金・銀・銅の日本史 (岩波新書 新赤版 1085)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310853

作品紹介・あらすじ

その輝きで人々を魅了し続けてきた「金・銀・銅」は、贅沢な装飾品として、通貨として、歴史を動かす「富」そのものであった。そしてそのいずれについても、かつて日本は豊かな産出量を誇り、採鉱、精・製錬、金属加工の技術は、驚くべき高みに達していた。豊富な資料に基づいて、古代に始まる「モノづくり」の手わざの跡をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 最近、戦国時代の最新鋭の武器の獲得などに当時日本で豊富に産出していた金銀銅が大きくかかわっていた、というテレビ番組を見たので改めて読んでみた。

    モノから見る日本の歴史はやはりとても興味深い。

  • 最近の仕事柄、冶金に関する情報を得たくて読んだ。鉱物から金属を得る技術は、太古の時代から、いろいろと試されていて、人類の金属愛は想像以上だ。

  • 日本人は、かつて渡来人が持たらした採掘や加工の技術を習得し、高度な手技を加えていった歴史を理系の視点で書かれます。開化期にきた外人は、その水準の高さに驚嘆したそうです。今では忘れ去られた旧来の技術。近代化によって得たものは知っていますが、失ったものが何であるかを解明することは現代人の課題だと言います。同感ですね。

  • 筆者は、現代美術の村上隆とは同姓同名の別人で、考古資料などの科学分析をしている「技術材料史」の学者。本書では、日本における金・銀・銅の採掘と加工についての歴史が書かれている。
    https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000000192774/

    印象に残った話は以下の二つ。奈良県に存在する飛鳥池工房遺跡は、当時の金属製品の生産工房であり、溶けた金属を容れるるつぼの断片などが出土している。るつぼ内面には、銀粒が残留しており、銀粒やるつぼ類から銀と共に鉛も検出されている。この事から1533年に灰吹法が日本に伝わる前に、古代においても灰吹法に似た方法(筆者は「石吹法」と名付けている)で銀の精錬が行なわれていたとされている。

    江戸時代に小判製造過程で行われた「色揚げ」という作業の話もおもしろい。元文小判から小判に含まれる金の含有量が下がり、そこから幕末まで小判の品位は上がらなかった。色揚げとは、低品位の金貨を金貨に見せるために、金―銀合金の表面から銀だけを除いて、金色に仕上げる方法だ。鋳造後に、硝石、薫陸、緑礬 (ローハ)などの薬品を梅酢で練り、小判に塗りつけて炭火で焼いた。色揚げを行う事で、小判表面から銀が除かれて輝きが増したとか。当時の涙ぐましい努力が垣間見られておもしろかった。

    金・銀・銅に纏わるトリビアは読んでいて興味深いが、通史としては、記述が散漫。歴史エッセイに近い内容だ。読んでおいて損はないかもしれない。

    評点 6.5点 / 10点

  • 日本の『金・銀・銅』の採掘と利用の歴史が書かれている。
    日本の金銀銅の歴史は採掘からではなく、利用から始まっているということが特徴的なのではないかと思う。これは日本が中国に朝貢したことで得た金印や銅銭などが当てはまる。
    その後、大陸から渡ってきた鉱山技術者の貢献で日本でも採掘が始まり、多くの文明と同様に富や権威の象徴として扱われてきたことがよく分かる内容だった。
    島国の割に金銀銅が多く採掘できた日本では様々な形で利用され、日本文化の発展に寄与してきたといえるだろう。

  • ◆安価簡便な測定器の普及と、材料工学の技術的発展が後押しする新領域。考古学史料や遺跡への材料工学的アプローチを、金・銀・銅ほかの具体的実例を踏まえ解説。そして仄かに見えるのは、研究活動が地域おこしの一面を有すること◆

    2007年刊。
    著者は独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所上席研究員。

     五輪期間はニュースまでもが金銀銅と喧しい。それに触発されたわけではないが、(むしろ貨幣論との関係で)金銀銅をテーマとする本書を紐解く。

     もっとも、本書の対象は貨幣だけではなく、金銀銅その他、金属を利用する文化財につき、採鉱から製錬・精錬までの過程を踏まえつつ、通史的な変遷を具体的財を列挙しつつ解説する書である。

