生活環境主義でいこう!―琵琶湖に恋した知事 (岩波ジュニア新書 594)

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  • / ISBN・EAN: 9784005005949

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  • 滋賀県の嘉田由紀子知事が,自身が関わってきた滋賀の環境に対する取り組みを生活環境主義という切り口で語ったもの。 「生活環境主義」という考え方がとてもピンと来た。生活環境主義は,人々の生活の中で関わるものという考え方で環境をとらえ,環境の保全を日常生活や文化,地域社会の形成によって解決していこうという考え方。環境を遠い客体としてとらえるのではなくて,より近い生活の一部,密接にかかわるものとしてとらえる。その点で生活環境主義は鬼頭秀一氏の社会的リンク論と近いと思う。

    環境問題を保護や技術によって解決しようとする考え方とは異なり,生活環境主義は人間の生活を生態系の中にうまく組み込むことにつながって行くものだと思う。

    そして嘉田さんが研究者として人間としてすごい人だということがわかった。あこがれる。

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  • 机上の環境論ではなく、生活主義!
    いいですね○

  • 嘉田由紀子さんは政治家である前に、
    「生活環境学」と自ら名付けた学問の研究者である。
    学者といっても象牙の塔に収まっておる人ではない。
    人々がそれぞれ営む暮らしというフィールドに出て、
    地域と共にその環境について考えるという。
    実践的な政策理論を目指すものであるのだという。

    環境を考える際にも登山のように様々な登り口がある。
    政治家や官僚が好む管理型の「近代技術主義」とか、
    学者が好きな、保護型の「自然環境保全主義」とかがある。
    そして地元の生活環境からアプローチしようというのが、
    嘉田由紀子さん達の「生活環境学」の考えなのだろう。
    人が周囲の自然と調和した暮らしを、
    実践できるようにすることで、
    争うことも競うこともなく正義を振り回さずにユックリと、
    お互いの違いを確認しながら、
    納得を創りあげていくことを目指しているのだろう。

    文化相対主義が意識の在り方によって戦争や人殺しを、
    認めることになってしまうことに対して、
    個別性を大事にするのだけれど、
    個人ではなく個々の村が持つ生活システムを、
    重要視することだという。
    「人の考えはわからないけれど人々の考えは分かる」という。
    これは個々と総意の違いを言っているのでしょうか?

    この点が私には理解できないけれども、
    個々の意識状態と視野の広さが問題なのだと思う。

    時空間における相対関係を理解できる状態から、
    文化の相対性の議論をスタートする必用があるということだろう。

    「なつかしい未来」という言葉もここから生まれているようだ。
    すべての生きものが共に生きる仕組み、
    人と人の関係・自然への畏敬の念・を、
    取り戻して現代に活かすことだという。
    それは川で洗濯することを短絡的に捉えて環境を汚すとみるのではなく、
    一歩引いて循環があることまでを見定めて判断することでもある。
    税金を国が集め国から地方に補助金として分配するという権利システムでは、
    政策の選択における目的が補助金目当てとなってしまう。
    したがって行政の高コスト体質が当たり前となって染みこんでしまう。

    行政の仕事は税金で賄う。
    高負担高サービスか低負担低サービスかのどちらを選ぶかのところを、
    ニホンの政治は自由資本主義という政策の中で、
    中負担高サービスを借金で埋め合わせていくという、
    見かけ重視でとどの詰まり国民を欺いてきた。

    これは官僚という事務方が義務を権利にすり替えて、
    あたかも税金の再分配を与えるがごとくに装い、
    国民を洗脳してきたことに原因があるだろうと私は思う。

    事務内容を分かりやすくシンプルにして無駄な経費を削減していけば、
    低負担高サービスも可能になる。
    但しこれを実現するには事務方の意識共々国民の参加意識がモノを言う。
    お互いに依存意識ではなくお互いの対等で自在な関係を創造する、
    共生意識が膨らまなければならない。

    住民が主体的に自分たちの暮らしを納得尽くで創造していく。
    その過程には喜びもあれば負担となる労働や失敗による苦労がある。
    何があろうと現実を受け止めて、
    前に向かって進んでいく地域力がなければならない。
    行政は個々の住民が動きやすいように集いの場を用意して、
    情報をつなぎ具体的な処理をすることが仕事となる。

    この場合地域組織と国組織のように、
    より大きな組織はより小さい組織の、
    縁の下を支える仕事を目指すことが大事な要素となる。
    それには皆が自分の心を見定め自分の視野を広げることを目指して、
    冒険して発見することを楽しめる環境でなければならない。

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    [ 参考となる書評 ]

  • 環境か開発かの二者択一ではない考え方。感銘を受けた。琵琶湖に暮らして見たくなった。

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著者プロフィール

参議院議員、元滋賀県知事、日本環境社会学会元会長、農学博士
1950年、埼玉県生まれ。1970年代初頭京都大学探検部員としてアフリカで水と環境の価値を発見。ウイスコンシン大学大学院・京都大学大学院修了。1970年代から琵琶湖周辺農村での水利用調査などを行い、1982年より琵琶湖研究所研究員として鳥越晧之たちと生活環境主義を提唱。1980年代中頃より琵琶湖博物館の企画・建設提案し1996年開館に結びつける。2000年より京都精華大学教授を経て、2006年公共事業の見直し・子育ての充実を訴え滋賀県知事に。「流域治水条例」を全国で初めて制定。2014年勇退後はびわ湖成蹊スポーツ大学学長。2019年より参議院議員。
編著書に『水と人の環境史』(1984年、鳥越晧之・嘉田編)、『生活世界の環境学』(1995年)、『水辺遊びの生態学』(遊磨正秀と共著、2000年)、『水辺ぐらしの環境学』(2001年)、『環境社会学』(2002年)、『生活環境主義でいこう!──琵琶湖に恋した知事』(古谷桂信と共著、2008年)、『知事は何ができるのか』(2012年)、『滋賀県発! 持続可能社会への挑戦』(内藤正明・嘉田編、2018年)、『命をつなぐ政治を求めて』(2019年)、『流域治水がひらく川と人の関係』(嘉田編、2021年)など多数。

「2022年 『水と生きる地域の力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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