風にそよぐ葦(下) (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
4.00
  • (4)
  • (0)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 32
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006022648

作品紹介・あらすじ

戦局が敗色濃くなるにつれ、軍部と政府の弾圧は苛烈さを増し、「新評論」は、いよいよ四面楚歌に追い込まれる。日米開戦前夜から戦後の日本国憲法施行に至るまでを時代背景に、出版社社長の葦沢悠平とその家族の苦難を描いた社会小説の大作。下巻では、戦争末期から戦後まで、時世の激しい振幅にひたすら翻弄される人々の姿を追う。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2019年3月3日、読み始め。
    2019年3月15日、読了。

  • 今、この政局、この世論、こんなご時世だからこそ、読むべき本を努めて探しているような感覚の昨今…利便性だけで、ほぼ全てをAmazon頼りなのもどうかと思い、本屋で徘徊して手に取ったのが、本著…不勉強な私は、石川達三氏の著作どころか、その名前さえ知らなかったという体たらくだったのだが…果たして、、、読了した今、この小説と出会ったことに(まぁ、そのタイミング的なことに限って言えば、幾分、その日会う人との会話の足しにと、かなり浮ついた気分的な事もあったのだがw)、とても満足している…というか、自分たちのオピニオンは、すべからく自由で、限界など無いと思えるインターネット社会に生きている我ら現代人こそ、かつての、ほんの70年程度前にあった、言語統制や思想弾圧のもたらす不幸が、決して過去のものでは無く、すぐそこにある危機だと再認識させられる、小説の形を借りた警告文だとも思える。
    そして、特に引き込まれた理由は、主人公(といっても、〝主〟といえる登場人物は、何人も居るのだが)の一人、中央公論新社の社長をモデルにしたという、葦沢悠平や、息子泰介の妻榕子達が、その時局時々で見せる、当時の〝大日本帝国国民〟の全ての人々が抱えていたであろう、脆さ弱さ狡さ、はたまた混沌の中で辛うじて保つ底力を、淡々と必要以上にドラマチックしない描き方だとも思う。
    この本を読み終わった今、次に手にとっているのは、おおよそ自分には似つかわしく無い(笑)『思想をつむぐ人たち…鶴見俊輔コレクション1』…こんな、世の中だらこそ、思想とか哲学とかを軽んじないようにしたい気分だ…まぁ、ほんとうに影響を受けやすいヤツだと自嘲しながらも、適当にポリティカルの事や、宗教的、哲学的な事を、ぶん投げて、面白おかしく生きて行くなんてどだい無理な自分を、かなり好きだったりするのも、否めないのだが…(苦笑)

  • 社会の空気。その時代を彩る流れ。どうしてこんなおかしなことが起きているのに、その悪い流れは止まることなく、悪政への支持は落ちることなく、ますます悪い方向へと流れていくのか。そのような感覚が、今の日本の空気感と地続きなもので、読んでいてある種の恐ろしさのようなものを感じた。軍部がふんぞり返る社会で、どのような立ち位置をとるのか。権力への追随、転向、そして破局。市井の人々に求める犠牲。悲劇と怒りと諦め。その描写が読んでいて胸が苦しくなるくらいリアリティがあった。そして敗戦からの混乱期。道徳観の逆転。そこに翻弄される人々。社会派の小説でありながら、ここまでストーリー展開が面白いとは想像を超えていた。

  • 戦前、戦中、戦後の市井をきっちり描いた素晴らしい本だと思う。読書を通して、今の北朝鮮はこんな景色かなぁとか、戦後の日本の価値観の崩壊が、今の日本とがオーバラップして見えたり、いろいろ考えさせられた。みんな読んで欲しいなぁ

  • 読み進めていくのが辛い。
    これだけ冷静に書けるということもすごい。
    まさに怒りをたたきつけるように登場人物に語らせている。ようやく上下巻を読み終えた。

全6件中 1 - 6件を表示

石川達三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×