- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004308560
作品紹介・あらすじ
いい絵とは何だろうか。名画はどのように生まれ、画家たちはどう生きたのか。プロとアマ、油絵と水彩画、写実と抽象、そして美術的価値と価格などにもふれつつ絵画の豊かな世界へと案内。ブリューゲル、ゴッホらの興味深い逸話や自らの経験を語るとともに、これから絵を描いてみようとする人への具体的な手ほどきも行なう。
感想・レビュー・書評
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画家の安野光雅さんによる絵の入門書。
内容は、絵を見ること、描くことの意味について考える「絵を見る」、ブリューゲルの作品を題材に絵の描き方を解説した「絵を描く」、ゴッホを中心とした印象派の画家たちを紹介した「絵に生きる」、ナイーヴ派と呼ばれる画家たちを紹介した「絵を素直に」、抽象絵画について言及した「絵が分からない」、絵の初心者のための取り組みとして静物画の描き方、基本的な画材、参考文献を紹介した「絵を始める人のために」、安野さんの絵に対する思いが詰まった「絵のある人生」の7項目からなる。
内容を羅列すると、小難しい本なのではないか、と思われそうだが、口述筆記で書かれたこともあり、まるで安野さんが直接語りかけてくれているような気やすさだ。
また、専門的な説明の合間に、安野さん自身の思い出や経験が挟み込まれるので、すっと素直に話が入ってくる。例えば、ブリューゲルが描いたフランドル地方に関して、安野さんは自身がこの地方をスケッチした時、山がなく空が広いため描くのに苦労したと語り、逆に長崎のハウステンボスを訪れたオランダ人は、建物の背景に山があることに戸惑う、というエピソードを述べる。このような話の中で、日本と欧米の画家の自然に対する認識の違いや「原風景」と「世界風景」という概念について説明してくれるのである。
仕事として描く場合は別として、本来絵は描きたいから描くのであって、その行為は何にも縛られることなく自由なのだ、と安野さんはいう。絵に対する評価も個人の感じ方の違いであって、自分がいいと思えばいいし、その価値観に間違いはない。頭で理解しようとするのではなく、実際に見て、手を動かして素直に感じることがなによりも大事なのだということを安野さんは教えてくれる。
深い知識と経験に裏付けられた密度の濃い内容でありながら、まるで「おもしろいからやってみてよ」と、友達が自分の趣味を夢中になって勧めているようで、「それならちょっとやってみようかな」と素直に思える魅力的な本である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安野光雅さんの優しい言葉をして、目の前で講義を受けているような気持ちになりました。
絵を志す人に向けた本のようなので、画材や絵の基礎のような読んでいて少し退屈な所もありましたが、とにかく絵が好きで好きで仕方ない安野光雅さんの、授業のような、時折告白のような、また、様々な絵を見る際の参考になる記述も沢山ありました。
推薦する書物なども記載されています。
物心ついた時からそばにあった「不思議な絵」の誕生のエピソードを知れたのもなんだか嬉しかったです。
安野光雅さんのお人柄がひしひしと伝わる1冊です。 -
絵を描く人にも、絵を見る人にも、響くところがあるのではないでしょうか。
見る視点、知る視点、描く視点、いろいろな視点を交えて書かれた本です。
安野氏の絵描きとしての思いも知れます。
優しい語り口ながら、ときに自身の率直な思いも述べてあり、とても面白い内容でした。
ところどころ、読書家なのだなと思わせるほどの博識さに驚かされます。
現代人が本を読まないせいかもしれませんが、岩波文庫の本を平気でひょいひょいあげたり、西洋画、日本画のみならず、書家や俳人の言葉まで引用されています。
一度関西圏でブリューゲルの「バベルの塔」を見たことがあります。
俯瞰的に見るとバベルの塔が主題に見えますが、塔では写真だと気付かないほど小さな人々がバベルの塔の中で暮らしている様子が細かく描かれていて、一枚の絵で複数の視点が持てることに度肝を抜かれた作品です。
最初がブリューゲルの絵の話で、どういう過程であの細かい人たちを描いていったか話されていて、とても興味深く思いました。
そのほか、ゴッホの話にも大きくページが当てられています。アンリ・ルソーの絵についても。どの話も分かりやすい。原田マハさんの本を読んでおいてよかった。
絵描きの視点だからと堅苦しくなく、本から語りかけてくる心地よさがあり、とても良い時間を持てたと思える本でした。 -
常々、芸術家とは「芸術をしなければ生きてゆけない人」を指すのだと感じます。それで生計を立てるかは別で、彼らは絵を描いていないとおられない状態にあります。これは深刻に捉えなくとも、絵が好きなら好きなりにご自由に描き続けなさいと、頷いてくださっているようでした。
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良い意味で素人の目線、素朴な客観性と謙虚さの表れた文体でほっとします。なんだこれだけの画家が言うんだからいいんだな別に。って思わせてくれます。著者はただの画家がではなく本当に広範な知識の持ち主。絵を志す、または楽しむ人には一度読んでみる価値あり。
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(2003.11.30読了)(拝借)
副題「見る楽しみ、描く喜び」
気持ちのいい自然の風景、気持ちのいい街角、などを描く安野さんの絵についてのあれこれを述べた本です。絵を見るのが好きな人、絵を描くのが好きな人、安野さんが好きな人、いろんな人が読んで楽しめる本です。
木を描くときは、葉のついていないときに描きなさいといっています。葉が茂っている時は木がどうなっているのか分からない。枝のつき方や全体が分からない。葉の落ちた冬や早春なら枝振りが見える。葉のない状態の木に葉っぱをつける事はできるけど、葉の生い茂った状態の木から三木と枝だけの木を描くことができない。人体のヌードも同じこと。
ブリューゲルの絵を元に絵の描き方を説明しています。狩人の帰還などの風景画を描いていますが、今のオランダの人なので、山の風景など知らないはずなのですが・・・
3章では、ゴッホについてあれこれ述べています。ゴッホの描いた絵と、その場所の写真を較べると、ゴッホの絵のほうが強烈です。何故なのでしょうか?ゴッホの感性なのでしょうか?
