軍と兵士のローマ帝国 (岩波新書 新赤版 1967)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319672

作品紹介・あらすじ

古代世界において繁栄を極めたローマは、一方では、対外戦争や内乱を繰り返す戦闘姿勢の国家であり、兵士が皇帝位をも左右する軍事体制の国家であった。建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士たちの生涯にも光をあてて新たなローマ史を描き、その盛衰をユーラシア史のなかに位置づける。

感想・レビュー・書評

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  • ローマ帝国については色々な視点から出版されているが、この本は軍と兵士を中心として書かれており、視点が違うだけで新しい発見があるものだと気付かされる。

    歴代の皇帝はどうやって兵隊を集めたか、その給金はどうしたか、給金を捻出するためにどんなことをしたかなど、ちょっと普通には知れなかったことがあり面白い。
    兵士にとっては命懸。兵士をまとめるリーダー的隊長も大変だっただろう。読んでいてなるほどと思うことがたくさんあった。

  • 〝歴史上の巨大国家は、もとから広大な地域を支配していたわけではない。大抵の場合、征服戦争を通じて巨大化した。アッシリア帝国、ペルシャ帝国、秦、モンゴル帝国、オスマン帝国...ローマ帝国もその例に漏れないが、より本質的な意味において、戦争を遂行するための規模と質を備えた常備軍(兵士)とが密接に結びついていた点で異例である〟・・・ローマの建国から滅亡に至る帝国の盛衰をとおして、軍と政治・社会との関わりを追跡した、ローマ史を探求する学徒向け解説書であるといえる。

  • 素直に面白かった。こういう視点でローマ史を眺めると物事が違って見えてくるし、現代にも示唆がありそう。

    強さを誇ったローマ市民らの国民軍の中でまず所得制限が次第に緩和され、後にプロの軍人に徐々に移行し始める。それを強力に推し進めたアウグストゥスであっても元老院に遠慮してローマには側近の近衛兵のようなものは置かなかった。それが次第に変容し、皇帝選びにも介入を許すようになってくる。

    そして、蛮族とみなしていたゲルマン人やフン族の力を借りるようになり、最後は彼らに主導権を握られて西ローマ帝国は滅びる。結果論では時の皇帝らの判断に対していかようにも批判できそうだが、構造として徐々に変容していた面は重要だ。誰が皇帝であっても似た結果になっていた可能性はある。
    さらに寒冷化が進まなければ、疫病は広がらず、ゲルマン人も西進、南下してこなかった可能性もある。

    なお、東ローマ帝国はゲルマン人の進出がそれほど激しくなく、さらにシルクロード交易の恩恵を受けやすかったという。この点は筆者の別の本からの延長だろうか。

    最後に、この本は軍事史ではない、自分には戦争も軍隊訓練の経験はない、訓練を受けたギボンとも違う、と最後まで断る筆者の真摯な姿勢は考えさせられる。

  • 古代世界において繁栄を極めたローマは、一方では、対外戦争や内乱を繰り返す戦闘姿勢の国家であり、兵士が皇帝位をも左右する軍事体制の国家であった。建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士たちの生涯にも光をあてて新たなローマ史を描き、その盛衰をユーラシア史のなかに位置づける。

    古代ローマが好きなので読みました。
    軍隊の変遷から見たローマ史なので、ちょっと視点が変わって興味深かったです。教科書で読む西ローマ帝国滅亡も軍隊から見ればこういうことだったのか~と。

  • 帝政後期のローマ軍と兵士のあり方、そしてローマ帝国軍の消滅(西ローマの方)について結構頁を割いている。職業軍人化と市民社会からの乖離が何を起こすのか。そしてシルクロード貿易と絡めるのは前著の成果か。

    https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2023/03/28/104905

  • 語り口は平易でスラスラ読めるが退屈。ハッとさせられるような新たな視点を提供する記述もなく、平凡。

  • 【請求記号:232 イ】

  • 軍というファクターからローマ帝国を読み解いていく。最初は戦争のたびに参集していた軍が常備軍となり、当時ではめずらしい定期給を貰う存在として経済の中心ともなる。
    さらには権威の象徴となり、皇帝への決定権を持つような存在ともなる。
    国とその指導者にとって、軍というのがどういう存在かということはローマ帝国だけに収まる話ではないだろう。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/787280

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著者プロフィール

早稲田大学文学学術院准教授
1973年 京都府生まれ
2001年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了
    京都大学博士(文学)
2012年 日本学術振興会特別研究員、筑波大学大学院人文社会科学研究科講師を経て現職
主な著訳書
『軍人皇帝時代の研究』(岩波書店)
アエリウス・スパルティアヌス他『ローマ皇帝群像2、3』(共訳、京都大学学術出版会)

「2014年 『ローマ皇帝群像4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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