- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004201717
感想・レビュー・書評
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ジラールの欲望論をヒントに、個人と社会がどのようなしかたで媒介されているのかという大問題への展望を示す一方、近代小説のなかでえがかれている個人の姿について分析のメスを入れて、個人と社会の具体的な関係についても独自の考察を展開している本です。
本書は三つの章から成っており、第1章はジラールの思想をヒントにドストエフスキーの諸作品における個人と社会とのかかわりを読み解く試みがなされています。つづく第2章では、西洋で生まれた個人主義の諸類系についての考察が展開されており、啓蒙的個人主義とロマン的個人主義、そして現代の消費社会において開花した欲望の個人主義がとりあげられ、著者自身の考える主体と客体と媒介者という三項関係を基礎に置く社会学の必要性が語られます。最後の第3章では、夏目漱石の『こころ』、三島由紀夫の『仮面の告白』、竹田泰淳の『「愛」のかたち』、太宰治の『人間失格』の四作品がとりあげられ、日本社会についての考察がおこなわれています。
現代の社会について考察をおこなううえで、著者の論じているような問題について考察することがますます重要になっていることは疑えません。本書の議論は、まだ十分な理論化がなされているとはいえませんが、小説などが考察の対象としてとりあげられていることもあり、現代の社会学者が取り組んでいる問題をよりアクチュアルな次元に問題を置きなおして考えるための重要な手がかりが多く含まれているのではないかという気がします。 -
了。
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[ 内容 ]
二十世紀は、欲求充足を至上価値とする個人主義の時代であるといえよう。
本書は、文学批評を通して個人主義の文明を批判するジラールの理論に拠って社会学の新たなパラダイムを構想しつつ、漱石、三島由紀夫、武田泰淳、太宰治の小説にみられる近代人の苦悩と行動様式を分析し、現代の個人主義を超克する理論的可能性を探る。
[ 目次 ]
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