イスラーム圏で働く――暮らしとビジネスのヒント (岩波新書)

制作 : 桜井 啓子 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315629

感想・レビュー・書評

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  • イスラーム圏では働かないけど、引っかかっていたことや中途半端な知識やイメージを少しでも明らかにしていきたい気持ちが働いている。

    以前読んだ『パリのすてきなおじさん』にてアルジェリアとかクルド人とか程良く予習できたから少しは内容についていけたと思う。

    大好きなインド映画にもたびたび登場するイスラム教。イスラーム圏とはいえ国ごとにルールやマナーが違いすぎて、その程度の差も激しいもんだから聞いているだけで気が狂いそうになった。

    ネットも存在しない時代にイスラーム圏に身を投じた方々もおり、不安を感じる暇もないまま相当苦労された様子が伺えた。

    情報も乏しいなか、「対面ファースト」が基本の現地のビジネスシーンで手探りで信頼関係を築いていかれたのが素直に凄い…!

    この対面ファースト、仕事になると絶対非効率だと素人目でも感じていた。それでも人との繋がりを大切にするという彼らのエピソードを沢山目の当たりにし、昔ながらで人間くさいけど、血の通ったお付き合いはやっぱり良いなって見直した。

    ※数あるエピソードの中で特に良かったのが、中東のムスリムが旅人を手厚く歓迎してくれるのは「旅人=メッカ巡礼でやってくる人」だったので彼らが無事聖地に辿り着けるようもてなしたのが始まりという話。他宗教を受け入れない土地もあるくらい厳しい戒律に生きた人達かと(勝手に)思っていたけど、日本のお伊勢参りと宿場町の関係と近しいものを感じて何だか嬉しくなったのであった。

  • Amazonを眺めていて偶然見つけた本。私自身、世界最大のイスラーム教徒を有するインドネシアに19年間働いていたので、興味を持ち購入しました。
    本書が出版された2015年の時点でイスラーム市場の人口は16億人。本書の土台となったのは、著者の桜井啓子さんが機構長を務めている早稲田大学イスラーム地域研究機構による「働く日本人のイスラーム〜現場からの声に耳を傾けよう!」(2013年〜14年)という講演会プログラム。本書は講師として招かれた13人のイスラーム圏への赴任経験者の体験談をまとめたものです。地域はアラブ諸国から東南アジアにおよび、業種も商社・石油・建設・食品・観光など広範囲を網羅しています。私も13人の人たちと似たような経験をしていることを確認し、程度の差はあれインドネシアでの業務を思い出しました。

    印象的だったのは

    -湾岸諸国の人たちは機内で一段高い「特別扱い」を求めてくる(キャビンクルーの講演)
    -ドバイでは、薬物レイプされた女性で被害者にもかかわらず、薬物摂取と未婚での性交渉という二重の罪を負わされたケースがある(キャビンクルー)
    -ペルシャ帝国としての誇りがイラン人にある。イランを批判ばかりするのではなく、こちらが文化を尊重していることを相手に理解してもらうことが仕事を進める上で大切(特派員)
    -事前のアポイントはあてにできない(特派員)
    -トルコでは家事を誰かに任せやすい土壌があり女性進出が進んでいる(建設コンサルタント)
    -ローカルスタッフと良い関係を築くには、彼らの宗教への配慮が必要。例えばお祈り時間(商社)

    それからアラブ諸国で働いていた人たちが話題にする言葉が「イン・シャー・アラー(神様がそう望めば)」。これは誘いや依頼をやんわりと断る場合に使われるようですが、はっきりとしない態度で流されるので、アラブでのビジネスを難しくしているとコメントされています。インドネシアでは聞いたことはありませんでした。

    本書は講演会の議事録なので、岩波新書としては短時間で読め、イスラーム圏でのビジネス入門前の読み物としては、面白い本です。ただ、コロナ以前の情勢が書かれているので、現在はかなり事情が変わって来ていると思います。
    また、ビジネスを難しくしているのはイスラームが原因という考え方について、開発コンサルタントの方は「私の感触としてはイスラームが原因だとされていることの7〜8割は、世界のどこにでも」あり、「昔から続いている風習や習慣の原因を安易に宗教に求めるべきではない」と警告しています。これは私も同意します。イスラーム教徒を色眼鏡で見るのではなく、結局、宗教を意識しすぎない密なコミュニケーションが必要と思います。

  • 日本企業からイスラム圏に駐在することになったビジネスパーソンたち、また、日本国内でハラールビジネス(日本在住ムスリム向けの食やサービス)に携わる人々の記録。客室乗務員、建設コンサルタント、特派員、ヤクルトレディなど、章ごとに語り手が変わるコラム集のような一冊。駐在生活において彼らが感じた各国の独特の文化や、心暖かいけれど気が強い現地の同僚たちの人間性など、わたしは一度も行ったことのない国々の様々な日常を垣間見られて、おもしろかった。

