〈刑務所〉で盲導犬を育てる (岩波ジュニア新書 797)

  • 岩波書店 (2015年2月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784005007974

みんなの感想まとめ

盲導犬育成プログラムを通じて、人と犬、受刑者と社会との関わりを描いた感動的なノンフィクションです。島根あさひ社会復帰促進センターで行われるこのプログラムでは、受刑者たちが子犬を育てることで、自己の過去...

感想・レビュー・書評

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  • 島根あさひ社会復帰促進センターという社会復帰を特に重視した刑務所において行われた盲導犬育成プログラムを取材したノンフィクション新書。

    日本盲導犬協会を筆頭に、全国視覚障害者情報提供施設協会、法務省矯正局、刑務官、地域住民など多くの人々や組織の理解と協力のもとパピープログラムは行われた。

    まだ幼く小さい子犬たちを、平日は訓練生(受刑者)たちが、休日はウィークエンドパピーウォーカーという民間の有志のボランティアが、約1年間がかりで育てていく。
    そこでは、多くの楽しいこと、苦悩、ぶつかり合いが当然起こってくる。

    盲導犬を育てるという体験を通して、変化していく訓練生たちの姿を読み、想像すると、胸が熱くなる思いになった。

    このパピープログラムは、プログラムに参加した訓練生たちが自らの犯した罪と向き合い、生まれ変わってもう一回生き直すための道しるべとなったことに違いない。

    それぞれの人々の想いが、「盲導犬を育てる」という共通の目的で交差し、塀を超えて、人と人、心と心が繋がっていく過程には、人間の本来的な美しさと強さがみなぎっているように感じた。

    人と動物、人と人が出会い関わり合う中で生まれてくるドラマには、魂を揺さぶられる想いがした。

    更生保護、障害、動物愛護、人間の生き方など、多くを考えさせられる素晴らしい一冊です。

  • 島根県にある刑務所"島根あさひ社会復帰促進センター"は、一般の刑務所とは異なり、受刑者の出所後の社会復帰に力を入れるため、教育プログラムと職業訓練プログラムが充実している。
    そのプログラムの1つが、"盲導犬パピー育成プログラム"。盲導犬候補として生まれた子犬たちを、受刑者(訓練生と呼ばれる)たちに託して育ててもらうというものだ。
    この本は、2009年4月から始まったこのプログラムの1期生の訓練生たちの変化や成長、3匹のパピーたちとの絆を描いたものである。


    一般家庭が引き受けるパピーウォーカーの存在は知っていたが、"刑務所で盲導犬を育てる"ということが興味深かった。読む前にちょっと疑問に感じた、「刑務所で子犬が育ったら、車に乗ったり公共交通機関に乗ったり、普通の社会生活が体験できたりしないんじゃ?」ということも、週末だけ子犬たちを一般家庭が預かる"ウィークエンド・パピーウォーカー"というシステムでカバーできるそうだ。
    子犬たちが訓練生たちやウィークエンド・パピーウォーカーの二重の親たちの愛情を一身に受けて育つこと、訓練生たちも子犬からの愛情を感じてこれまでの生き方や姿勢から少しずつ変わっていくこと。"子犬が刑務所で育つ"ということが、子犬にとっても訓練生にとってもウィークエンド・パピーウォーカーにとっても、誰にとってもプラスの側面が見られて良かった。

  • 犬が人を育てる
    犬が人の善を引き出していく
    犬が人を導いていく

    刑務所
    盲導犬
    生き直し
    これほど極上の三題噺はないでしょう
    と 思われるのですが
    見事な「事実」に引き込まれていきました

    この「パピー・プログラム」は
    アメリカが発祥の地であるらしい
    のですが
    これを提唱し
    これを実践して行かれた
    原初の風景が
    この一冊にも垣間見られるような
    気がします

