太平洋海戦史 (岩波新書 青版 12)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004131359

作品紹介・あらすじ

原資料所蔵機関: メリーランド大学プランゲ文庫;プランゲ文庫請求記号: D-0346

感想・レビュー・書評

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  • 海軍少将が太平洋戦争の海戦を記録した書籍である。大日本帝国海軍の失敗を鋭く批判する。旧日本軍と言えば陸軍の頑迷さ、根性主義が悪名高い。相対的に海軍は真っ当と見られがちである。陸軍の頑迷さを強調することは正しいが、海軍も酷かった。
    海軍の問題として大艦巨砲主義に固執したことは知られている。海軍内にも大艦巨砲と航空主兵の対立があった。前者の石頭を批判することは正しい。その議論は正しいが、両者とも攻撃一辺倒という点では同じ穴の狢である。補給軽視、ダメコン(ダメージコントロール)軽視に陥っている。実は防衛戦では陸軍は再評価されている。陸軍は万歳突撃の反省から硫黄島などで縦深防御に転換する学習をしていた。この点では海軍の方が水際防御にこだわる石頭であった。海軍善玉とは言えない。
    印象に残った指摘は、軍人が「政治家が政権を争い、事業家が同業者と勝敗を競うような闘争的訓練は全然与えられていなかった」との指摘である。ステレオタイプなイメージと異なり、軍人は外部からのチェックや批判にさらされず、ぬるま湯体質であった。これは恐ろしいことに現代日本の公務員組織につながる。情報公開を徹底して外部の目を入れることが改革の一丁目一番地と感じた。

  • 古書店で買ったら,字の形に紙が少し凹んでいるような本で,若輩者の自分としては多少驚いたのだが,それはさておき….
    体裁が古く舊字體だらけなのでやや敷居が高く感じられるかも知れないが,基本的には太平洋戦争における,南部~西部太平洋での海戦の経過を淡々と綴るだけの内容で,それも後半の半分近くは附録資料に割かれている.全体を俯瞰してみると,終戦時点でも東南アジア各地に点在する兵力は残存していたものも多く,こうした兵力の抱える武器弾薬などが,その後の現地各国の独立に繋がったというのも,頷ける話と分かる.
    一応当時の海軍内部の人間(東条英機の暗殺計画にも名を連ねた人物)ということで,内容としては一次資料として扱って良いのかもしれないが,記録自体は日本側のものがベースになっているので,米軍側の損害の程度などは少なからず誤りを含むものと思われる.著者自身は個々の戦闘結果について明らかな評価を下すことを避けていて,転機となったミッドウェー海戦やガダルカナル島の攻防といった部分で,僅かに一般論的な批判を述べるに留まっている.

  • 元エリート海軍少将のまとめた海戦を中心とした太平洋戦争史。巻末には簡潔に史料もまとまっている。記述は全体的に簡にして要を得たものであり、論評も極簡潔。何かに引用するにしても学者の論文レベルでなければ、信頼性は充分だろう。旧字体なので慣れない人は読みにくいかもしれない。私も多少は漢和辞典を使う必要があった。難を言えばもう少し詳細な地図が欲しかった。

  • 改訂版

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