壊れる男たち: セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書 新赤版 996)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309963

作品紹介・あらすじ

「合意だったはず」「自然のなりゆきで」-告発されて「加害者」となった男性たちは、事態を理解できず、相変わらずの言い訳を口にすると茫然と立ち尽くす。彼らはなぜ自らの加害性に無自覚なのだろうか。相談現場で接した多くの当事者の声を通して、「セクハラをする男たち」の意識のありようを探るノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 2006年発売で少し時勢が古いところはあるが、程度の大小はあれ取り上げられるセクハラ事案に近しいことは今もあるだろうと想像される。

    女性に対する無理解、軽視、ファム・ファタ―ルとしての女性像、ステレオタイプなどなどから男性の一人妄想の暴走が共通原因だろうという論旨を読み取れる。正直無意識的に女性に対するそういう期待が想起されることはある。でも、それが現実になるという浅はかな思考はバカバカしいと、自分を律する力が大切なのだと日々常々考えちゃう。

    以下本書で特に印象に残った要点
    ・セクハラ加害者が主張する女性は、あちらから誘ってきたやそうなることは望んでいるはずといったワンパターンなものが多い。そんなことはなくセクハラ加害者の男性の思考がワンパターンで、女性に対する蔑視や軽視が含有されており言語道断。
    ・男性はその立場や権力が相手に影響を与えているとは考えない。純粋な恋愛ゲームだと誤認識する。なんと短絡的な・・
    ・不倫との相違は、立場が対等かそうでないかがある。不倫はおおよそ相互容認の関係であるが、セクハラは立場を利用した強引で一方的な性という特徴(P178)がある。セックスの内容も支配的で一方的な男性の願望まるだしのものになりやすい。
    →これは不倫にも対等な立場でないものもありそうだなと思ったりする。
    ・セクハラに発展してしまう要因は、時代の変化に取り残された男たちの閉塞感や虚しさに対する癒しを求める態度にある。→時代の潮流というのはどんどん変化していくものですし、昔の価値観がずれ始めればアップデートする、そのためには日々勉強することが重要なんでしょうね。

  • セクハラの事件に対して、実際にあった事例から男性視点の供述と、女性視点の供述が書かれており、リアルな描写が想像することができた。リアルが故に、男性の自分勝手な言動に嫌悪感や不快感を覚えることも多々あった。女性の視点で読んた時に、無自覚な男性には恐怖心を感じた。
    2006年に出版されてから、10年以上経つ今も、男性の逸脱した言動の内容はあまり変わっていないように思えた。性的役割意識の違いによるものが原因にしても、セクハラをする男としない男がいる以上、する男の身勝手な認識は改められるべきだと感じた。
    男らしさや女らしさという考え方も性差別的に捉えられることもあるため、認識を変えていこうと思った。

