川と国土の危機 水害と社会 (岩波新書 新赤版1387)

  • 岩波書店 (2012年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004313878

感想・レビュー・書評

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  • 【内容】東日本大震災は、臨海地域の開発に依存してきた近代日本への警告である。無思慮な開発は国土の脆弱性を増し、大水害の危険度は増大している。一方、人々は防災を行政に依存するあまり自助の意識が薄れ、災害の可能性すら考えない。水源地の森林から河口の海岸まで、川の流域全体を統一した保全思想と、防災立国の構想が必要だ。 (「BOOK」データベースより)

    【感想】河川管理の仕事をしていたので、せっかくなのでと読んだ一冊。河川工学の専門家の著書であり、事務職には難しいところもあったが、本書全体に流れる自然(河川)への深い理解と愛情を強く感じた。あらためて、今の時代の河川行政を考えるのに相応しい多くの示唆に富んだ書。

    ・「河川は上流の水源地域から中下流域、河口の沿岸域、水の流れる先の海まで、物質的、生態学的、歴史的、文化的に密接に結びついている。」(P90)…もともと歴史文化専攻の僕にとって、河川の流域が有す、1つの歴史的・文化的なつながりを再認識し、何かのきっかけになる気がした。
    ・「自然に対する深い理解を持った上で、開発や防災技術と自然との調和をわきまえることの重要さ」(P145)…やはり壮大で雄大な相手を知らなくては、人間の開発・防災はうまくいかない。調和して、ともに生きていくことが必要であろう。
    ・「古来、わが国はさまざまな災害の経験の積み重ねを経て、それぞれの地域ごとに、災害との闘い方、備え方、住まい方、日常の心構えを伝承し、災害文化を育てた。」「あらゆる災害への行政依存。民衆の知恵に基づいた災害文化の凋落」(P179)…近代の治水技術とは違った、近世以前の治水対策から学ぶことは、いまこそ、多いのでなないかと感じた。
    ・「大都市での水空間の確保は、防災・景観・文化の面で都市に風格を与える」(P183)…治水対策をした上で、いま、このコンクリートの時代だからこそ、水・河川の果たす役割は大きいものがあると思う。

    まだまだ、興味深い記載は多い。また関わりのある仕事についたとき、再読してみたい。

  • 摂南大学全学共通プロジェクト関連図書
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB99434213

  • 読み飛ばした所もあったがひとまず読了。

  • 川と国土は切り離せない

    川を考える軸
    ・流域 山から海
    ・空から地下
    ・時間 

    ダムを作ると砂が溜まる→河口に排出される砂が減る→海岸が侵食される

    景観の劣化はリスク増

    森林、農地の地籍

    終わりのない詰将棋

  • 【電子ブックへのリンク先】※スマホ・読上版です!

    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000073156

    ※学外から利用する場合は、「学認アカウントを・・・」をクリックし、所属機関に本学を選択してキャンパスIDでログインしてください。

  • 近代以降の短期的な要求にもとづく土地利用が、災害に対する危険度を増していったことが具体的に論じられている。『国土の変貌と水害』の入門編ともいえる一冊であり、大河津分水路についてのエピソードは特に興味をひかれた。ダムの嵩上げ、浚渫と下流への土砂運搬、操作目的の変更など、新たな提案もいくつかなされている。
    「河川技術者は、河川という自然と、永遠に詰まない将棋を指しているようなものである」。

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2016年度第9回図書館企画展示
    「災害を識る」

    展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。

    開催期間:2017年3月1日(水) ~ 2017年4月15日(金)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

  • 川は、上流から河口まで、そして海岸線も含めて川全体で治水を考えないとバランスが崩れてしまう。説得力のある内容で思っていたより内容は良かった。海岸線だけみて語ってもダメなんじゃないかな。

  • 川の源流から河口まで、本来川はひとつながりの自然と考えるべきところを、我々が管理する上での合理性を求めて縦割り行政によって管理したことにより、水害を助長させたのは間違いないと感じた。恐らく高度経済成長期において経済性が優先されていた時期にも、筆者のように災害工学的見地から意見を発していた方は少数ながらおられたと思う。現代社会においても大多数の意見を優先するのでは無く、少数派の意見に耳を傾けその価値を真に理解して物事を決定して行く必要があると感じた。

  • 国土の変貌と水害、都市と水、地球の水が危ない、といったこれまでの岩波新書での著書のエッセンスがちりばめられている。(さっと読めるわりに)本質をつき続ける記述の勢いに陰りはない。それでいてまた、海岸堤防のことなど、まだまだ新たなテーマをも繰り出してくるのだから恐れ入る。

    河川に携わるなら、やはりまずは歴史から知れ(過去の破堤箇所、歴史的治水施設など)というのと、それに地質等への言及が印象的。
    それに加え、超過洪水をみすえて、小規模遊水地(耕作放棄地や、水田への地役権設定)までも指摘されていて、グッと来た(ドキッとした)!

