- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004314660
作品紹介・あらすじ
二〇一三年、首相の口から改憲要件緩和までが声高に叫ばれ再燃した改憲論議。なかでも重要な論点-改憲手続、憲法擁護義務、押し付け憲法論、国民の義務と自由、個人と家族、非武装平和主義、国民投票の功罪-を比較憲法の視点から丁寧に検討し、自民党改憲草案の危険性と今後の議論の在り方、日本国憲法の現代的意味を再確認する。
感想・レビュー・書評
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護憲の立場からの憲法論であり、ややイデオロギー色がある。国際比較する事は有意義ではあるが、憲法は各国の事情によって決定されるものなので、国際比較が護憲の「ツール」となってしまう事には注意したい。また、本書は8年前の刊行であるが、最近の世論調査では「改憲すべき」が多数派なので、社会情勢に変化がある事にも留意する必要はある。
尚、序文で気になった箇所がある。それは、明治憲法をワイマール憲法と同列に論じ、「ファシズム憲法へと移行する流れ」と論じている点である。明治憲法がファシズム憲法に移行したという事実はないので、このような誤解を招くような書き方は学者としての資質を疑わざるを得ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新 書 IS||323.14||Tuj
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第3章「押し付け」論再考 が良くまとまっており非常に良かった.今もそうだが,保守派の考え方は時代を見つめていないし,将来も見ていない.嘆かわしいことだが,それを支持する国民がいることは事実だ.1948年に「極東委員会」から憲法の見直しを諮られていたにもかかわらず,うやむやにパスした事実はもっと公にするべきだろう.自民党の憲法案の底の浅さが随所に語られていたが,あのような案を公表する政党があるのは,恥以外何物でもない感じだ.
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秀作。特に「押し付け憲法」論の再考と、個人の尊重に関する論考は、一読の価値あり。硬性憲法とか、明文改憲とか、懐かしくもあまり身近に感じていなかった論点を考え直すのに絶好の一冊。
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配置場所:摂枚新書
請求記号:323.01||T
資料ID:95160073 -
6月新着
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辻村みよ子『比較のなかの改憲論 日本国憲法の位置』岩波新書、読了。本書は憲法学・比較憲法学の立場から日本国憲法の位置づけや憲法改正手続きの問題を検討する一冊。各国との対比は改正手続きが厳しすぎる訳でもないことを、背景となる「押しつけ憲法論」の虚偽を明らかにする。
昨今の稚拙な改憲論は「ゲームに勝つためにゲームのルールを変えよう」という国民の意識や生活とかけ離れた「政治の論理」。必要なことは喧噪に籠絡されず、人権の尊重や平和主義など日本国憲法の精神を活かすことではないだろうか。
「とくにこれからの憲法論は、個人の人権を守るために国家が存在し、戦争こそが最大の人権侵害であることを基礎として、新時代を先取りする観点から論じることが肝要」と著者はいう。自由な討議は必要不可欠だが、抜き打ち的な拙速は避けたい。
辻村みよ子『比較のなかの改憲論 日本国憲法の位置』岩波新書より「日本国憲法の歴史的意義とは」次の通り。
憲法史的に見れば、「押し付け」よりもむしろ、明治時代の自由民権運動が築いた民主的憲法思想が、鈴木安蔵らの「憲法研究改案」に結実して、ラウエル文書からマッカーサー草案に伝わり、新憲法のなかに取り入れられた、という日本国憲法の歴史的事実こそが重要である。223頁。
日本国憲法の中に、戦前より一貫して流れる草の根の息吹が合流するがごときものは、憲法だけでなく、デモクラシーの議論にもあるのではないかと思う。吉野作造の民本主義の主張と実践に関しても、戦前戦後で断絶しているわけではないが如くに。 -
改憲論の各テーマごとに、各国の憲法の規定との比較により日本国憲法を理解することができる。
それぞれの立場で見方は大きく変わるものだとは思うが、どの分野の議論であっても学者、研究者としての科学的議論がもっと提起されてよいものと思う。 -
この本を読むことで、とにかく自民党改憲案が怖いものであることがわかった。
もう少しでだまされてしまうところだった。
「どこそこの憲法は・・・」という論調をメディアでよく聞く。これもまた当人のご都合主義であることが多い。
比較するのなら、比較憲法学を学ぶ専門家の意見を聞くべきだ。
とにかく、現日本国憲法が世界でも稀有な未来を見つめた良き憲法であることを再認識させてくれた。
それならそれで・・・・、改憲など不要なのでしょう。