戦後政治の崩壊: デモクラシーはどこへゆくか (岩波新書 新赤版 893)
- 岩波書店 (2004年6月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004308935
作品紹介・あらすじ
構造改革の掛け声むなしく、旧来型の利益政治は温存され、社会には将来への不安感が拡がっている。一方で、改憲論議が進む中、憲法第九条のもとで自衛隊は海を渡り、二大政党制への道も敷かれた。戦後政治の枠組みが崩壊した今、日本政治はどこへ向かうべきなのか。政治への幻滅から脱却し、デモクラシーを立て直す新たな座標軸をさぐる。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
[配架場所]2F展示 [請求記号]080/I-3 [資料番号]2005104882、2005104884、2005104883
-
中曽根康弘、宮沢喜一、野中広務、土井たか子の引退によって、戦後政治の終焉が象徴されていると著者は述べています。野中の引退は、利益配分型の政治の破綻を意味しており、憲法第九条をめぐって対極の立場にあった中曽根と土井の引退は、まさに「戦後」という時代をあるいは肯定し、あるいは否定する両極の立場が、なし崩し的に融解してしまったことを示しています。また、宮沢喜一は、みずから戦後の日本の枠組みを形成に参与し、その枠組みの中で復興と経済発展の路線を歩んできた政治家であり、彼の引退もまた、「戦後」という時代が幕を下ろしたことを象徴しています。
本書は、こうした「戦後」の枠組みの崩壊の後に生まれた、小泉純一郎に代表される新たな政治の枠組みについて分析をおこなっています。とりわけ、一部の保守系の政治家のタカ派的な発言が、国際社会、とくにアメリカの実態を捉えていないという批判や、ポピュリズムの問題などが論じられています。
戦後民主主義を擁護するのでもなく、小泉以降の政治に対しても距離を置くという姿勢が見られますが、著者の考えるあるべき政治の形がいまひとつ見えにくいように感じました。 -
いろんな所でエッセイや論評のようなものを読むのだけれど、まともにこの方の著作を読んだことが無く、これはいけないなーと・・・
-
目次
序 戦後政治の何が終焉したのか
第1章 戦後政治とは何だったのか
1 9条=安保体制――憲法と日米関係の共存
2 一党優位体制――自民党長期支配の構造
3 利益政治体制――経済成長と開発主義
4 官僚内閣制――官僚主導の政治システム
5 戦後民主主義の多面性
第2章 変質した憲法政治――「9条=安保」体制の終焉
1 9条の失墜
2 日本版ネオコンの台頭と改憲論の貧困
3 日米安保体制の変質
第3章 迷走の政党再編――政治改革の帰結と政党の変質
1 政策不在の連立政治
2 選挙制度改革と政党の変容
3 二大政党制の虚実
第4章 構造改革の政策対立――崩れゆく「平等」
1 「構造」とは何か
2 グローバル化と構造の破綻
3 日本のネオリベラリズム
第5章 政治主導への挑戦――官僚依存は超えられたか
1 官僚の敗北
2 政官関係のねじれ
3 政治主導は実現されたか
第6章 デモクラシーの融解
1 立憲主義の空洞化
2 ポピュリズムとナショナリズム
3 メディア政治の危険
第7章 次なるデモクラシーに向けて
1 日本の再民主化
2 一国多制度と多様な民主主義
3 目指すべき社会像――「平等」の再定義
4 世界における日本の針路――「平和」の再定義
5 市民による民主主義