語る歴史,聞く歴史――オーラル・ヒストリーの現場から (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316930

作品紹介・あらすじ

文字史料だけでなく、聞き取りによる歴史の重要性に光が当てられて久しい。しかし、経験を語り、聞くという営みはどう紡がれてきたのか。幕末明治の回顧、戦前の民俗学、戦争体験、七〇年代の女性たちの声、そして現在…。それぞれの"現場"を訪ね、筆者自身の経験も含め考察、歴史学の可能性を展望する初の試み。

感想・レビュー・書評

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  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB25149490

  • 大橋さんオススメ本。

  • 210.6-O
    閲覧新書

  •  現代日本における聞き書き、口伝、オーラル・ヒストリの実例。平易にかかれている。取り上げられた聞き書きにも興味を持った。
     ただ、「21世紀にける歴史と歴史学のあり方を考え」(vii頁)ているのかは、歴史学素人の私には分からなかった。

    【書誌情報+内容紹介】
    『語る歴史、聞く歴史――オーラル・ヒストリーの現場から』(岩波新書 2017)
    著者:大門 正克[おおかど・まさかつ] (1953-) 日本近現代史。
    定価:本体860円+税
    通し番号:新赤版 1693
    刊行日:2017/12/20
    ISBN:9784004316930
    版型:新書 278ページ

    聞き取りによる歴史の重要性に光が当てられて久しい。しかし、経験を語り、聞くという営みがどう行われてきたかを論じた本は意外にもない。幕末明治の記録、戦前の民俗学、戦争体験、70年前後の女性たちの声、そして現在……。語った言葉が、聞き手に受け止められ、歴史として紡がれるまでの生き生きとした交歓を、自身の体験も交え考察、歴史学の豊かな可能性を展望する。
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b330656.html

    【目次】
    はじめに──「語る歴史,聞く歴史」から開ける世界  [i-vii]
    目次 [viii-xii]

    第1章 声の歴史をたどる──幕末維新の回顧録から柳田民俗学まで 001
      語る歴史を文字にする試み/人は話を聞き,語ってきた──声と文字のあいだ/前近代における歴史の編さんと聞く歴史/近代の歴史学の成立と政治を聞く歴史/明治時代の速記と幕末維新回顧ブーム/『福翁自伝』/『光雲懐古談』という座談/「話上手」の時代──篠田鉱造の『百話』/声を記述する方法/柳田国男と民俗学の誕生──アカデミズム歴史学への批判/柳田国男の「聞く」/瀬川清子/瀬川清子の「聞く」/戦前の「語る歴史,聞く歴史」/代書屋/声の文化の終焉と黙読の時代

    第2章 戦後の時代と「聞く歴史」の深化──戦争体験を中心にして 045
     一九五〇~六〇年代の「語る歴史,聞く歴史」/画期としての一九七〇~八〇年代/戦後における「語る歴史,聞く歴史」の特質/戦後の政治を聞く歴史/国会図書館の政治談話録音/植民地を聞く歴史/朴慶植の強制連行を聞く歴史/野添憲治『花岡事件の人たち──中国人強制連行の記録』/『沖縄県史・沖縄戦記録』──戦争体験を聞く/『東京大空襲・戦災誌』──戦争体験を書く/沖縄戦を語る,聞く,叙述する──『沖縄県史・沖縄戦記録1』を読む/一九八〇年代までの「語る歴史,聞く歴史」

    第3章 女性が女性の経験を聞く──森崎和江・山崎朋子・古庄ゆき子の仕事から 091
      女性の経験を聞く動き/森崎和江/聞き書きとしてまとめられた『まっくら』/「聞く」ことへの自覚/山崎朋子/『サンダカン八番娼館』を再読する/『サンダカン八番娼館』へ至る道/山崎朋子と森崎和江/古庄ゆき子/『ふるさとの女たち』/朝鮮人女工二人の聞き書き/「オモニのうた」/記念碑的な作品/森崎・山崎・古庄──女性が女性の経験を聞く/戦後における二つの聞く歴史

