- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004318958
作品紹介・あらすじ
ヒトラー(一八八九─一九四五)とは何者だったのか。ナチス・ドイツを多角的に研究してきた第一人者が、最新の史資料を踏まえて「ヒトラー神話」を解き明かす。生い立ちからホロコーストへと至る時代背景から、死後の歴史修正主義や再生産される「ヒトラー現象」までを視野に入れ、現代史を総合的に捉え直す決定版評伝。
感想・レビュー・書評
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さる御仁の弁舌ぶりを「ヒトラーを思わせる」と、ある政治家がつぶやいことで騒動に発展している時に読むのは何ともタイムリーだったが、これは"ヒトラー"研究ではなく、"ヒトラー研究者"研究だなというのが率直な感想。
最終章でこれまでの主要なヒトラー像や研究の変遷が手際よく纏められていて、これはこれで参考にはなるのだが、「ささやかな拙著で、等身大のヒトラー像の再構成をめざす」とした序文の目論見は果たせず終い。
本場の研究者に太刀打ちできなくても、日本の研究者ならではの日本人のヒトラー像を描けばいいのに、結局はカーショー読んでではつまらない。
「現在『わが闘争』に向き合う私たちは、それらが偽りであり、ヒトラーの不誠実、その人柄による瞞着ぶりを象徴する表現であることを十分認識できてなければならない」。
デタラメでつくられた神話や虚像に踊らされ、それを受容し支持したドイツ国民にこそスポットを当てるべきだという態度は、トランプが語る言葉は嘘八百ばかりで真実をついたものはなく正面から検討に値するものではない、焦点は彼に投票したアメリカの支持者や取り巻く時代背景だとする姿勢に似ていて、結局そこで生まれた解釈も限定的な賞味期限しかないイメージの再生産だろう。
もともと一般的な"大災厄"という意味を表していた「ホロコースト」がいつの間にか、第二次世界大戦におけるナチスのユダヤ人大虐殺を指す用語に変わったように、「ヒトラーという言葉をなぞらえるなど国際的に言語道断だ」という現在の反応からも、やがてこの名前が口の端にのぼることさえ憚れるタブーとなっていくのかもしれないが、結局のところ彼の正体は何だったのだろう。
稀代の扇動家なのか、悪党なのか、山師なのか、魔術師なのか、はたまた人格障害者か?
単なる派遣弁士が入党するやいなや、代表者のみならず独裁権を要求し、絶対忠誠まで誓わせる。
配下の有象無象のならず者たちが思い思いに行動するとみるや、たちまち混乱を収束させてしまう。
怠惰で落伍者同然に辺り構わず狂気じみた自説を巻く立てる男が、世界でも指折りの理屈好きのドイツ国民を最後には熱狂して支持させ、最も閉鎖的でプライド高く敵対的に見られていた軍部をも従わせていく過程を改めて追っていくと、ますますその実態がわからなくなってくる。
自己保身に走り、そこそこの成果で妥協するといった打算は鼻から念頭になく、すべてはオール・オア・ナッシング、裏付けるのはただ意志の力のみというのだから、呆れてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本屋で新刊として平積みされていたので、購入したが、最後に2ページほどの「新あとがき」が追加されただけの新刊だった。
ただ、読んで良かった。なぜホロコーストなんて起こったのか、この本を読むと、現在こそファシズムやホロコーストが再現されるおそれがある時代だと思う。
ドイツ人より画一的な忖度社会である日本は、ヒトラー的な人が出現すると1/3程度の人間は支持する社会になっている。そして支持はしない人が過半数だったとしても、忖度する人が多いので、ファシズムに弱い体質の国だ。香港でも台湾でも… -
歴史的出来事がブワーって書いてあって1/3くらい読み飛ばした。ヒトラーのことについて知るのは大事だけどもうちょいわかりやすい本から入るべきでしたね
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戦後長らくなされてきた世論調査では、ヒトラーが「悪い」面だけではなく、「良い」面もあったという解釈が今も続いている。また若い世代を中心にヒトラーに対し無関心な態度をとることも多い。世代を超えてヒトラー神話の再考を促すのが本書。生まれから敗北、そして死後の影響などを等身大のヒトラーを検証している。学術書のようで、なかなか難解な部分も自分にはあった。
