- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004120131
感想・レビュー・書評
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かなり古い本であるが、気鋭のトマス・アクィナス研究者である山本芳久氏が Twitterで「買い占めて周りに配りたいくらいよい本だ」と激賞していたので読んでみた。確かによい本で名著と呼んで差支えないと思うが、期待外れの面と期待以上の面が両方ある。
期待外れだったのは、「現代カトリシズムの思想」というからには、プロテスタントではないカトリック固有の思想を期待した者としては、多くのカトリック思想家が紹介されており、いずれも興味深いのだが、キリスト教を現代にどう生かすかという視点は理解できても、なぜ「カトリシズム」なのかが今一つはっきりしない。第二バチカン公会議の「エキュメニズム(教会一致運動)」の熱気冷めやらぬ時期に書かれたからかも知れないが、稲垣氏が現時点で同じタイトルで本を書くとすればどういう切口になるか知りたいところではある。
しかしこの期待外れを補って余りある逆の意味での期待外れには真底唸らされた。稲垣氏によれば、人格は自存的であることによって、変転する事物を超えた高みに立つ。それは存在そのものへと関係づけられる能力と言ってもよい。ここで存在そのものとは、あれこれという限定を一切取り払った存在であり、その意味で無限なるものである。精神は無限なるものに秩序づけられているからこそ、一切の有限なものに対して自由になれる。この無限なるものがトマス・アクィナスにとっての神である。トマスは啓示を不可欠としながらも、あくまで神を理性的に捉えようと自らの哲学体系を構築した。その最良のエッセンスがここにあると思う。まさに神学と哲学のギリギリの接点を指し示した名著と言えよう。
後半ではマルクシズムとの対話への期待や社会変革へのキリスト教の役割が熱く語られているが、本書を改訂するとすれば、この部分はおそらく大幅に書き改められるのではないだろうか。名著でありながら絶版となっているのはこの辺りが理由かも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702199 -
「知られざるキリスト者」など、カトリック思想家の大胆な思想的チャレンジがみえる。これが、70年代の本というのが驚き。ナルニアの「そうとは知らずにアスランに帰依していた兵士」の元は、ここにあったんですね。