    第4章 聞き取りという営み──私の農村調査から 135
      なぜ,聞き取りにとりくんだのか/私の聞き取りを振り返る/聞く方法と想定外の話/「テーマを聞く」から「人生を聞く」へ/「聞く」ということ── ask とlisten のあいだ/桜林信義さんの場合/壁にぶつかった私の聞く歴史/なぜ語ってもらうことができなかったのか/歴史叙述の困難

    第5章 聞き取りを歴史叙述にいかす 161
      二つの課題を受けとめる──聞く歴史と歴史叙述/沈黙という言葉── ask からlisten へ/ listen から聞こえてきたこと/試される聞き手──被害の委譲/歴史のなかに「語る歴史,聞く歴史」を置き直す/「語る歴史,聞く歴史」をふまえた通史の構想/『戦争と戦後を生きる』での挑戦/通史への反応/戦後の学問と「語る歴史,聞く歴史」/中村政則『労働者と農民』/吉沢南の場合──難民との衝撃の出会い/聞き取りにおけxiiる「資料批判」/『私たちの中のアジアの戦争』の叙述方法/オーラル・ヒストリーの検討へ/「語る歴史,聞く歴史」をふまえた歴史叙述の試み

    第6章 歴史のひろがり/歴史学の可能性 207
      歴史はどこに?/一九九〇年代以降の現在と「語る歴史,聞く歴史」/なぜ「聞く歴史」がひろがっているのか/介護民俗学の聞き書きの〈現場〉で/性をめぐる困難を背負った人たちの〈現場〉から/体験を聞く歴史が成り立つ条件とは?/文字史料と「語る歴史,聞く歴史」,あるいは定義をめぐって/戦争体験を受け継ぐ,受け渡す/自分の言葉に責任をもつ/東日本大震災のあとで──すぐそばにある歴史/継続して聞くなかで/「語る歴史,聞く歴史」の可能性

    あとがき(二〇一七年一〇月 大門正克) [245-249]
    参考文献 [251-263]


    【表一覧】
    表1 戦前の「語る歴史、聞く歴史」(政治,座談,ジャーナリズム,民俗学など) 038-039
    表2 戦後の「語る歴史、聞く歴史」1(政治,行政,ジャーナリズム,植民地,戦争体験) 048-049
    表3 戦後の「語る歴史、聞く歴史」2(女性,労働/社会運動,学問) 050-051

  •  明治維新期から現在までのオーラル・ヒストリー実践史。明治期の『旧事諮問録』や「史談会」から現在の政治学・政策研究系の政治家・官僚のインタビュー記録に至る系譜(本書では「政治を聞く歴史」と呼ぶ)を横目に見つつ、叙述の中心は「民衆」「庶民」(特に女性やマイノリティの)の生活「体験」を聞く「聞き書き」で、旧来であれば歴史学ではなく、文学、民俗学、文化人類学、社会学などが対象とした生活記録・体験記やルポルタージュ、ジャーナリズム的な「聞き書き」を重視している。方法論の発展・変遷を歴史的に跡付けるだけでなく、著者自身が行ってきた聞き書き実践の試行錯誤を赤裸々に明かすことで、その「体験」の叙述自体が一種のオーラル・ヒストリーとなっているのが興味深い。「語り手」と「聞き手」の関係性、特に「聞き手」の「聞き方」を問題としており、「聞き手」の関心領域に沿って語りを聞き出す「ask」ではなく、「語り手」の経験に即した決して整然としていない(時間的に整序されていない)語りを、その身体性を含めてまるごと聞き(「listen」)、受け止める(「take」)プロセスを提起している。歴史学・歴史認識のあり方を鍛え直す新しい日本近代史学史論と言えよう。

  • 東2法経図・開架 B1/4-3/1693/K 

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著者プロフィール

早稲田大学教育・総合科学学術院特任教授。日本近現代史。『戦争と戦後を生きる 1930年代から1955年』(日本の歴史15・小学館)、『語る歴史、聞く歴史』、『増補版 民衆の教育経験』(以上、岩波書店)、『「生存」の東北史』、『「生存」の歴史と復興の現在』(以上、共編著、大月書店)他。

「2021年 『戦争と性 34号 特集:性暴力のない社会へ──「自分ごと」として考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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