東京大空襲の戦後史 (岩波新書 新赤版 1916)

著者 :
  • 岩波書店
3.88
  • (4)
  • (6)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 109
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319160

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  一夜にして10万人の民間人が殺害された東京大空襲では、77年が経過した今でも被害に苦しむ多くの人たちがいる。社会全体の無知や無関心、偏見に苦しめられながらも、国に対して救済を求めて立ち上がった空襲被害者たちの闘いと、政府や司法、立法の不誠実な対応を検証しながら、戦後の空襲被害者への対応を問いかける。
     戦後、空襲被害者への補償を行わずに、米軍の作戦変更による無差別爆撃へ作戦変更を行ったカーチス・ルメイに、日本政府は1964年、「勲一等旭日大綬章」を送った。受賞理由は「航空自衛隊の育成ならびに日米両国の親善関係に終始高研的な努力と積極的な熱意をもって尽力した」であり、日本人被害者や遺族が「鬼畜」「皆殺しのルメイ」と呼んだ将軍に対してである。
     日本は敗戦までの数年間、「戦時災害」として被害者と遺族に十分とは言えないまでも補償を行っていた。しかし、GHQのクレーマーは、「日本の軍人恩給制度は世界に類例を見ない悪辣きわまるもの」との理由で保障制度を廃止させた。その後、被害者「受任論」を強要し、一方で軍人恩給を復活させた。元軍人や軍属と遺族に対して、日本政府が60年以上に及び支給してきたのは累計60兆円。自民党員を含む超党派で取り組まれてきた特別給付金の要求額は1人1回切りの50万円、予算は30億円足らずであり、年金ではないにもかかわらず、政府は自民党を中心に立法化を拒み続けている。戦後補償問題で、政府側が民間人への保障を拒む際に主張する「雇用者責任論」である。軍人・軍属は政府が雇用していた。だから被害には補償する。しかし民間人は雇用していなかった。だから保障の義務もない、という言い分だ。日本国家の全体主義・軍国主義に振り回された民間人空襲被害への速やかな救済を願う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771241

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00561898

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000056253

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1916/K

  • 空襲被害者の三権への訴えがこの本のメイン。

    それは勿論重要な事なのだが、どちらかと言うとより知りたかったのは空襲の被害大要と被害を受けた方々の戦後の暮らしについてだったので、いささかあっさりしていた。

    3月10日を迎え手に取った一冊。

    ジュンク堂書店難波店にて購入。

  • 本書は「余り知らなかった事案」のあらまし、一部の事項を掘り下げた内容を伝えてくれる。こういうことが在るから、読書は必要な営為だと思い至らせてくれるような一冊になっている。
    第2次大戦時、1945年3月の「東京大空襲」が凄惨極まりないものであったことは伝えられている。本書はその凄惨な有様を伝えることを主旨としているのでもない。凄惨な戦禍を潜り抜けた人達の「その後」というようなこと、必死に生きた戦後が在って、惹起した問題意識とそれを巡る論議というような内容が語られている訳だ。故に本書は「戦後史」と号するのだ。
    「東京大空襲」は夥しい数の「孤児」を発生させてしまった。都内に居合わせて家族を失ったという子ども達も在れば、疎開で他所に出ていた間に家族を失う羽目に陥った子ども達も在る。そうした子ども達は「孤児」ということになって、「各々の不幸」というような経過を辿ってしまう。
    そして焼夷弾が街を焼き尽くすという事態の中、「生涯を通じて苦しむ羽目」という障害を負う人達も多数発生した。そして多くの人達の財産も損なわれた。
    そういう情況については、「街に留まって街を護るのだ!」と“同調圧力”的なモノを生じさせるような公の施策も在って、その故に生じてしまったということも否定し得ない訳だ。
    所謂「戦後」という期間、戦禍を潜り抜けた人々は各々に必死に生きていた。年月を経て、「国の施策で開戦し、戦禍が国土を襲い、人々が被災した以上、国の幾許かの補償が在って然るべきだ」という問題意識が高まった。そして「このままでは生涯を閉じられない!」と多くの人達が訴訟というような活動に身を投じることになる。
    そういうような経過に関して、実は殆ど知らずに居た。それらを伝えてくれた本書には感謝したい。
    「東京大空襲」に象徴されるような、第2次大戦期の日本国内の戦禍に関して、「未解決!?」という「国の施策で開戦し、戦禍が国土を襲い、人々が被災した以上、国の幾許かの補償?」という問題が在ることが解った。そういう本書に触れ、世界の国々の事情を何となく思わずには居られなかった。
    少し以前、何となく「やや旧い?」という程度の以前に、色々な場所で戦禍が生じた。そして残念ながら今でも大きな戦禍が生じている。そういう地域の人々に関して、「国の施策で開戦に至った以上、幾許かの補償?」とか、「戦禍をもたらした“落とし前”を付けるべき人達による補償?」というようなことは如何なっているのであろうか?
    そんなことも思ったのだが、少し旧い経過を説くような内容を含みながら、「最近の情勢下でタイムリー?」というような気もした一冊だった…

  • 4月6日新着図書:【第二次世界大戦中の1945年(昭和20年)3月10日の一夜にして10万人もの民間人が殺害された東京大空襲の空襲被害者たちが、救済を求めて立ち上がった闘いの記録です。】
    タイトル:東京大空襲の戦後史
    請求記号:イワナミ300:ku
    URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28198418

全23件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1967年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、同大学大学院修士課程修了(日本政治史)。1996年、毎日新聞社入社。2019年から専門記者(日本近現代史、戦後補償史)。著書に『戦艦大和 生還者たちの証言から』『シベリア抑留 未完の悲劇』(以上岩波新書)、『「昭和天皇実録」と戦争』(山川出版社)、『特攻 戦争と日本人』(中公新書)、『戦後補償裁判 民間人たちの終わらない「戦争」』(NHK出版新書)など多数。
2009年、第3回疋田桂一郎賞(新聞労連主催)、2018年第24回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞(同基金主催)を受賞。

「2022年 『戦争の教訓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

栗原俊雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×