- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004301097
感想・レビュー・書評
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『女と自由と愛』(岩波新書)から10年後に刊行された本です。
「私は女性にしか期待しない」というタイトルから、女性に過度の思想的課題を担わせるような内容が連想されるかもしれませんが、どちらかというと女性の「連帯」を提言し、それによってより自由で風通しのよい社会へ変化していくことへの期待が込められているといったほうが正しいように思います。
ただ、個別的・具体的な人間関係上の問題への対処について語られているところが多く、「連帯」の中身についてはあまり明確なヴィジョンは示されていないようにも感じました。時代的な制約も大きいのだと思いますが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「スポーツ・クラブは兵営みたいです。」
松田道雄を知ったのは、2023年12月9日の
朝日新聞「折々のことば」だった。
冒頭の言葉がそれ。
出典が『私は女性にしか期待しない』だった。
「競技を遊びとして楽しみ、済めば後腐れも
ないあの『すがすがしさ』がなぜ消えたのか」
「『男』たちが植え付けたこの『階級制』から
草の根の民主主義が育つことはない」
と解説する。
すぐに図書館に予約した。
冒頭の言葉はP88にあった。
最近のフェミニズムやLGBTの本はよく読むが
本書は1990年初版。
男と女に分ける二元論は、今の時代、
違和感があるが、内容は古さを感じない。
この時代にこんなこと言っていた男性が
いたのかと驚く。
P44「ディンクス」を読むとラディカルだと
わかる。ディンクスとは、
ノーインカム・ノーキッズの頭文字。
結婚しても子どもがいない夫婦のこと。
著者は、「はじめから子どもをもたないと
決めているところ」は新しい(当時)としつつ
「『近未来』の兆候」という見方は否定する。
その理由は
①(子どもをもたないは)江戸時代の貧農にもあった
②(「墓守のためは)イエのしきたりから
はずれまいとという古い考え
③(養子縁組は)イエを絶やすまいという
古い思想
④子どもをもたないことで、いまの企業社会に
順応し、しきたりをそのままにしている
「幸福に生きられるかどうか疑問だから
子どもを産まない」
「自分たちの利益でなく子どものために
そうしている」
「それはディンクスというべきではない」
そして次の一文に続く
「地球の将来について、私は予測する知識を
もっていませんから、その夫婦の判断を
批評できません」
筆者の知性と清廉を思わせる。
さすが岩波新書と言った感じだ。
「差別されるものに、
劣ったところがあるのでなく、
差別するほうに、
どこか劣ったところがあるのです」
「差別は、人間の平等をみとめないで、
個人の尊厳をきずつけるのですから、
デモクラシーの最大の敵です」(P87)
「自分の人生をふりかえって、
人からうけた美しい行為は、
ことごとく無償であった」(P131)
「地球の資源をへらし、
地球を汚染するものは、
人類にとって悪です」
「人類を救うものは、禁欲の精神しかありません」
(P135) -
目の覚める思い。
いろいろ勉強したい欲が高まる。 -
タイトルだけ見ると、少し違う内容をイメージしますが、自分の生き方と社会の在り方を考える、よいきっかけになる良書です。
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書かれた時期から20年以上が経過しているのに、色あせない部分が多すぎる。全面的に賛成ではないけれど、納得できる記述が多くて、うなずく半面・うんざり…というか苦笑である。
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20年前にこんな考えを出来る作者は凄い!
しかもおじいさんの歳なのに・・・
時代をだいぶ先読みしていて驚いた。 -
小児科医で、育児書などを書いた松田道雄さんの著書です。
たくさんのお母さんを見てきた経験から書かれた本でしょう。
現在の日本社会は、男性優位の社会が、建前上女性を同等に扱うようになっただけで、巧妙な仕掛けにより女性は、条件の良い雇用につけない、などということが説明されています。
見開きごとに内容がまとまっていながら、少しずつ話が展開していくので、とっても読みやすい。ぜひオススメします。