アメリカ寄り情報が溢れ、現首相が親米路線に急速に舵を切る中、バランスをとるために親中派のアジア将来像として通読。アメリカ主導のTPPはアジア分断も狙っており、アセアン・日本主導のRCEPをベースにした東アジア地域統合を目指すべきという意見。軍事力・経済力・文化力を通じた上からのグローバル化ではなく、地域主導・地域利益最大化を目指したグローバル化。日中韓は資本財・消費財・中間財の棲み分けが可能で、発展レベルが異なる東南・北東アジアも相互補完を通じた相互依存環境を作りやすい。EUは不戦を目指し国力を決める石炭鉄鋼生産共同体から出発したが、アジアはインフラ整備の開発共同体から。ヨーロッパがデューレ(法的)の共同体からスタートしたのに対し、アジアはデファクト(事実上)でできるところから機能毎のルール作り。内政不干渉。一党独裁(開発独裁)であっても、経済発展が市民社会を育み政治発展を促すという考え方。ミャンマーだけでなく北朝鮮も同列で語る。さらに中国の軍事力は脅威ではない、核戦力も通常戦力も確証破壊戦略のためのミニマム抑制力レベルであり、外交的抗議、政治的威嚇を超えない。むしろ米国は先制攻撃を辞さず、ミニマム抑制レベルを上げるざるを得ない状況を作り出し、東アジアの軍拡を煽っていると続ける。小さな島の領土問題に拘らず、まず日中韓で経済圏を先行させてRCEPの範を作るべきとの意見。
前半は世界のフラット化/Gゼロ化、覇権・地政学、産業/情報革命等のキーワードを並べて歴史を総括しつつ、地域主導重視、東アジア共同体偏重の著者の意見に誘導。その背景をテリトリー(領土拡張)→プロダクション(大量生産・消費)→サステイナビリティ、労働資源→フォード・トヨタ→モジュール化、垂直統合→水平分業→ネットワーク分業の時代遷移で補完する。それら自体は表面的な論理展開ではあるが、黄色人種で大航海時代に参加できず、資源国利権を押さえていない日本が、なぜかつての宗主国同様にウマミを吸い上げる先進国の仲間入りを許されたのかというのは確かに不思議。安価な天然資源に支えられて農業工業技術・サービス産業を進歩させてきた先進国だが、今後、新興国の中産階級が増えた時にも安価な天然資源の供給が維持されるのかは不透明。そんな中、アメリカ衰退と平行して生まれたシェール革命が今後の世界秩序にどういう影響を与えるかは興味深い。