- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006032609
作品紹介・あらすじ
能は六百年前にすでに人気を競う「市場」にさらされ、世阿弥は競争に勝つ戦術書として『風姿花伝』をはじめとする伝書を書いた。「初心忘るべからず」に代表されるその言葉は、能役者が試練を乗り超えるためのものだが、現代人の心にも深く響く。イノベーターだった世阿弥の能のを創造する手法は、ビジネスや人生の局面を打開するヒントに満ちている。
感想・レビュー・書評
-
世阿弥の残した言葉の紹介・解説をしながら、能の初心者向けガイドになっている。能の名手のエピソードも入っていて、能をもう少し知りたくなった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ジャパネット創業者の高田さんの生き方である「世阿弥」。
能の大成者とも言われる世阿弥の言葉は、人生、ビジネスの中で役に立つものが多かった。
■初心忘るべからず
初めの気持ちを忘れるなという意味で使われていることが多いが、世阿弥は「いまだ経験したことのない事態に対して、自分の未熟さを知りながら、新しい事態に挑戦していく心の構えであり、姿」だと言っている。
人生の試練の時に、どうやって乗り越えたかを忘れるなということ。
つまり初心とは試練や失敗のこと。
■時節感当
タイミングをつかむ能力。
タイミングとは「諸人」の心の動きを読み取る能力であり、他人のタイミングが最も大事。
タイミングを逸したということは、偶然起きたことだといって、責任を逃れている。
■秘すれば花
隠していることが美しい、女性の美しさをたたえる時に使われるが、本来は違う。
表に出ている自分とは異なる自分の世界をもっていて、自分を磨いていることが肝心。
武器として、それ以上に人生の可能性を拡張していくために、秘すほどの花を見つけることが必要。
■軽々と機をもちて
相手のリズムに入り込んで、自分のリズムにする。
仕事でも同じく、相手のリズムがわからなければ話の進めようがなく、苛立たせるだけ。
■離見の見と目前心後
自分の姿を客観的に見る。
後ろ姿を見ていないと、その見えない後ろ姿に卑しさが出ていることに気がつかない。
後ろを見てくれるのは他の人であり、自分自身が忠告を素直に受け入れることができるだけの人間でないといけない。
■住する所なきを、まず花と知るべし
そこにとどまりつづけることなくという意味。
自分自身をいつもコピーしつづけるのは安心であるが、そこには停滞があり、衰退が待ち受けている。
■稽古は強かれ、情識は無かれ
日常の生活で山より大きな猪は出ないと思っていいが、リーダーは時として山より大きな猪が出ることがあると考えなくてはならない(危機管理)
ビジネスも舞台と同じで何が起きても対応し、あらゆるリスクへの対応能力がなければビジネスリーダーにはなれない。
■初心と申すのはこのころのことなり(青年期)24.25歳
時代の名人を相手にしても、新人の珍しさから勝つこともある。
それを本当に勝ったと思うと進歩をやめる。
先輩や名人をたずねて、よくよく教えをこわないといけない。
「時分の花」を「まことの花」と思ってしまう心が、本当の花へといたる道を閉ざす。
「されば、時分の花をまことの花と知る人が、真実の花になお遠ざかる心なり。ただ、人ごとに、この時分の花に迷いて、やがて花の失するをも知らず。初心と申すはこのころの事なり」
⇨若いがゆえの人気はその時だけですぐに消えてしまう。
初心だと思い、周りの意見を聞いて、まことの花にしていかなければいけない。 -
世阿弥の言葉◆人生のシステム◆世阿弥の創造性
著者:土屋恵一郎(1946-) -
■書名
書名:世阿弥の言葉――心の糧、創造の糧
著者:土屋 恵一郎
■概要
能は六百年前にすでに人気を競う「市場」にさらされ、世阿弥は競
争に勝つ戦術書として『風姿花伝』をはじめとする伝書を書いた。
「初心忘るべからず」に代表されるその言葉は、能役者が試練を乗
り超えるためのものだが、現代人の心にも深く響く。イノベーター
だった世阿弥の能のを創造する手法は、ビジネスや人生の局面を打
開するヒントに満ちている。
(From amazon)
■気になった点
・一時の敗北は、次に来る勝ちへ通るべきもの。
・悩み事があったらまず、よく寝る。
・困ったことがあったら一週間放っておく。
・慢心は努力を怠り、謙虚さを失う。
・更なる完成を目指さない老人は、自己満足の塊となる。 -
とてもわかりやすい書き方で、能についてもよく理解できた。
「橋がかり」が「端」であることや、「名所教え」のパノラマと興味が尽きない。
作者の今の言葉で書かれているので楽しく読めた。