蕪村 (岩波新書 新赤版 705)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307051

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  • 「菜の花や月は東に日は西に」などの名句とともに、画才にもその才を発揮した蕪村を、綿密な構想力と自由な創意に着目して解説。

    短歌に比べて、俳句はなんか難しいな、という印象があった。短歌はフィジカルで読めるけれど、俳句はそういうわけにはいかないのでは・・・というためらいがあったのである。鑑賞法?みたいなものを学ばなければならない気がしていたのだ。
    しかし、偶然新聞に掲載されていた蕪村のこの句を読んで、そのあまりの朗らかさに目が覚めた。

    夏河を越すうれしさよ手に草履

    以来、いつかきっとまたこういう出会いがあるはずだ、と思って俳句も勉強しようしようと思っていた。
    で、ようやく手に取ったのがこの新書。

    俳人だけとしてではなく、さまざまな面から多角的に「蕪村」という人物像にスポットを当てており、蕪村の入門書として親しみやすかった。
    特に、最初の章を石川啄木や北原白秋、与謝野晶子などの歌とつき合わせてみる構成がよかった。同じような題材や感情を詠ったものでも、蕪村の蕪村たる持ち味が他の作家とつき合わせてみることで浮き上がって見え、「なるほどー」と感覚的に理解できるようになっている。

    しかし、蕪村自身の句や絵の解説に関しては、ちょっとしっくり来ないところも。
    蕪村の魅力を解説する際の作者の言葉が、時折理屈っぽく感じられてしまうことがあったのだ。しかしこれは単に、私の読みがこの著者の読みと異なることがあった、というだけのことかもしれない。
    蕪村が芭蕉に寄せる敬意や、蕪村が考えていた自分にとっての画と俳諧の捉え方の違いなどが丁寧に解説され、構成は文句なしの本だったと思う。

    以下、私が好きだと思った蕪村の句をいくつか。

    山吹や井出を流るる鉋屑
    ほととぎす平安城を筋違に
    易水に葱流るる寒哉
    白梅や墨芳しき鴻臚館
    宿かせと刀投出す吹雪哉
    みのむしの得たりかしこき初時雨

    私はどちらかというと、ひとつを極めつくした、という人よりも、なんでも貪欲にやりたい、何でも吸収したい、という人のほうが好きなようだ。
    広重よりも北斎が好きだし・・・(同じような比較になるのかな、これ?)
    だから蕪村の、なんでも知りたい、楽しみたい、という姿勢に好感を持つ。その旺盛な好奇心があってこそ、彼の句にはふわっとした軽妙な温かさを感じるのだと思う。自分の人生に対する愛情が、そこにはある気がするのである。

  •  画は無声の詩、詩は有声の画。その画と詩のわざを蕪村は手中に。書と絵を融合一体化。ブソニスト(蕪村愛好家)は「蕪村の句は、情景が浮かび、まるで絵のようだ」と。与謝蕪村、1716年(享保元年)~1783年(天保3年)、享年68。30歳のときは僧侶、36歳で入洛、家族は妻と娘。蕪村が画・俳で活躍したのは、京在の50歳以後。蕪村の句に心を奪われた詩人は多い。石川啄木、北原白秋、与謝野晶子、正岡子規、萩原朔太郎など。藤田真一「蕪村」、岩波新書、2000.12発行。

  • 広く浅く感は出てしまうものの蕪村の魅力を多面的に解説してくれて、大変ありがたい本だった。

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著者プロフィール

1949年、京都生まれ。近世文学、俳諧研究。著書に、『蕪村』(岩波新書)、『蕪村 遊心』(若草書房、文部大臣奨励賞)など。

「2016年 『蕪村の名句を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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