    歴史という観点からは、(本書でも挙げられている)杉本苑子「孤愁の岸」も、早く読まないとなぁ。

  • 高橋裕著「川と国土の危機〜水害と社会」(岩波新書1387)読み終わり。図書館で借りましたが,購入決定〜!

    東京で災害というと首都直下地震とすぐに思うが,実は水害のポテンシャルも高いということを知った。利根川,荒川,江戸川という大きな川が流れていて,かつてはそれらが氾濫して大きな被害をもたらしたという。
    そのような歴史的な視点に加えて,高度経済成長期の国土開発がいかに河川にダメージを与えて,災害の危険性を高めてしまっているか,日本の景観をゆがめてしまったか,これからどのような防災教育をするべきか,など覚えておきたいことがたくさん書かれていた。

    図書館の本には赤線を引けないので,自分で買って赤線を引きながらもう一度読みます。

  • 14/5/10読了

  • 河川工学の老教授が日本の河川に関する課題を論じた書。
    最初のうちは、きれい事を並べているだけかなと冷めた気持ちで読んでいたが、ダム建設全盛期の昭和30年代にタム建設反対の訴訟に原告推薦の鑑定人を引き受けたり、多摩川水害訴訟では、原告、被告双方から証人として推薦され、平成の今の時代でも通用する主張を堂々と行ってきた方であることがわかった。その上で、明治生まれの先人を引き合いに出して、住民や役人は川をもっと観察すべしとの主張は説得力があった。
    幸田文も著者の講義を聴きに来ていたとのことで、そのときの逸話もおもしろかった。

  • 河川工学、勉強したくなった。

  • [紹介文から]東日本大震災は,臨海地域の開発に依存してきた近代日本への警告である.無思慮な開発は国土の脆弱性を増し,大洪水の危険は高まっている.川の流域全体を統一した保全思想と,防災立国の発想が必要である.

  • 川や崖などの地形や水環境といった、自分が興味のあるテーマの本を続けて読む機会を得ました。最後に出会ったのがこの本でした。専門用語などが多く使われ、読みとばした部分も少なくありません。でも、今の日本にとって何が優先されるべきか、あらためてきづかされました。経済成長だけを声高に叫ぶ方々に是非読んでくださればと願います。
    「日本がダメなら、ハワイに住めばいいじゃないの」なんて言いだす富裕層が出ないうちに…。

  • 日本における治水、災害の歴史を辿り、現代社会にどう応用していくべきか、それを手助けする技術者としてどのようにあるべきか、を書いた本です。土木や河川、農林業にかかわる人は読んでおいて損はないでしょう。

    高橋裕先生はこの分野では本当に著名な方ですが、その著者が今まで行ってきたこととそこにある問題意識というのは多くの土木技術者にとって考慮に値するものだと思います。
    河川にまつわる話が多いですが、それ以外の災害についても触れていますし、日本という国、東京という都市がいかに災害に対して脆弱な基盤の上に存在しているかを思い知らされます。

    総合的管理が、著者が以前から訴えていた流域管理だけでなく、海岸や地下水の保全にも適用されるべきである、という考えも説得力がありますし、猶予のない、切羽詰っている日本の現状が伺えます。
    さほど分厚くはないですが、市民としても、技術者としても学べることのある一冊だと思います。

  • 水をせき止めれば、同時に土砂も止めてしまい、河口に運ばれる土砂が無くなれば、海岸が浸食されるがままになる。
    いたちごっこだから、人間のすることはたかが知れているし、ダム事業そのものが間違っているのではないか・・・という若者をむしろ諌める。
    人はそのように試行錯誤しながら防災に努めてきたのだからと。
    長老の意見を聞くような気持ちにさせられる。
    一貫して著者の言いたかったことは、国や行政の国土に対する根本的な哲学の無さではなかったのだろうか。

  • 517||Ta

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著者プロフィール

1927年静岡県生まれ。東京大学名誉教授、日仏工業技術会会長。治水・利水と河川環境を統合した新しい河川工学の分野を切り開き、国内外で水災害の軽減や河川環境の改善に貢献。2015年日本国際賞受賞。

「2015年 『日本固有の防災遺産 立山砂防の防災システムを世界遺産に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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