  • 「合意だったはず」「自然のなりゆきで」―告発されて「加害者」となった男性たちは、事態を理解できず、相変わらずの言い訳を口にすると茫然と立ち尽くす。彼らはなぜ自らの加害性に無自覚なのだろうか。相談現場で接した多くの当事者の声を通して、「セクハラをする男たち」の意識のありようを探るノンフィクション。
    女性からのセクハラやパワハラの告発によって、これまでの男性中心の職場運営の不合理な部分や根拠のない男性優位のシステムが問われている。
    こうした変化により、男性は自らのアイデンティティーに向き合わざるを得なくなっている。
    そして女性からのセクハラ告発に対して、自分が男性優位な職場環境を無意識に利用していることや女性を見下していることに気付かず、加害者男性はセクハラ相談窓口に来る。
    加害者意識のない男性の意識には何があるのか?
    「急な仕事上の相談と称して食事や酒に誘い、言葉巧みに人気のない場所に連れて行き関係を結ぼうとした」ケースでは、「仕事の相談というのはよくあるきっかけ作り」「男女の間ではよくあること」「男と女の駆け引きの一種」という会社内での上下関係に意識が行かず女性の意思や立場に思いが行かない男性の勝手な思い込みがあからさまになっている。
    既婚女性にしつこく食事を誘う社長のケースでは、「付き合うのも給料のうち」「ここで仕事していきたいだろう」と関係を迫り、女性がセクハラで訴えると「何も出来ない女性に給料を払ってあげたのに、恩を仇で返された」「被害者意識が強い女」と逆ギレする加害者男性の不誠実さが露になった。
    こうしたセクハラ加害者男性の共通点は、自分が置かれた立場や相手女性から自分の言動がどう受け止められるかどう感じるかに鈍感であること。
    男性は、自分の立場の優位性に慣れ過ぎていて、女性の意思を無視したり、女性の立場が弱いことが分からない。
    男性側は、平均で仕事とプライベートを混同して自分の職場での立場を無視して、自由な恋愛としてアプローチしているので、女性が拒否するサインを出しても駆け引きとしか受け止めない。仕事場の女性を、仕事仲間ではなく恋愛や性の対象として見ている。
    「イヤもイヤもスキのうち」「女性の抵抗はポーズだ」など、男たちの勝手な思い込みで勝手なストーリーを女性に強引に展開させようと、少しずつ逆らうことが出来ないところまで立場や酒などを使い支配をベースにした強引で一方的な性を求めている。
    セクハラで訴えられると、「派手な服装をしているから」「酒を飲んで酔っ払った時に彼女にも期待があったはず」と卑怯な言い訳を並べる。
    セクハラ事件は、加害者男性の男尊女卑的な意識と旧来の「男性が女性に好き放題に振る舞っても許される」という意識から派生する。
    セクハラ加害者男性になる可能性は、どの男性にもある。歪んだ「男らしさ」を表現するジェンダー意識が自分の中にある限り、男は加害者になる可能性がある。男性の中にある男尊女卑的なジェンダー意識を問い、意識改革するきっかけになるノンフィクションです。

  • 溝の口の古本屋で購入。
    著者は日本に「ホームレス」という言葉を普及させた社会学者だ
    そうです。

    この本書の帯「魔が差したはウソ!」と、岩波にしては
    面白いコピーだが、これがまさにその通り。
    面白いというか、呆れると言うか、ここまでやるかという事例の
    オンパレード。

    男性が女性を誘う時、「ちょっと相談があるんだけど・・・」
    これを男側は普通のアプローチ・誘いとして良くあること、そしてここで
    来るならばOKというサインと理解、片や女性側からすると
    仕事に関する相談と思ってしまうので断ることが出来ない、故に
    本意でなくても誘いについていくこととなる、
    この両者の決定的な違い。

    さらには派遣社員が仕事で積極的に、働きたい、お願いします、を
    言ってくることが、自分に対して積極的にアプローチをしてきていると
    思いこむ勘違い。
    (この社長は、とにかくエロかった)

    結論に近い部分で、(問題のある)男性たちにはセクハラはされる側に
    問題がある、という意識があること。そして、ありとあらゆる女性の
    しぐさをOKサイン、と強引に解釈する傾向があることと述べている。

    タイトルが「壊れる男たち」とあるが、別に社会不適合者ではなく
    普通に、しかもきちんと働いている社会人(しかも年輩だ)。
    その人たちが、こうした理性で、言うならば羊の皮をかぶって
    会社内で生きているということ。
    表沙汰にならないケースも多数あるらしいので、
    この事実は重い。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      レビュー読みながら、そうだ、そうなんだよとぶんぶん首を上下に振りながら共感しました!

      私の友人が今まさに上司のセク...
      こんにちは。

      レビュー読みながら、そうだ、そうなんだよとぶんぶん首を上下に振りながら共感しました!

      私の友人が今まさに上司のセクハラ被害にあっているので、良く分かります。
      そうなんですよね、仕事ができて真面目な人なのに。
      まさに壊れたって感じです。

      友人にも勧めてみます。
      良い本を紹介していただきました!
      2013/07/04
  • 著者の楽しんでいる気持ちが伝わってくる。

  • 1990-2000年代の相談事例をもとに「男性の相談員が」目にした事例が記されているんだけど、時代のせいなのかそもそもこういうジャンルの話なのか分からないけどあまりにも常軌を逸した事例が多くて、読みかけのままだと夢見が悪そうだったので一気に読んだ本。