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出だしから興味をそそられる投げかけがある。ヒトラーについて読むとき、この好奇心に満ちた感覚が常にある。歴史上人物としてはまったく、好きではないにも関わらず。
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世界史を高2で捨てた私。まぁあのまま受講してても全く記憶してない自信はあるけれども。
宗教とかもそうなんですけど、欧州歴史に対して無知なまま社会に参加するのは目隠し簀巻きで混雑の花火大会に行くようなもんで。なんのこっちゃ分からないまま社会生活終えますよね。
老いぼれたとはいえさすがにこのまま脳みそ真っ新のまま死んでいくのもなと思い試しに借りてみた本。ハリウッド映画ですら「さっきの人とこの人って同じ人?」「この人名前なんだっけ?」となる私なので、カタカナ名前は空気として読み流せば文章は冒頭からかなり読みやすい。
ヒトラー幼少期から始まりウィーンでの困窮生活、ドイツへの逃亡、第一次世界大戦、ナチ総統となってからの第二次世界大戦と敗戦。
陰惨な内容とは裏腹に、読み手フレンドリーにテンポ良く展開していく。
ヒトラーに絵の才能があれば、彼が1945よりも前に暗殺されていれば、多くの人は死なずに済んだのではと思うものの、居ないなら居ないで他の誰かが彼の代わりに統治者の椅子に座っていたのだろうか。
わざとなのか当時の日本に関する記述はほとんどない。
「誠実で知的でナチ」なるほどねぇ。
本文中にはないが、ヒトラーには異母姉の子孫が5人いるという。その5人はヒトラーの血を自分達の代で確実に終わらせるために子供を作らないとしていると。んー。スターリンにもムッソリーニにもポルポトにすらも直径の子孫がいるのだからいいような気もするけども。5人の人生が厳しいものであると伝わるなぁ。
にしても。
やはり私はいつもの疑問に戻ってしまう。
これほど壮絶な犯罪が行われ、世界中でたくさんの命が無駄に費やされたにもかかわらず、宗教を熱心に信仰してる方々ってどういうつもりなんだろ。
人間なんてただの小賢しいゴキブリでしょうに。
最後に。
主題から大きく外れますがヒトラーが第一次世界大戦時に伝令係だったところで、伝令(後方支援)を「兵站トンマ」、前線を「前線ブタ」と呼び、両者は緊張と対立をはらんでいたと。
元日本代表ラグビー選手(フロント)が「(試合や練習の録画チェックで)バックはスクラムを早送りする。バックとは仲悪い。」と話していた事を思い出した。
仲間ですらこうなんだから争いごとは無くならないし、国籍人種肌色宗教言語文化食タブーが異なるなら争いが起きて当然ですかね。
「ネロ命令」についても。他人が得をするくらいなら死んでしまった方がマシ(敗戦の前に国内の施設を全て破壊するよう命令)の考え方はコイン分けゲームを思い出させる。 -
読む前にドイツの近現代史をさらっておくことをおすすめします。読んだ後になんとも言えない徒労感のようなものが残りました。
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ヒトラーについて若い時から死ぬまで詳細に追った新書。彼が若き日、まだ政治的な活動を始める前から、宣伝業務に従事、ナチス党の中枢で徐々にカリスマになっていき、最終的に自殺するまでを描いたもの。あの戦争と歴史をヒトラーを中心に辿ることができる。なぜ、民主主義憲法下であの悲劇が起きたのか。ヒトラーだけが悪者なのか、それとも他にも要因があるのか。最後でこの辺りの考察もある。
日本の近現代史や、昨今の国内外の戦争や政治的な動きと併せて考えるとおもしろい。
以下、Twitter
https://twitter.com/htyanaka/status/1654691308735197185?s=61&t=RXDizWeZH0NNRiTSCuGhoQ
読了本。芝健介「ヒトラー: 虚像の独裁者 (岩波新書)」 https://amzn.to/3IvBxxH ヒトラーの一生を詳細に書いた新書。ナチス前の彼がどのように生き、ナチスを立ち上げ、あの悲劇を生んだか。その辺りをざっと知ることできる。ヒトラーを中心にあの戦争というものを知ることができる #hrp #book #2023b -
ヒトラー個人に焦点を絞った伝記と思って手に取ると肩透かしを食らう。ヒトラーと同時代のドイツ史でありながら筆の濃淡が大きく、著者の関心のない日独関係などはほとんど閑却される。「おわりに」から読み進めることをおすすめする。
あと、聞き慣れないドイツ語の名詞や人名が頻出するので、巻末に索引を用意してほしかった。