出口なお――女性教祖と救済思想 (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006002961

作品紹介・あらすじ

大本教の開祖、出口なお(一八三七‐一九一八)は生活苦と家族の不幸が重なるなか、五十代にして初めて神がかり状態になり、自動書記による「お筆先」という文章を大量に残した。すべての人に改心をもとめる、そのラディカルな千年王国的終末思想はどこから生まれたのか。民衆思想史家が宗教者の内面に迫る評伝の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • めちゃくちゃ面白かった。
    安丸の民衆に対するリスペクトに満ち溢れている。
    なおの根底にあるのはやはり通俗道徳。
    なおの苦難に満ちた半生は、ぱっとみただけだと「よくありそうな昔の人の苦労話」。
    でも昔の人の「幸福追求のかたち」というのは、努力して苦難に耐える→家の繁栄→それがみずからの幸せにつながる
    という図式だったと改めて説明されると、今の私たちと全く違う生き方なんだとしみじみ驚く。

    なおの苦難と、「良神なのにその正しさが厳しすぎて零落してしまった」という艮の金神の神格がリンクしているというのは大変面白い。
    なおは通俗道徳に則って懸命に生きてきたのに報われず、その宗教は厳しい終末観をもつ激烈な思想になったというのは、とても筋が通っていて納得できる。
    また金光教という既成の宗教を足がかりに発展していたというのは、「宗教の始まり方」を知る上でも興味深い。

    最後の安丸の名文
    「無学文盲で、なんの取り柄もない老婆だったなおは、みずからのすさまじい苦難にたちむかってそれに耐えぬく強靭さだけをアルキメデスの支点にして、近代化してゆく日本社会をその全体性において告発し抜いたのであった。
    生活事実としての苦難が存在すること、そこから個性的な意味をくみあげることとは、まったくべつのことがらである。後者の道には、苦難を生き抜きそれを逆手にとる、強靭に鍛え抜かれた自己がなければならない。なおは、日本の民衆が歴史のなかで育ててきた資質を、あるつきつめたかたちでうけつぎ、そこに拠点をすえて、みずからのはげしい苦難からかぎりないほどゆたかな意味をくみとり、私たちの世界のもっとも根源的な不正と残虐性に立ち向かったのであった。こうしてなおは、みずからの生の貧しさを、かえって、根源的なゆたかさにつくりかえたのである。
    その意味で、なおは、もっともよく戦った人生の戦士だった」

    すごい。恐ろしく名文や。

  • 大本教の開祖である、出口なおの生涯について書かれた本。

    無学文盲で貧困の極みになった老女に、ある日神様が降りてきて宗教がはじまる。宗教の始まって行く様子がとても興味深かった。

    文章が極めて読みにくくて苦戦しましたが、金光教の事なんかも知れてそれなりに楽しめました。

  • 「出口なお」という新興宗教のお婆さんの生涯を、日本の近代化の歴史と照らしながら解説したノンフィクション。
    昔のアカデミックな文体がとても読みづらく、後半はほとんど頭に入って来なかった。

    前半の、なおの壮絶な人生…慎ましい生き方から発狂に至るまでの流れや、神がかりしてからのパワフルさは読んでて、とても気持ちよかったので是非ネットフリックス制作で映像化されて欲しいと思った。(主演は田中裕子で)

    後半、信者が増えていってからは段々と宗教内部の政治的な話になっていったので全然頭に入って来なかった。

    日本の近代化を考える上で勉強になった。

  • お筆先の言葉遣いが独特で力強い。「・・・ぞよ」
    理性では捉えきれない部分を扱う。力強い部分、始原的な部分でもある。
    熾烈な苦労を乗り越えるために宗教的憑きものが生まれる場合がある。数々の発狂の描写も生々しい。それほどの引き裂かれるような葛藤があったのだ。

    組織宗教になる前までの記述なので、今がどうなのか。また、大本の大弾圧とはどのように繋がっていくのか。

  • あらためて大本教について学習できた。
    高橋和巳の邪宗門で、小説として知っていただけでしたが・・・・。
    民衆宗教学という分野を知ることも初めてで、むしろ新興宗教として、どこかしら胡散臭いものとしてしか受け入れていなかった気がする。
    このように純粋な学問として、民衆の歴史として、大衆の言葉としてあらためて認識すること大事なことなのでしょう。
    ここでも、どこにスポットを当てて、紐解いていくかという基本があるようだ。

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著者プロフィール

一橋大学名誉教授・故人

「2019年 『民衆宗教論 宗教的主体化とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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