  • 相談に現れる多くの男性たちは企業社会のマインドコントロールにどっぷりハマっている。だから会社のためには全てを捨てるという、もはやボロボロになってしまった鎧を、まだ身につけてやってくる。

    男性優位の職場環境を無意識に利用したセクハラ加害者は、自分がいまだに女性を見下していることに無自覚なまま、逆に怒りを引きずってやってくる。

    こんな男たちがこのまま時代の変化を正確に受け止め理解することが出来なかったら、自らの権利を守ることはおろか、アイデンティティの危機に向き合い、乗り越えることも出来ずに自己崩壊するしかない。

    仕事とプライベートを分けられていない、職場の上司と部下というシチュエーションを男女のラブストーリーと混同してしまうモラルダウンが発生しがち。

  • とはいえ、著者が男性なので、もやっとするところはあるけれど、本当にここに出てくる男たちは氷山の一角なのかと思うと怖い。が、しかし、全ての人をこういう目で見る必要があると思うとしんどい。ちょうどいまセクシャルハラスメント以上の訴求をされている俳優について追っているので辛い。好きな俳優なので辛い。 初版2006年なのか!何も進歩してない…むしろ後退…。

  • ツィッターで紹介されていて読んだ本です。

    セクハラ問題について書かれたノンフィクションです。
    幸い、私はこの事例に出てくるような酷いセクハラは受けたことはありませんが、思えば新卒で入った会社がセクハラ多かったなぁと思います。「彼氏いるの?」「XXさんと付き合ってるの?」そういう話題がどこでもなされていて、上司が部下の恋愛関係を把握している感じ。私はそういう噂になるようなことはしなかったし、できなかったので上司に「彼氏いるの?」と聞かれても「いませーん。」と言ってすぐにその話題から抜け出すことができました。ですが、友人の中には微に入り細に入り聞かれて、飲み会の席ではネタにされるという事もあった会社です。今でもあの会社はそういう事をしているのかと思うとちょっとぞっとします。

    この本に出てくるセクハラは主に上の立場の人からの力関係を(無意識下にでも)利用したセクハラばかりです。
    生活がかかっていたり、仕事をやめなくてはならないのではないかと悩んだり、心を病んでしまったり。ただでさえもセクシャルなことを人に無理やり言わざるを得ない状況になったり、セクシャルな態度やふれあいを求められたりというのは辛いもの。実際、作者が相談を受けた事例を見ていくと本当に怖気が走ります。気持ち悪い。というのが第一の感想。そして、どうしてそんなことを考えるのだろう?と思考回路に疑問を持つのが二つ目。本当に脳みそおめでたい人たちばかりで腹が立ちます。

    何故男たちはセクハラをするのかという所に対する作者の意見も載っているので、よみごたえがあります。ただ気持ちの悪い本でなくてよかった。

  • "離婚した女性"に向けられる視線があまりにも自分の想像とかけ離れ過ぎて…というか理解ができなくてびっくりした。
    何故セクハラが起こるのか、男性側の思い込みの仕組みとか、セクハラ例の話は胸糞だけど、すごく分かりやすかった。
    派遣やアルバイトの女性に対する差別のあり方など。

    もっと若い時にこの本を読んでいたら、自分の尊厳ももう少し守られていたかもしれないと思う。
    男女問わず読まれて欲しい本だなと思いました。


    あと、"男らしさ""女らしさ"だけに限らず、この社会は何かと枠が多い。"大人なんだから"や、"普通は"などといった社会の常識という枠。そういえ枠組みから外れる事を非難したりする風潮がある。
    それが社会を息苦しくさせて、セクハラやパワハラに繋がっていくのだと思う。

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著者プロフィール

一般社団法人「職場のハラスメント研究所」の所長として、行政・企業・大学などで幅広い講演活動を行う。人事院パワハラ問題対策委員を務めたほか、現在は日本教育心理学会スーパーバイザー、千代田区・葛飾区・川崎市などの各種委員会委員を務めている。『〔新版〕パワハラなんでも相談』『職場でできるパワハラ解決法』(以上、日本評論社)、『職場いじめ』(平凡社)、『職場のモンスター』(毎日コミュニケーションズ)など多数。

「2021年 『戦争と性 34号 特集:性暴力のない社会へ──「自分ごと」として考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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