- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006032876
作品紹介・あらすじ
「生きている人間のからだは、皮膚という袋の中に液体的なものが入っていて、そのなかに骨も筋肉も内臓も脳も浮かんでいる」という故野口三千三(一九一四‐九八)の独特の身体哲学をもとに生みだされた野口体操。従来の体操観を大きく覆し、演劇・音楽・美術・教育など多方面に影響を与え続けるその体操理論と実践の画期的入門書。野口体操が発明されるまでのメーキングストーリー、身体観と体操の動きの意味、それぞれの体操の実践方法などを多数の写真を用いてわかりやすく解説。
感想・レビュー・書評
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野口三千三氏の直弟子として20年間助手を務め、現在「野口体操の会」主宰、「野口三千三授業記録の会」代表である羽鳥操が、野口氏の評伝、野口体操の考え方、野口体操の具体的なエクササイズを、多数の写真も用いてわかりやすく解説したもの。2003年に出版されたものの改訂版である。
野口氏は、太平洋戦争前に故郷の群馬県で小学校、師範学校の教師を務めた後、昭和19年に体育界のエリートが集まる東京体育専門学校に移り、昭和24年以降は東京芸術大学で体操教師を務めた。その間、終戦までは時節柄厳しい体育教師であったが、終戦後は、からだを使う様々な活動を生業とする人々との交流を通して所謂「野口体操」を生み出していったのである。野口氏が関わったものは、舞踏、サーカス、プロレス、ヨガ、美容体操、ボディービルなど極めて幅広い。
そうして生み出された野口体操では、からだの構造を「生きている人間のからだは、皮膚という伸び縮み自由な大小無数の穴が開いている袋のなかに液体的なものがいっぱい入っていて、そのなかに骨も筋肉も内蔵も脳も浮かんでいる」(野口語録)という従来と正反対のイメージで捉え、体操のコンセプトは、動くことを主眼に置いて、動きの中で筋肉を鍛え、動きの中でからだをほぐし、動きの中で筋肉を伸ばすというものである。
そして、野口体操は、美術や音楽という身体的表現技術を伴う人びとに、できるだけ楽で滑らかなからだの使い方を教えると同時に、最近では、米国流の筋力トレーニングのアンチテーゼとして、柔らかいからだを作るための身体訓練として注目される存在となっているのだという。
野口氏の身体論・野口体操の全体観を掴むことができる。
(2015年9月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示