文学が裁く戦争──東京裁判から現代へ (岩波新書 新赤版 1996)
- 岩波書店 (2023年11月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004319962
作品紹介・あらすじ
文学は戦争を抑止するために何ができるのか。連合国による戦争裁判が終結した後も、日本文学は、法が裁けなかった罪を問い直し、戦争の暴力に向き合い続けてきた。一九四〇年代後半から現在まで、時代の要請のもとに生み出されてきた、戦争裁判をテーマとした主要な作品と作家を取り上げて、新たな文学史を描く。
感想・レビュー・書評
-
日本において、戦争について書かれた文学(小説に限らない)を読み解いていく。解けているかはわからないが、とりあえず戦争に関連した文学作品が並べられる。
本書の紹介に「新たな文学史を描くことに挑む」とあり、それがどの程度成功を収めているか、微妙なところである。
ただ、ブックガイドとしてはいいのかもしれない。著者は韓国人ということもあってか、あまり現代日本で言及されることのない作品にも手を伸ばしている。日本人が日常的に使うことのないことわざや漢字を外国人が知っているような感じだろうか。
なにか一貫した解法があるわけでなく、作品紹介的な風味が強いが、だからといってそんなに悪いものではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/803346 -
有名な文学作品を日中戦争からベトナム戦争へさらに従軍慰安婦についてのものに分析したものである。
大部分は読まれていたと思うが、それほどメジャーではない従軍慰安婦の翻訳の本もある。
本ごとにまとめての分析があれば、その底本を読む人が増えるであろう。 -
910.264||Ki
-
太平洋戦争をリアルに体験していない多くの人は歴史書や時代小説などから情報を得るしかない。私も戦後生まれで、古くは学生時代の歴史の授業で戦争に興味をもち、大学生の頃にはなぜ戦争が起こり、そしてどの様にして集結させるのがベストな選択なのだろうと、今の私から見ても学生の自分には少し重たく感じる難題を抱えていたのを記憶している。偶々大学がお茶の水・神保町に近かった事もあり、古本屋で戦争に関する本を見つけては読み漁るような学生時代を過ごした。読めば読むほど複雑で、背景も深く理解していなかった私に、ちっとも答えは見つからなかったのであるが。
本書は太平洋戦争を文学から裁くというテーマで記載されているが、当の戦争には日本人が犯した罪深い出来事が多く、更にそれらをテーマとした文学作品は山の様に存在する。よって分析対象に事欠かない分野であるものの、それが逆にどの書籍を題材として選択しているかについても興味を唆る内容だ。
代表的な事件で言えば、戦争勝利者のアメリカが日本を裁く東京裁判やBC級戦犯に対する裁判、その背景にある捕虜虐待や南京事件における民間人殺害の罪、そして慰安婦問題と歴史の教科書に掲載される出来事だから大半の読者には事件の全容も原因も結果も理解した上で読む事ができる。
本書の興味深いところは、取り上げた文学作品が各出来事に対する代表作であり、描かれた時代が戦後間もないものから、平成に至るまで時代を超えて網羅している事がひとつ。そしてそれぞれの筆者がさまざまな立場に立って、伝えたかった真実を小説の主人公や設定に自由に記載されている点を鋭く観察し、我々読者に教えてくれる点である。勿論、対象文学を既に読んだ方であれば、自分が気づかなかった点と比較してみても良いし、反論するのも自由である。
小説の良いところは、筆者が考えを自由に記載できる事であり、時には非現実な設定(例えば昭和天皇が裁判に出席するなど)であっても可能な点である。歴史の事実の描写に重きを置くフィクション性が高ければ高いほど、筆者の想いよりは事実描写に力を入れざるを得ない。小説はその辺りを軽く乗り越え、筆者の意図を文字に練り上げていく。どちらかというと私は歴史書・ノンフィクションを客観的に傍観者的に見る立場が好きではあるが、本書を読む事で、偶には小説ライクな読み物に触れたくなってくる。そうしたきっかけにもなるのでお勧めしたい一冊だ。 -
【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569715 -
東2法経図・6F開架:B1/4-3/1996/K