アダム・スミス (岩波新書 青版 674)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004110705

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  • アダム・スミスの全体像を「近代化の闘士」として描いた入門書です。

    著者は、スミスをはじめとする近代市民社会の思想家たちの人間像について考察をおこなっています。彼らは、人間の上に押し付けられてきた不当な抑圧から人間を解放することを主張しました。その一方で彼らは、人間を単に理性的存在とみなしていたのではなく、情念や欲望、感情といったものを秘めた存在と見ていたといいます。その上で、人間を欲望の束と見たり感情の動物と見たりするのは人間を一つの自然として見ることであり、自然科学者が自然を観察するときに採る態度と変わらないことに注意を促しています。

    スミスは、こうした近代市民社会における人間の全体像に基づく社会哲学を作り上げた偉大な思想家とみなされることになります。彼は『道徳感情論』において共感に基づくモラル・サイエンスを構築するとともに、『国富論』では分業と交換に基づく近代市民社会の人間的「自然」を解き明かすことをめざしました。

    また本書では、こうしたスミスの思想が、リストやマルクスによってどのように継承され批判されたのかということを解説しています。さらに、近代経済学がスミスの思想の一面しか継承していないのに対し、マルクスはスミスの全体像との対決をおこなったとして、高い評価が与えられています。

  • (2015.06.08読了)(2012.01.17購入)
    『国富論』または『諸国民の富』と呼ばれる本の著者として知られるアダム・スミスですが、厚い本だし、経済学の専門家でもないのでなかなか手が出ません。
    とりあえず、『国富論』にはどんなことが書いてあるのかを知っておこう、と読んでみました。アダム・スミスは、経済学の始祖と言われるのだそうですが、『国富論』には経済のことだけ書いてあるわけではなさそうです。

    【目次】
    一 アダム・スミスをみる目
    二 スミスの時代と生涯
    三 市民社会のエトスとロゴス
    四 『国富論』といかにとりくむか
    五 調和の体系と不調和の体系
    六 先進国と後進国
    七 体制の科学が生まれるまで
    八 スミスにおける古典と現代
    むすび
    あとがき

    ●アダム・スミスはバッハ(14頁)
    現代社会科学者の立場から言うと、アダム・スミスは音楽史におけるバッハだといってもよいであろう。
    ●ケネーの『経済表』(41頁)
    人間は自然に働きかけ(労働)、食料や原料を獲得し(農業生産)、それを加工し(加工業)、これらの製品を流通させ(商業)、こうして社会という肉体が全体としていかに秩序正しく成長し発展していくかということが、一と目でわかるように表示されている。
    ●ウェーバーとマルクス(50頁)
    マルクスは資本主義のロゴス(構造法則)を明らかにしたけれども、資本主義社会に住む人間のエトス(心のあり方)をとり上げなかった。これに反してウェーバーのほうはすぐれてエトス的である。すなわちウェーバーは、人間の心の問題や行為の問題に私たちの注意を向けてくれる。
    ●『道徳感情論』(51頁)
    (『道徳感情論』)でスミスが寄ろうとしたことは、近代的人間が社会の中で生活し行動するときに、そこにはどんな生活の態度と行為の法則があるのかということを明らかにするということである。だからこれは私たちが考えているような倫理学の書物ではなくて、もっと広い社会的人間の行為の原理原則を研究するものである。
    ●『国富論』(51頁)
    (『国富論』)の中で、スミスは主として経済の世界を中心にして論じてはいるが、けっして経済だけにスミスの目が限られているわけではない。経済と政治、経済と法、経済と教育、経済と歴史、経済と文明というように、経済を中心として社会の全体、とくに近代社会の全体像が粘り強く多方面にわたって描かれている。
    ●国家(63頁)
    国家というものは財産の安全を確保するために人々が設けたものであって、その目的のために法が制定される。
    ●生産力(95頁)
    生産力とは、人間が土地の上で労働するときに誰の目にもはっきりと理解できるものである。だから土地と労働というものが生産力の二大要因であり、生産物がその結果であることは誰の目にも明らかだ。
    ●生産的(96頁)
    農業に投じられた労働が最も生産的であるというのは正しい。しかし商業や工業に投じられた労働が不生産的であるというのは正しくない。
    ●自然価格(102頁)
    スミスによると、自然価格は三つの構成要素からできている。利潤と地代と賃金の三つである。ということは、この社会には三つの大きな階級が存在していることを意味する。資本家と地主と労働者がそれである。利潤を受け取るものは資本家であり、地代を受け取るものは地主であり、賃金を受け取るものは労働者である。
    ●富裕の自然的進歩(112頁)
    資本は農業から工業へ、工業から商業へ、同じ商業にしても国内商業から外国貿易へという順序に従って投下されるのがよい
    ●国家の義務(140頁)
    スミスによると、一般の人民にまかせておけない主権者の果たすべき義務として三つのものが考えられる。その第一は国防の義務であり、第二は司法の義務であり、第三は公共土木事業及び青少年の教育に関する義務である。ここで主権者とスミスがいうのは国家のことである。
    ●四段階説(150頁)
    スミスには一、狩猟 二、牧畜 三、農耕 四、商業 という四段階説というか四つの民族の段階的な状態についての記述がある。
    ●経済を動かす(166頁)
    経済を動かし、産業を動かしていくものは何か。スミスにいわせるなら、それは利己心とか交換本能とかに導かれて活動する市民であり、小工業者であり、企業家である。

    ☆関連図書(既読)
    「アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)」佐伯啓思著、PHP新書、1999.06.04
    「超訳『資本論』」的場昭弘著、祥伝社新書、2008.05.01
    「超訳『資本論』第2巻」的場昭弘著、祥伝社新書、2009年4月5日
    「超訳『資本論』第3巻」的場昭弘著、祥伝社新書、2009.04.05
    「高校生からわかる「資本論」」池上彰著、ホーム社、2009.06.30
    「マルクス・エンゲルス小伝」大内兵衛著、岩波新書、1964.12.21
    「賃労働と資本」マルクス著・長谷部文雄訳、岩波文庫、1949..
    (2015年6月25日・記)
    (本の表紙より)
    アダム・スミスは、『国富論=諸国民の富』の著者として、また自由放任主義の経済学の祖として、そのイメージが確定している。しかし、それは古いスミス観である。彼の生きた時代と思想形成の過程をたどりつつ、近代化とナショナリズムという、まさに現代に通じる視点からスミス像を描き、『国富論』の読み方までわかりやすく説く。

  • たまたま図書館のリサイクル市でもらってきた本です。1年間本棚で眠っていました。私が3歳のときに書かれた本です。それを、引っ張り出してきて読んだのは、無謀にも経済おんちの私が「経済学入門」なんかを書こうと思ったからです。我が家にある経済関係の本は10冊ほど。その中で、とりあえず経済学を創設した人と言われるアダム・スミスについての本を読んでみることにしました。スミスについて知っていることといえば、「国富論」を書いたということ、それと「神の見えざる手」ということを言っていた、その二つだけです。読み始めるとけっこう引き込まれていきました。「労働価値説」とか「限界効用価値説」とかイメージしにくい専門用語もいろいろありますが、「なんだか面白そう」とわくわくしながら読むことができました。「国富論」やマルクスの「資本論」を今からじっくり読もうという気にはなかなかなれませんが、古典も読まないといけないなあとだけは感じます。そこには、自分がボヤーと考えていたことがどうやら書かれているようなのですから。

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