近代日本の政治家 (岩波文庫 青 N 126-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003812655

作品紹介・あらすじ

初代首相・伊藤博文,「民衆政治家」・大隈重信,「平民宰相」・原敬,挫折の政治家・犬養毅,最後の元老・西園寺公望――.五人それぞれの性格に焦点を置きつつ,リーダーシップの特色を浮かび上がらせていく.細部の人物描写に腐心しつつ,日本近代史の大きな見取り図への位置づけも怠らない,秀逸な伝記的エッセイ.(解説=松浦正孝)

感想・レビュー・書評

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  • あまり格式張らず、親しみやすいエピソードをおりまぜた評伝で、政治学の専門家に限らず一般人でも読みやすい。明治以降の歴史は学校ではきちんと教えてくれない、入試にはあまり出ないということで、自主的に読書するしかないので、原敬とか犬養毅だって、どんどん忘れ去られてしまうだろう。西園寺公望のスタンスというのが個人的には共感しやすかったな。

  • 伊藤博文。在任1885-。妥協的・調和的、闘争性が低い。謀略性が低い。淡泊。住宅は雨露をしのげ生活に不便がなければよい。殺風景な庭。▼天真爛漫。稚気あり。▼自負心あり。すぐに調子に乗る。周囲を事務能力に秀でた人で固めて道具のように扱う。派閥は作らない。▼超然主義を否定。ただし、政友会を組織したのは議会運用のためで、世論を政治により反映させるためではない。▼日英同盟とともに、日露協商の可能性も探った。▼趣味は刀剣集め。

    大隈重信。佐賀出身。在任1898-。逞(たくま)しい闘志。強烈な自信。人を見下して教師風に振る舞う。楽天的で臨機応変。▼情操・内面性に乏しく散文的。博識を誇示しながらも、自分の意見がない。真の意味の経綸(けいりん、国家を統治する施策)がない。

    西園寺公望。在任1906-。パリコミューン政権発足(1871)直後のパリへ。10年間滞在。▼貴族気質。時流にさからいもしないし、時流に従いもしない。出世・名誉を求める気持ちもなく、富のために心を動かされることもない。理智的・合理的。▼あらゆる意味で無拘束・自由な境地に自分を置きたいと考えるため、自分の方から外界に働きかける意欲に乏しい。しかし、外界からの圧迫・束縛には烈しく反撥。

    原敬。在任1918-。岩手出身。上級武士の家柄(かつて盛岡藩の家老を務めた家)。原の政党は政権を私(わたくし)する為の朋党(ほうとう)であり、国利民福を念とする団結ではない。▼几帳面。書物は部門別に書架に排列。書類は1件毎に状袋(じょうぶくろ、封筒)に入れて内容別に分類、整理棚に配置。

    犬養毅。在任1931-。岡山出身。儒学の家。書道・刀剣。東洋趣味。▼敵・味方をはっきり区別して振る舞う。味方には親切・誠実・情誼に厚い。敵には辛辣な皮肉・痛烈な毒舌。▼犬養・尾崎は、憲政擁護・閥族打破(第1次護憲運動)を訴えた。

  • 性格やエピソードに力点を置いたエッセイ集。政策についても、これらと関連付けた説明がなされている。たとえば、大隈重信は自分の飼犬を「イヌ」と呼んでいたそうだ。

    章タイトルの政治家は5人だが、伊藤博文では山県有朋、大隈重信では板垣退助、原敬では陸奥宗光や山県、犬養毅では尾崎行雄というように、他の政治家とも対比されることで、彼らの個性が一層浮かび上がる。例外は西園寺公望だが、これは晩年の西園寺が、「ファシズム」という当時の日本社会全体と対比されているということかもしれない。政友会総裁・首相時代の無気力ぶりと晩年のファシズムへの抵抗とを、ともに彼の「貴族気質」から説明したエピローグが印象に残る。

  • 解説『近代日本の政治家』執筆の発端から完成まで …………… 松浦正孝
    https://www.iwanami.co.jp/book/b480353.html

    思想  №1153(2020.5)
    岡義武と明仁皇太子(松浦正孝)
    はじめに
    1 皇太子に対する日本近現代史講義
    2 「木戸幸一日記」の刊行と皇太子への進講
    3 「木戸幸一日記」が岡に与えた影響
    4 岡と昭和天皇
    5 昭和天皇への進講
    6 岩波新書「近衛文麿」
    7 書かれなかった近衛文麿像
     結び

  • 312.8||Ok

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