  • 「あなたにとって尊敬の対象は何ですか?」と聞かれたら、まちがいなく「盲導犬」と答えるだろう。特に、不服従の行動には感動以上。尊敬。(うちの犬は違った意味の不服従)

    そんな私が泣くのを覚悟で読んでみた、ノンフィクション。
    涙の理由はわからない。
    当たり前だが犬目線で描かれていないのに、パピーの愛らしさが手にとるようにわかる文体。目頭が熱くなった。

    パピーウォーカーどうこうよりも、刑務所の中のルールや、再犯率についての章が興味深かった。思った以上に高くて、戸惑った。
    再犯してしまうのは、出所後の生活が保障されていないこと。いきなりシャバに放り出される人たちが多いことに驚いた。本人の人生にマイナスにしか働かないし、また刑務所に行ったら国民の税金が使われる。

    そんなこんなでとうとうパピーとのお別れ修了式。この章は泣きっぱなしだった。
    結局盲導犬になれなかった、3匹のパピーたち。幸せになってほしいと、心の底から願う。
    そう思うと、現在盲導犬として働いている犬はエリートなんだろうなあ。
    そして現役の盲導犬たちも、引退した盲導犬も幸せな日々を送っていますように。

    しかし、終始、それもこれもあくまで人間のため、というひっかかりを拭いきれないまま読み終えた。盲導犬の制度は、人間のために犬に使役させているわけなので、私は両手をあげていいことだとは思えない。しかし、日本では犬という動物は人間に完全に支配、コントロールされているので仕方がない。

    まずは、目の前のうちの愛犬を可愛がることからはじめるとする。

  • 東2法経図・6F開架 369.27A/O88k//K

  • PFIで、このような取り組みがもっとなされたら良いのに。

  • 大塚さんの保温、動物のもつ可能性を感じさせてくれる。

  • 島根県にある「島根あさひ社会復帰促進センター」は日本で4番目のPFI刑務所です。PFI刑務所とは民間の資金とノウハウを活用して施設の建設や、維持管理、運営などを行う刑務所のこと。「刑罰の執行」以外の部分を民間が担当しており、教育プログラムや職業訓練プログラムも民間が企画立案し、実施しています。

    そんな刑務所が取り入れたのが、「盲導犬候補の子犬(パピー)を育てる」という教育プログラム。欧米の刑務所ではすでに30年以上のあるプログラムですが、日本では初めての試み。本書はその初年度の様子を中心にまとめています。

    動物、しかも「人の役に立つため」という明確な役目を帯びた動物を育てるということが受刑者たちにどのような影響を与えたのかが、とても丁寧に描かれています。また、受刑者が自分の罪を反省して再び社会で暮らし、二度と刑務所に戻ってこないようにするために何が必要なのか、刑務所は何を「教育」すべきなのかということに対しても一つの答えを提示している作品だと感じました。岩波ジュニア新書なのでとても読みやすかったです。

    このパピープログラム以外にも地域の人と受刑者が文通をする取り組みを行っていたり、地域の人が受刑者に農業の職業訓練を行っていたりとこの「島根あさひ社会復帰促進センター」自体にもとても興味が湧きました。関連本を探してぜひ読みたい。

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著者プロフィール

大塚敦子
1960年和歌山市生まれ。上智大学文学部英文学学科卒業。パレスチナ民衆蜂起、湾岸戦争などの国際紛争を取材を経て、死と向きあう人々の生き方、自然や動物との絆を活かして、罪を犯した人や紛争後の社会を再生する試みなどについて執筆。
『さよなら エルマおばあさん』(小学館)で、2001年講談社出版文化賞絵本賞、小学館児童出版文化賞受賞。『〈刑務所〉で盲導犬を育てる』(岩波ジュニア新書)、『はたらく地雷探知犬』(講談社青い鳥文庫)、『ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発』(講談社)、『いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ』(小学館)など著書多数。
ホームページ:www.atsukophoto.com


「2020年 『シリアで猫を救う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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