6章では、絵を始める人のためにあれこれアドバイス? が書いてあります。ある人の描いた絵が好きだからといってその人の使った画材を探して使ったとしてもその人のような絵を描けるわけではない。というのが結論です。
7章には、安野さんがどのような風に絵描きになってしまったかが書いてあります。
著者 安野 光雅
1926年 島根県津和野町生まれ
宇部工業学校卒業
山口県徳山市で小学校教員
1949年 上京
1968年 「ふしぎなえ」で絵本作家としてデビュー
1975年 「ABCの本」「きりがみ桃太郎」で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞
1977年 「あいうえおの本」でBIB金のりんご賞を受賞
国際アンデルセン賞、ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞、紫綬褒章など多数受賞
●関連図書
「わが友・石頭計算機」安野 光雅著、ダイヤモンド社、1973.06.01
(「BOOK」データベースより)amazon
いい絵とは何だろうか。名画はどのように生まれ、画家たちはどう生きたのか。プロとアマ、油絵と水彩画、写実と抽象、そして美術的価値と価格などにもふれつつ絵画の豊かな世界へと案内。ブリューゲル、ゴッホらの興味深い逸話や自らの経験を語るとともに、これから絵を描いてみようとする人への具体的な手ほどきも行なう。 -
(2003年、刊行後すぐに買った本、語りおろし)
絵を見ることから始めて、印象派やナイーブ派、抽象画の時代をたどり、絵かきとしての自分の半生もふりかえりつつ、これから絵を描いてみようかという人への具体的な手ほどきや心構えを語る。 -
【目次】
目次 [i-iii]
口絵クレジット [iv]
1 絵を見る――心を動かされる満ち足りた時間 001
看板の花嫁/「美術に上下の区別なし」/「美しい」と「きれい」/絵を見る満ち足りた時間/絵はわたしの道連れ/絵を描く二つの立場/発見と思い入れ
2 絵を描く――ブリューゲルの作品を手がかりに 019
「雪中の東方三賢王の礼拝」/描かれた雪の重さ/想像では「自然」に追いつけない/作品の生まれるまで――仕事の手順/遠近法のこと/絵に込められたメッセージ/ルネサンスという時代
3 絵に生きる――ゴッホの場合、印象派の時代 069
科学の時代へ/写真機の登場/線の主張/宮廷画家の終焉/印象派の光/洋行の時代/ゴッホの生涯/印象派の遺産
4 絵を素直に――ナイーヴ派、アマチュアリズムの誇り 115
映画「スカーレット・ストリート」/ピロスマニと「百万本のバラ」/エミリーおばさんの絵/ナイーヴ派の天使、アンリ・ルソー/ナイーヴ派の誇り
5 絵が分からない――抽象絵画を見る眼 131
デッサン力と抽象絵画/抽象絵画と大疑問/バイオリンの実験/芸術的価値と市場価格/ラファエル前派から抽象絵画の部屋へ
6 絵を始める人のために――テクニックは重要な問題ではない 149
本当の基礎とは何だろうか/画材などは?/水張りの方法/実験的に一枚描いてみますか/読んでおくといい本
7 絵のある人生 181
「きっかけ」などはなかった/好きなものを描いた/思い出の手紙/個展と針のむしろ/絵に託した人生
あとがき(二〇〇三年七月一日 安野光雅) [199-200] -
本の内容
いいと感じる絵とは一体どのようなものなのか。
また、画家たちは絵を書きながら人生をどう歩んだのか。描かれた絵は何故、このような表現をしたのか。それらを安野氏が有名な絵画を載せながら詳しく説明しています。
注目
第一章では安野氏が子供の頃に見た絵の話やそのときに感じたこと、心に残った絵の話をしています。この章で、他人がいいと感じる絵と自分の感じたものが違うものでもいいと書かれており、安野氏は「人が、美しいものに反応する感覚は、自然から学んで育つことの他に、絵を見ることの経験によっても磨かれるのだと思います。」と話しています。絵を見ている時間は心の中が満たされ、一人で絵を見ながら自分で考える時間は大切だと思いますと話し、そういった時間が絵を見る力を磨かせるのだと書かれていました。
おすすめ
読んでいると安野氏とは違う考え方や意見が出るとは思いますが、いま、絵を描いている人もこれから描き始めようと思っている人にも興味深い話がたくさん載っています。
さらに、本には作品が生まれるまでの流れや、写真機の登場が絵にどのような影響を与えたのか、これから絵を描こうと思っている人に向けた手ほどきも行っています。
この本は、絵の見方や感じ方を改めて見直し、さらにこれから絵を描いてみたいと思う人へのきっかけになる一冊だと私は思います。 (151219 月の姫) -
このタイトルに対して、どういう切り口で書かれているのか興味深かったけど、なるほど、自身にとっての絵の見方を、美術史の流れを通して綴っている感じだった。美術の鑑賞の仕方伝授、みたいな感じかと思っていたけど、むしろそういう考え方とは距離をおくスタンス。とにかくたくさんの作品に触れて、興味があれば自分でも手を動かしてみましょう、ってことだと思いました。