- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006003777
作品紹介・あらすじ
かつて、朝鮮半島の南に浮かぶ島・済州島で、一三〇余りの村が焼かれ、およそ三万人の島民が犠牲となる凄惨な事件が起きた。本書は長年タブーとして封印されてきたその実相を解明し、事件の歴史的背景、真相糾明に向けた困難な闘い、そして歴史と真実を恢復し島共同体が再生していく過程を描く。事件七〇周年を期して増補のうえ文庫化。
感想・レビュー・書評
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『済州島四・三事件――「島[タムナ]のくに」の死と再生の物語』2018←2008
著者:文 京洙
【版元】
価格:本体1,300円+税
通し番号:学術377
刊行日:2018/02/16
ISBN:9784006003777
版型:A6 並製 カバー 304ページ
かつて朝鮮半島の南の島・済州島で,130余りの村が焼かれ3万人近い島民が犠牲となる凄惨な事件が起きた.本書は長年タブーとして封印されてきたその実相を解明し,事件の歴史的背景,真相糾明に向けた困難な闘い,そして歴史と真実を恢復し島共同体が再生するまでを描く.事件70周年を期して文庫化.
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b345701.html
【目次】
はじめに [iii-v]
目次 [vii-xi]
地図 [xii-xiii]
第I章 済州島とはどんな島か――神話時代から植民地期まで 001
第一節 皐民[こうみん](海の民)の時代
火山島――三多の島/ 耽羅[タムナ]の国/海の帝王・張保皐
第二節 海の時代から陸の時代へ
モンゴルの遺産/流刑の島/抵抗の伝統
第三節 植民地時代の済州島
植民地化/君が代丸/マルチ・エスニシティ都市・大阪/海女[ヘニョ]たちの反乱――済州島の抗日運動/日本の社会運動と済州島人/「決七号作戦」
第II章 四・三事件への道のり 043
第一節 信託統治の挫折
ソ連の参戦/信託統治/分断に向かって/人民委員会と米軍政/左右合作と一〇月人民抗争
第二節 済州島の人民委員会
解放直後の済州島/済州島建準の組織化/人民委員会への移行/開かれた人民委員会/わが道を行く人民委員会
第三節 三・一節事件
済州島の左派勢力/南労党済州島委員会/三・一節の発砲事件とゼネスト/米軍政の対応/西北青年会/引き裂かれる済州島社会
第III章 四・三事件の経緯と殺戮 087
第一節 武装蜂起
追い詰められた南労党/新村[シンチョン]会議――蜂起の決断/決起の日/武装蜂起の性格
第二節 阻止された単独選挙
国防警備隊/四・二八和平交渉/単独選挙/鎮圧に乗り出した警備隊
第三節 分断国家の下で
建国/海州会議/本格的討伐戦への準備と米臨時軍事顧問団/麗順[ヨスン](麗水[ヨス]・順天[スンチョン])事件/軍服を着た西青,そして戒厳令/焦土化作戦の背景――米軍撤退問題
第四節 焦土化作戦
朝天面での殺戮/パッソンネの虐殺/若者の消えた村,兎山里[トサンリ]/代殺――逃避者家族の虐殺/失われた村/水葬――知識層の虐殺/武装隊による殺戮/ 北村里[プクチョンリ]の悲劇――最大の虐殺事件/最終討伐戦,そして金時鐘/戦時下の虐殺/最後の武装隊
第IV章 その後の済州島――沈黙の壁を越えて 143
第一節 沈黙と停滞
クェンダン共同体/レッド・コンプレックス/ポリッコゲ/四・一九学生革命
第二節 変わる済州島社会
漢江の奇跡/飢餓からの脱出/蜜柑と在日/観光開発
第三節 蘇る済州島
六月抗争/スヌルム,固有の文化の再発見/立ち上がる海女たち/済州道開発特別法
第四節 四・三特別法への道
闇を穿つ作家たち――玄基榮と金石範/四・三運動の胎動/受難と和解/特別法制定に向かって/『済州四・三事件真相調査報告書』
終章 記憶をめぐる対話に向けて 193
第一節 残された課題
四・三特別法の改定/遺骸発掘/四・三事件と在日/阪神教育闘争と四・三事件/日本の四・三運動
第二節 記憶をめぐる戦争
韓国の過去清算/記憶をめぐる内戦/四・三事件の「歴史定立」
おわりに 217
白碑に何を刻むか――現代文庫版あとがきにかえて 221
図版出典一覧
参考文献
済州四・三事件真相糾明および犠牲者名誉回復に関する特別法
済州島四・三事件関連年表 -
東2法経図・6F開架 B1/8-1/377/K
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学部時代の恩師に頂いた本。
恩師が四・三事件の数少ない研究者であるということを知りながらも、この事件についてあまり深く知ろうとしてこなかったのだが、この度、四・三事件70周年を迎えて済州島に旅行する気になったので初めて真面目に読んでみた。
不良で出来の悪い弟子である。
私はこの事件について、大韓民国成立後に強い反共イデオロギーを帯びた政府が済州島の一部の左派(とその家族)を弾圧した・・・といったレレベルのものだと認識していた。
しかし、同書を読むとそんなレベルのものではなかったようだ。
分断を固定化する単選単政に反対する勢力の蜂起を契機に、島民の老人や赤子までを皆殺しにするような弾圧が各地でお行われ、壊滅した町があるほどだという。
当時、GHQやその傀儡であった韓国政府に対する反発は済州島のみならず、本土にも存在した。
そんな中、虐殺といえるような四・三事件で実際に手を下したとされる西北青年会は、北朝鮮の社会主義革命を嫌って南に渡ってきた青年たちだったという。
誰もが分断という体制に翻弄されたのだ。
四・三事件は過去のものであって、いまだ過去のものではない。
この四・三事件の「性格」についてはっきりと認定されていないからだ。
政府による一方的な弾圧とは言い切れず、民衆側が武装団を作ってそれなりに激しく抵抗したこと、背後に北朝鮮がいたかもしれないこと・・・そうしたことを理由に、老人や女性、赤子までが無差別に惨殺されたこの事件は、いまだ正しい呼び名を持たない。あまりに激しかった弾圧ゆえに、被害者らが長く口を閉ざしたまま死んでいったこともその原因だという。
私はこの事件について多くを知らない。
今回、済州島に旅行にいって関連する場所を訪ねて肌で感じてきたいと思う。