- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006022174
作品紹介・あらすじ
ノーベル賞作家莫言の代表作で、五つの連作中篇からなる長篇小説『赤い高粱』の後半三篇を収録。日中戦争下の中国山東省高密県東北郷。日本軍を奇襲した祖父らだったが、その報復により村は壊滅する-。共産党軍、国民党軍、傀儡軍、秘密結社がからむ生と死、性と愛、血と土、暴力と欲望の凄烈な物語。
感想・レビュー・書評
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反日帝の物語ではない。頻繁に時系列を移動し、対象の人物も移動する。比喩を現実のものと描写し、過剰な脚色を含んだ死ぬときの描写、死体の描写は生々しかった。敵としての鬼子、傀儡はもとより、江小脚、黒眼、令麻子もまた、数十年のスパンの中で味方と敵両者の性格を持つ。
赤い高粱は現地の純血な人間を表していると思った。まっすぐに生え、切られ、黒土に根ざし、生活にあり、身近にあり、ときに水に浸かり、最後には海南島との雑種と比較される。雑種はおそらく敵の中国人との混血をさしているのではないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時間が行き来するのが慣れるまではちょっと大変。あと、私が父や祖父の来し方を語る構成やからしゃあないねんけど、「父」と語られてるのが少年とか「叔母」が幼児とかがボーッと読んでると違和感感じたりして難しかったり。
とは言え、そこを乗り越えてしまえば十分読ませる。莫言が「酒国」から入ってるんでもうちょっとマジックリアリズム感欲しいかな。どうしても基準が「百年の孤独」になっちゃうから酷なんだけど。 -
赤い高粱の海で謳歌された、瑞々しい温もりを伴う生や愛の営み。 そして流された沢山の血。凄惨な死。 慟哭を抱えてなお立ち上がり、生きて命を繋ぐ姿は強く素晴らしいが、凄絶な痛ましさもある。 多くのマジックリアリズム小説がそうであるように、語られる物語は未来からの視点〈わたし〉が綴っている。 〈わたし〉のいる未来では、「生きる」ということをすべて見てきた赤い高粱はもはや残っていない。代わりに生えている雑種の紛い物は、生に実感を持てなくなったわたしたちを指しているように思う。またとない傑作だった。
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完全に、前作と纏めて一つの作品でした。”続”っていうタイトルだと、それぞれ独立した物語に思えてしまうのにな、ってふと思った次第です。上下巻とかの方が分かりやすいのに。それはさておきこの内容。個人的には、後半にあたるこちらの方が楽しめました。犬との戦いに関してえらい熱く語られているなって思っているうち、どんどんその展開に引き込まれたり、ただの葬儀行列の描写かと思いきや、そこから思い切り凄惨なバトルに突入したり。突拍子もなく飛び回る物語が、大元ではこの一族にまつわるエトセトラとして纏められていて、次第に明かされてくる家族内でのいざこざも興味深い。これはやっぱり、全5章を含めて味わい尽くすべき作品でした。
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やっと読みおわた。比喩が多いなぁ、という印象。
読み終わったあと、なんともいえぬ気持ちに。
二奶々の話は特に。文字だからなぁ。映像なら見ていられない。イタチのような日本鬼子のふるまいを。
どの勢力にも属さない祖父の生き方を語り手はどう考えたのだろう。 -
自分とは異なる血の歴史。その世界観。イマジネーションの世界は全くパラレルで、それこそ莫言ワールド。
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この際一気に一章から読み始め、やっと終わった。
下品で、どろどろした表現、差別的で、想像を覆いたくなるような日本鬼子の中国人虐殺など・・・・。
さすがに・・・、日本ではなかなか受け入れられないだろうなぁ。
しかし作法は斬新で、過去、未来、現在が入り乱れて、その登場人物に一貫性もあって、まるで映画でも観るような感じ。
ただ、さすがに疲れる。
早く読み終えたい衝動にもかられる。
とはいえ、きれいごとばかりで済まされる昨今の日本の小説からすれば、しっかり受け止めなければならないのでしょう