変えてゆく勇気: 「性同一性障害」の私から (岩波新書 新赤版 1064)
- 岩波書店 (2007年2月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004310648
作品紹介・あらすじ
幼い頃から自分の身体に違和感をもっていた著者は、二七歳のとき「男性」として生きることをやめ、やがて「女性」として暮らすようになった。今、さまざまな困難を抱える人々の声を聴き、見過ごされがちな問題を可視化するために発言をつづける。誰もが自分らしくのびやかに暮らせる「寛容な社会」を創るための熱いメッセージ。
感想・レビュー・書評
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幼い頃から自分の身体に違和感をもっていた著者は、二七歳のとき「男性」として生きることをやめ、やがて「女性」として暮らすようになった。
今、さまざまな困難を抱える人々の声を聴き、見過ごされがちな問題を可視化するために発言をつづける。
誰もが自分らしくのびやかに暮らせる「寛容な社会」を創るための熱いメッセージ。 孤立を恐れず声を上げて、主張する勇気と手段を与えてくれる本です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私たちは「多数派」の中で生きていると勘違いしているから、「少数派」に寄り添うということを、どうしても「そこまでするか」となってしまう。
でもこの本の「フツウは多様」というところでハッとしました。一発殴られたような気持ち。
みんな顔も声も性格も違うじゃないか。
多数派って何だよ。基準なんてないじゃないか。
いろんな人がいるからこそ助け合えるし、豊かな社会になる。豊かな社会をつくっていくためには上川さんのような「きめ細かい」取り組みをする人がもっと増えることが必要で、私もその一人になりたいと強く思いました!
あらゆる問題を「小さいもの」「その人だけのもの」と捉えず、もっと問題意識を持ち、実態を調べ、声を上げる。諦めるなんて今後ぜったいしないようにしようと思いました! -
ジェンダーの問題でなくても、弱い立場の人に寄り添い続けるという姿勢がかっこいい上川さん。政治に対する考え方が参考になった。
トランスジェンダーの当事者として自分のことだけでもたくさん困難があったのに、さらに政治家になって社会を変えたい、自分以外の人のためにも働きたいと思えたところをとても尊敬する。 -
性同一性障害で世田谷区議会議員である上川あやさんの半生。
彼女の人生を読んでいくことで性同一性障害というものが日本でちゃんと認識されて必要な対応がされるまでの歴史(今もその途上)も振り返ることができる。
”変えてゆく勇気”というのは個人の人生と社会、両方を変えていくことにかけているのだと感じた。 -
世田谷区議として活躍しておられる上川さんが性同一性障害と向き合い、乗り越えていかれた半生。
セクシャルマイノリティーだけではなく、様々な問題に真摯に取り組まれていらっしゃる様子が詳細に書かれていました。
とても素晴らしい議員さんだなと感じた1冊です。 -
授業のレポートの参考文献として読んだ本。
どこかで見た名前だなと思ったら過去の授業で性同一性障害を扱ったときに紹介されていたんだわ。
二年ぶりに再会というわけでした。
最初の方はエッセイみたいだなと思って新書という形をとらなくてもよかったのでは?と思った。
政治家なのは知ってたけど政治家になる人でも「政治に興味がなかった」なんて意外な一面にびっくりした。
学生時代の葛藤に切なくなりました。体の性と心の性が違うのは想像以上に大変なことと思います。
今回のレポート提出のためにいくつか論文も読んだけれど、それらとあわせて考えることによりいかに自分が無知だったかを知りました。
本当に私は知らなかった。
どうしてこうも日本社会は「男」と「女」に分けたがるんでしょうね。
後半の政治的側面はいろいろとためになりつつも「やっぱり政治ってそういう世界なんだな」と感じた。どの議員が発言力があるとか。
でもそういう戦い方しかないのかもしれないし、それが政治の世界では正しいのだろう。
失語症とかオストメイトとか初めて知る言葉も多数でてきました。
だから映画を見たり新聞や本や読まなきゃいけないんだなと実感しました。 -
カムアウトしたり活動したりする人は、「強い人」で「すごい人」なんだと思ってた。
だけど、なんだ、やっぱり怖いんじゃん。
それでも、闘ってくれてるんじゃん。
そんな当たり前のことを、改めて思い知る。
自分以外のマイノリティも視野に入れて考えられる人にこそ政治家になってほしい。
セクマイの中に当然のようにAセクを含めてくれていることが嬉しかった。 -
長らく読みたい本リストに入っていながらそこに安定してしまっていた一冊。読めばいい本であることがわかっていたからかな。そしてそのとおり、さわやかな、勇気がわいてくるようないい本だった。
上川あやさん。彼女が世田谷区議選に出ると報道され話題になった頃は、ちょっとした衝撃だった。自分も彼女のような性同一性障害の人の気持ちをそれなりにわかるつもりでいたから。この本では、そんな彼女が勇気をふりしぼっておそるおそる選挙活動を始めた頃のことから始まる。そしていったん時間が巻き戻って、子どもの頃からのことが書かれる。
大学くらいまでの彼女の環境がけっこう恵まれていたのだなと思った。男の子と見なされることに違和感を感じながらも、そこここで彼女のことを理解してくれているような、好感をもってくれる人がいる。母親も理解が聡い。
もちろん彼女自身は苦しみ悩んだのだけど、一方でこうした人たちが周りにいて過ごしてきたことは、勇気を出して一歩を踏み出す大きな支えになったことだろうと思う。
後半は、性同一性障害者特例法の制定に向けてロビー活動をしたことや、議員としての活動が書かれている。
ロビー活動のところでは、優先すべきことにフォーカスし、ある意味譲歩しながらも一歩前に踏み出す選択をしている。思いだけで突っ走らず、冷静に戦略的に物事を進めることの重要性が素直に理解できる。
議員活動のところでは、小さな声にならない声に心を留め、新たな扉を開いたいくつかの取り組みが紹介される。世田谷といえば、市民社会先進地域のような気がしていたけど、いろいろ指摘すべき点があるもの。そして、わりと働きかけるとすんなり動きだすものだなとも思った。これって、いかに社会が違う立場の人に目を向けていないかということでもあると思う。悪気はないが無関心というやつ。
彼女が世田谷区議になってことしはちょうど20年。LGBT推進法がまた非難されながらも制定されたことで、また一歩進んだといってもいいだろうか。少なくともLGBTQ+などの人が自分らしく生きていくという点では、20年前よりはいい世のなかになっているのではないかな。勇気を出したほうがいいのかもしれないけど、勇気をふりしぼらなくても変わっていくような世のなかであるといい。 -
三葛館新書 367.9||KA
男性として生まれた著者が、性同一性障害であることを告白し、世の中を変えたいと、女性として区議員に立候補した。議員に立候補するに至った経緯、幼少のころからの自分の違和感、「性同一性障害特例法」の成立とこれから。
(うめ)
和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=47487 -
ただGIDについて書くのではなく、マイノリティの実存と、法や行政を変えていくための実際的な手段や権利が示されている。議員という立場に即した書き方で良いと感じる