  • イスラーム圏で暮らし、仕事をしてきた人の体験談を集めた本。イスラームに関する学術書ではなく、実体験で感じるイスラーム世界を紹介することに重点を置いている。

    商社、航空会社など、中東や東南アジアのイスラーム諸国に駐在してきた人数名に話を聞いている。
    知識的に知っているイスラーム諸国のイメージとは違うところもあり、また、同じイスラームの国であっても地域により雰囲気が違ったり、実体験だからこそわかるところもある。

  • 厳しい戒律というイメージのイスラームの世界は、中東などの厳しい環境とも相まって、滞在したり住んだりするだけでも異空間のような感じがある。そのような環境でビジネスをするというのはどういうことか。そんな疑問に平易な言葉で答えてくれる日本人。その多くはビジネスマンで、修羅場も経験しているであろうが、現地の習慣や習俗を尊重し、粘り強く現地でビジネスを根付かせていることが分かる。同じイスラームといっても、共通する部分も多いが、民族性や地域性でそれぞれに異なる部分もあり、それぞれの任地で得た貴重な体験が詰まっている。

  • コンパクトにまとまっていて、イスラムをとりあえず知りたいという人にとっては大変いい本なのではないだろうか

  • イスラム圏にいるので読んでみた本。なかなか面白い。イスラムは偏見に満ちた世界に日本人に映っているが、とても面白い文化圏である。アラブ圏・アジアのイスラム国で働いていた方々のコラムが集められている感じ。

  • イスラーム圏といっても幅広くさまざま。東南アジア、南アジア、中東、アフリカまで。/インシャアッラーの捉え方もさまざま。いい加減に投げやりに使う人もいれば、やるだけのことはやるけど、あとは神の思し召しがあれば叶う、という人事を尽くして天命を待つ、といった人もいて。/とにかくプライドが高く、外国人のもとでなど働かぬ、外国人は使うもの、雇うもの、というクウェートをはじめとした湾岸産油国の人々。イラクで人質になった経験をもとに、海外で働くということはさまざまなリスクと隣り合わせであることを自覚し、危機管理しなければならない、という言葉。トルコ人には、とにかく「その場で何が大事か」を規則にとらわれずに優先できる柔軟さがある、と語る言葉。

  • 858

    桜井啓子
    1959年東京生まれ。1991年上智大学外国語学研究科国際関係論専攻博士課程修了。博士(国際関係論)。現在、早稲田大学国際学術院教授。専門は比較社会学、地域研究(イラン)

    イスラーム世界への憧れは、高校世界史の資料集に載っていたモスクの美しさに惹 かれて以来。大学では史学を専攻し、イランがご専門の先生のゼミに入りました。さ らに夏休みにトルコを旅行して、イスラーム文化を肌で体験したことで、ますます虜 に。とうとう在学中一年間休学し、モロッコ、シリア、レバノン、ヨルダン、トル コ、エジプトなど地中海から中東を放浪する学生バックパッカーになりました。就職 先も自然とその流れで、イスラーム圏の航空会社です。

    また、ドバイは、観光都市ということもあり、とても自由で、 日本とそれほど変わらないように見えます。しかし、入社すぐの 研修で紹介された事例がショッキングでした。それは、未婚女性 がこっそり薬物の入った飲み物を飲まされ、眠くなったところで レイプされたという事例です。日本で同じようなことが起きた場 合、当然その女性は被害者なのですが、ドバイでは、その女性 は、薬物摂取と未婚であるにもかかわらず男性と関係をもったと いう二重の罪に問われることになるのです。

    イスラーム圏でも結構、現地製造のお酒があります。トルコや レバノンのラク、ラキとかアラクは、水割りにすると白く濁るア ルコール度の高いお酒です。ビールでは、エジプトのステラビー ル、インドネシアのビンタンビールがあります。モロッコはメク ネス産のワインが有名です。これらは地元のムスリムも購入でき ます。

    同じイスラームの国でも、エジプトにはみなさんご存じのベリーダンスがありま す。女性は基本的に肌をあらわにしない文化がある国ですが、登録しているベリーダ ンサーには、ある程度の露出が認められています。ただし、あまり露出が激しいと網 の日のような服を着せられるなど、いろいろな制限はあるそうです。しかし、結婚式 などではベリーダンスは花ですね。そういうところは国によってすごく違います。

    浪花節が通じるというか、義理人情に厚いのもイラン人の特徴です。イラン人は家 族をとても大事にしますが、人間的な温かさや包容力があると感じました。子どもを とてもかわいがるので、子育てのしやすい環境だと思ったこともあります。核問題な どのイメージが先行して「怖い国」と思われがちなイランですが、イラン人はとても 魅力的です。

    初来日の場合は、東京、名古屋、大阪、京都、それに余裕があれば、名古屋から岐 阜や長野といった観光コースが一般的ですが、二度日以降ですと、北海道が人気で す。特に喜ばれるのは、桜、富士山、そして雪。雪を見たことのない人がほとんどで すから、ふわふわの雪に触りたい、雪の上に寝転んでみたいといった夢を持っていま す。観光以外では、道にごみが落ちていない、接客が丁寧、電車や地下鉄が定刻通り に来る、その他、随所で体験する日本のテクノロジーなどが、高く評価されます。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685614

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