- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006021559
作品紹介・あらすじ
六〇年前に執筆された著者初の長篇小説である本書は、アジア太平洋戦争の日々を主題にしている。戦争に非協力を貫く医学生を主人公に、登場人物それぞれにとっての戦争末期から敗戦までの日々を瑞々しく描き出す。銃後における人間性の抑圧、恋愛と孤独、一九四五年八月の解放の意味が深く問い直される。
感想・レビュー・書評
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初版は1950年、月曜書房から刊行。著者にとって初めての長篇小説。「あとがき」には、雑誌『人間』編集長・木村徳三と月曜書房の永田宣夫に対する謝辞が掲げられている。加藤自身は、1945年8月15日の「青空と輝く白い雲」を見つめたときに感じた「複雑な気もち」を物語のかたちで表そうとした、「この小説を、戦争に傷ついた若い日本国民のすべてに捧げたいと思う」と書いている。
全体的な印象として、うん、いい気なものだ、という印象は拭えない。もちろん、激しい爆撃の中、防空壕で自分に思いを寄せる女性を抱き寄せているときに思わず「運命」的な恋愛を錯覚してしまう様子や、8月15日の天皇の放送を、それまで「戦争の終わり」を希求するという一点でつながっていた人々がバラバラになっていくきっかけと捉えている点は重要。しかし、3月の東京大空襲を描かず、空襲を描いても無残な火傷や焼死体について記述せず、食糧を求める疎開者に対する冷たい眼差しについて書かず、どうして米軍は軽井沢に空襲を行わないのかと問うこともない人物たちのありようは、なんだかおとぎ話めいていて、戦争を当事者として生きているようには感じられない。この手応えのなさというか、具体性の感じられないところがとても気に掛かる。評価が難しい作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[ 内容 ]
六〇年前に執筆された著者初の長篇小説である本書は、アジア太平洋戦争の日々を主題にしている。
戦争に非協力を貫く医学生を主人公に、登場人物それぞれにとっての戦争末期から敗戦までの日々を瑞々しく描き出す。
銃後における人間性の抑圧、恋愛と孤独、一九四五年八月の解放の意味が深く問い直される。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
「ある晴れた日に戦争は来り、ある晴れた日に戦争は去った。」
あの時代を20代で生きるということは、どのようなことだったのだろうか。いつ、命の灯火が潰えさるかわからないような日々にあって、信濃追分の夏の空は、雲棚引く浅間は、加藤周一の目にどのように映ったのだろうか・・。 -
「太郎は雲を見た。自分はここに生きていると思い、未来に向かってひらかれていると感じ身体の中にかつて知らなかった希望と力とが溢れるのを意識した。」1945.8の解放の意味を考えよう。
【配架場所】 図書館1F 913.6/KAT