     嘗ては材料工学的分析は不可能だったろうが、当該領域の技術的発展と、安価・簡便な測定器の普及が後押しする新たな研究領域がここにある。しかも考古学のウェイトが相対的に大きい古代史における分析は興味深い。
     就中、注目すべきは古代の工房・飛鳥池遺跡の解説である。

     他方、石見銀山の世界遺産登録。あるいは維新期に江差沖で戦没した開陽丸の引揚げと遺物の展示(水中考古学)。これらは地域おこしの一と言えようが、それが本書の後景に見え隠れする点もまた気に懸るところだ。

  • ふむ

  • 【書誌情報】
    著者 村上 隆  (1953-)
    通し番号 新赤版 1085
    ジャンル 日本史
    刊行日 2007/07/20
    ISBN 9784004310853
    Cコード 0221
    体裁 新書・並製・カバー・236頁
    在庫 品切れ
    https://www.iwanami.co.jp/book/b225873.html

    【簡易目次】
    口絵 [/]
    はじめに [i-ix]
    目次 [xi-xvi]

    第一章 日本は、「黄金の国」か、「銀の国」か、「銅の国」か――「金・銀・銅」をめぐる技術の系譜 001

    第二章 祭、葬送、そして戦いの象徴――草創期の「金・銀・銅」 015

    第三章 仏教伝来から、律令のもとで――定着期の「金・銀・銅」 045

    第四章 国内への浸透、可能性の追求――模索期の「金・銀・銅」 083

    第五章 「金・銀・銅」をめぐるダイナミズム――発展期の「金・銀・銅」 113

    第六章 世界の最高水準の達成、そして――熟成期、爛熟期の「金・銀・銅」 141

    第七章 近代化による新たな取り組み――再生期の「金・銀・銅」 175

    おわりに――「金・銀・銅」を未来へ活かすために 201

    あとがき(二〇〇七年六月 村上隆) [209-211]
    参考文献 [213-219]

  • 金・銀・銅の利用方法が日本の歴史の中でどう変遷していったかが分かります。宝飾から民生品へ一般化していったことなど。図がところどころあるおかげか、読みやすいです。古代から培ってきた精練・加工技術が現在のPC、スマートフォンに続いていると思うと面白いなぁと思いました。

  • 石見銀山を調べていたので本書を買って読んでみた。分かったような分からないような。岩の中から金属を取り出して、それを加工する方法が歴史を追って記述されているのだけれど、結局、2000年以上も前の人々がどうやって金属が使えるということに気付いたのか、金・銀・銅・鉄ならまだしも、スズとかアンチモンだとか、そういうモノが何%か混ざっているというのは、わざと混ぜたのか、偶然混ざったのか・・・。それに、ものすごく精巧な加工技術。これはいったい誰がどのようにして発明していったのか。科学技術が進歩して分かることはとても多くなった。古いものを分解せずに、中の様子を探ることもできる。しかし、そのモノが製作された当時の職人たちの思いだとか、発見物語などは想像するよりないのだろう。著者の思いは「おわりに」に良く表れている。石見銀山の遺跡を発掘するにつれ、その当時の人々がいかにまわりの環境を大事にしながら銀を掘り出していたのかが分かるのだそうだ。環境保全が叫ばれる現在、歴史の中で捨て去られてきた過去の技術に、もう一度光を当てる必要がるのかもしれない。

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著者プロフィール

北海道大学スラブ研究センター教授。1942年長野県生まれ。
上智大学外国語学部ロシア語科卒業。(社)ソ連東欧貿易会ソ連東欧経済研究所調査部長を経て,1994年4月から現職。2000年4月から2002年3月までスラブ研究センター長。
専門分野は旧ソ連のエネルギー経済,ロシア極東経済,日ロ経済関係。
著書・論文には,『めざめるソ連極東』〈共著〉(日本経済評論社,1991年),『ソ連崩壊・どうなるエネルギー戦略』〈共著〉(PHP研究所,1992年),「ロシア石油・天然ガス輸出市場の形成」西村可明編著『旧ソ連・東欧における国際経済関係の新展開』(日本評論社,2000年),「サハリン大陸棚石油・ガス開発にともなう環境問題」(『ロシア研究』日本国際問題研究所,2001年),『サハリン大陸棚石油・ガス開発と環境保全』〈編著〉(北海道大学図書刊行会,2003年)など多数。

「2004年 『北樺太石油コンセッション 1925-1944』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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