして言ったらどうだろう?それらを辞典にしてみれば、あっという間に「笑い」の辞典になるだろう。

  • 面白い。
    否定的な気持ちが込められたある種の鬱憤ばらしなんだろうか。
    日本語訳がやけにユーモラスに感じてしまう。
    でも毒がある。
    意味の解らない項目も多々あるけど、思わず声に出して笑ってしまったり、ニヤニヤしてしまった。

  •  表題を一見して、当時の人びとのお決まりの言い回し(”今日は天気がいいですね”みたいな)を揶揄しているものだと思ったのですが、それはほんの少ししか当たっていませんでした。待ち受けていたのは「紋切型」どころではない、無責任な決めつけや陳腐な表現の数々でした。著者のいう「それだけで礼儀をわきまえた感じのよい人間になれる」言葉が集まることによって、とんちんかんな辞典が出来あがっているというところにこの本の面白さがあると思います。
     解説を読んでから読むのが楽しみやすい読み方かもしれませんが、あえて解説を読まず、あらすじもあまり読まずに本文に入ると面白いかもしれません。なんといっても最初に待ち受けているのが「アイスクリーム [glace] 食べるときわめて危険」ですから、驚き倍増です。

  • こういう本の構成は面白い。中身や解説そのものについては微妙。すごい偏見の数。特に芸術家近辺の欄が結構ひどい。なんか個人的な恨みでもあるんだろうか。

  • なんとなく本棚から出して持っていったらするっと全部読めてしまった。
    なかなか手厳しい本である。例えば

    ○怪物

    という項目があって内容は、

    無秩序(アナルシー)という怪物(*)。
    ≪社会主義≫という怪物。
    以下同様にして、恐怖を覚えさせる体系をすべて怪物と呼ぶべし。
    この怪物を打倒するよう努めること。
    (*)政治演説において古くから使われていた紋切型の表現。

    となっている。

    当時の政治家がなにかを怪物に例える表現をよく使っていたのだろうか。
    「ああお決まりのあの文句ですね」と茶化す意識も働いているし、「打倒するよう努めること」とちょっとユーモラスにも語っている。この本で批判されているのは「中途半端に知識・教養のある人」なんだろう。

    こういう本を読んでいるといかに自分がさもしい文章しか書けないか、ということがまざまざとわかってなかなかつらい。まああまり気にしないでおこう。

    そういえばこの本今は版切れらしい。「絶版」はこの本風にいうと、

    ○絶版
    「このような価値ある本を絶版にしておくとは出版社の怠慢である」と憤慨すべし

    といったところだろうか。違うか。

  • 自分としてはさっぱり分からない項目も多々。「あんず:今年もまたあんずは実らないだろう。」とか。当時の一般的な認識、俗説などを見られるのはそれはそれで面白いけど。それ目的であえて読むほどのものでも。

  • 「ぼく自身のつくりあげた言葉はひとつも見当たらず、だれでも一度これを読んだなら、そこに書いてある通りをうっかり口にするのではないかと心配になる」ような辞典、とフローベール自身が称したそうだ。フランスにある森羅万象について、俗説や偏見や紋切型表現を集めた本。
     揶揄と諷刺を目的とした辞典といえばビアスの「悪魔の辞典」だが、あちらが攻撃的な文章ににやりとさせられる、けれんみあふれる読み物とするなら、この「紋切型辞典」にはそういったけれんが皆無である。はっきり言えば、読んでもあんまり面白くない。諷刺が直接的ではないので、さらっと読んでもよく伝わってこないのだ。攻撃対象への悪意と侮蔑が、二重三重に屈折して描かれていて、理解するのに案外骨が折れる。読み物というより、研究対象とした方がいいのかも知れない。
     でも時々、こんなわかりやすい項目に出くわすこともある。
    「考える〔penser〕  つらいこと。それを強いるような事柄は、ふつうなおざりにされる。」

  • まずは、解説を読んで、本書の狙いを理解しておいた方が、より楽しく読めるかと思います。
    時代差とか文化の差があるので、リアルにとることができない部分もありますが、当時のフランスにおける一般的なもののとらえ方が判るという、資料的にも良い本だと思います。
    作者名から想像するような文学的内容や、悪魔の辞典とかの皮肉に満ちた、とか言う内容とは違っていますのでご注意を。
    本当に「紋切型」の辞典でありました。

  • 文学史上最大の「言葉狩り」

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