記者、ラストベルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂

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  • 朝日新聞出版 (2018年10月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784022515759

作品紹介・あらすじ

【社会科学/政治】トランプ大統領を誕生させた強力な支持地帯、ラストベルト。選挙中から足を運んで取材を重ねてきた記者が、こんどは実際に現地に暮らし始めた。失業、貧困、ドラッグ……住民たちのトランプへの期待と失望、後悔。トランプ王国熱狂の後の1年半を追う。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

社会の底辺で暮らす人々のリアルな声を描いた本書は、トランプ大統領を支持したラストベルトの住人たちの期待と失望を追いかけます。製鉄業が栄えた地域での住み込み取材を通じ、貧困や失業、ドラッグ問題など、彼ら...

感想・レビュー・書評

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  • ニュースで「ラストベルト」と聞くことが多くなったけど、
    お恥ずかしながら私、この本を読むまで
    Last Belt (最後のベルト)だと思い込んでたら…
    Rust Belt=錆びついた工業地帯(アメリカ中西部の工業地帯)だったのね…(恥)

    朝日新聞の記者・金成隆一さんが実際にRust Beltと呼ばれる地域の一つオハイオ州トランブル郡にアパートを借りて住み、トランプ就任後の変化についてリポートをするというルポ。

    この本を読むまでは私も「トランプに一票を投じた人はどんな人たちなんだろう?」「やっぱり熱狂的な白人主義が多いのかな?」なんてふわっと思っていたのだけど、そんなに単純な話でもなかった。

    ラストベルトでトランプに一票を入れた人たちは
    熱狂的な白人主義というわけでもなく
    真面目に働き、それでも日々の生活に困り
    経済的な変革を求めている市井の人たちだった。

    鉄鋼業が斜陽になった工業地帯の悩みの一つは
    働き場がないこと
    トランプが大統領就任後に偉大なアメリカの鉄鋼業を復活させると約束した。
    しかし、今もって復活はしていない。
    変革を期待し、希望を持って一票を投じた人たちは失望しかないという

    大学を卒業しても就職先がない
    仕事があってもファストフード店で時給は低く、
    給料は自分たちの両親や祖父母たちの時代の半分ほどしかない。(物価は上がっているのに給料は上がらない)
    酒や薬が安易に手に入る
    そしてそれらで心身を崩し早死にする…
    それが悪しきループとなってしまっている
    このループを断ち切りたいと投じたのがトランプへの一票だったと多くの人は言う

    しかし、トランプの大統領就任後、何も変わらない
    むしろ医療費負担が増え(オバマケアの廃止、メディケアプログラムの削減、医療費破産の増加)、貧困率が高くなり、貧富の差がますます大きくなっている。

    この現実を実際の人々の言葉で聞くとリアルなアメリカの姿が見えてくる。

    「国際情勢のことは俺らにはわからないけど、自分の経済状況はわかる」という言葉が深い。

    トランプ大統領が空調の大手会社のメキシコ工場移転を思いとどまらせた話があったけど、それは一時的なことにしかならない。

    世の中のオートメーション化は進む
    そして石炭の需要も減ってくる
    だからこそ、次世代の働き場が必要なのに
    その必要性を知っていながら目先の派手で分かりやすい改革に手を付ける。

    アメリカで起きている多くのことは日本でも同じことが起きている。経済にしても政治にしてもそう

    でも、暗い話ばかりではない
    トランプ大統領が就任後、女性の政治家進出活動が増えた
    そして高校生たちを中心に「銃規制」運動への活動が活発になった。彼らはいう「もう子供じゃない!私たちには2年後には選挙権があるんだ!」
    この銃規制の話を読んで思わず涙してしまった。
    子供たちがスマホで遺書を書かないといけない日…
    こんな悲しい話はない

    もうすぐ大統領選。
    アメリカの人々はどんな決断を下すのだろう。
    そして、多くの人々が懸念する「わかりやすい成果を上げる派手なイベントのためだけに無益な戦争をしないで欲しい」

  • ●反トランプの集会や行進。学生ら若者の姿にトランプ支持者は激しく反発した「ろくに働いたこともない、お前ら大学生に何かわかる」
    ●大陸の真ん中に暮らす俺たちが本物のアメリカ人だ。エスタブリッシュメントは外国には旅行するくせに、ここには来ない。
    ●ラストベルトの労働者たちは、一般的に労働組合に属し、民主党を支持する傾向が強かったが、トランプは彼ら1部を自らを支持者に取り込むことに成功した。
    ●ミドルクラスから貧困への転落が怖い。
    ●トランプ支持者は20世紀の話が大好きだ。アメリカが世界で群を抜いて裕福だった時代を懐かしむ。
    ●マンハッタンとラストベルトの物価の違い。3割から5割価格差がある。
    ●白人至上主義団体の指示を拒まない。トランプ。2045年の人口は白人が過半数を割れる。
    ●大統領としてのトランプの危なさ。司法や報道機関への必要な攻撃を続け、それらへの信用に傷をつけようと努めている。
    ●「オバマは君は生まれで、本当はアメリカ大統領になる資格がない」とのデマを流す。

  • トランプ王国に続く続編。

    前作同様に、生活を送っている一般市民を取材し、人生の背景も押さえた上でのルポジャーナルである。

    製造業を中心とする社会で働く仕組みは、日本のそれとは完全に違う仕組みであるということに気づかされる。
    情報系やテック系、金融系の仕事が、アメリカの代表であるかのように思いがちだが、実際にものを作っているのは、このような生活をしている人たち、もう少し丁寧に言うと、メキシコなど異国でより安い次の版開いている人たちによって支えられている、と言うこともリマークスなければいけない。

    日本ももう貧しくなったとTwitterでよく見かけるけれども、アメリカだって、ひょっとすると、他の先進国もこういうような現実があるのかもしれない。
    トランプの支持者と言う切り口で書かれている記事だけれども、現代社会を切り取る本である。

  • 3ヶ月も住み込み取材できる朝日新聞の特派員羨ましい

  • 朝日新聞記者によるトランプのアメリカのルポ。トランプが大統領になった直後のアメリカの現場の声といった感じ。
    それにしてもアメリカの地方の実態は相当に悪く、記者も脅されているがアジア人なんかが近づこうものなら、すぐに犯罪に巻き込まれてしまうぐらい、薬物汚染にまみれ、仕事がない人が溢れている。
    しかし、こんな状況だからこそ、トランプを支持する理由は理解できるわけで、要は普通の政治家を選んでいては彼らの生活は変わらないだろうことが予想できるからだ。だからといって、トランプでいいのか、という話なんだけども、、、。
    トランプは結局金持ちで彼らと酒は飲まないし、彼らの生活を改善するための政策は打たないわけで、ただ不満のはけ口になるような言葉をろうしているだけなわけで、本当の意味で彼らのためにはならない。
    だからこそ、他の政治家が気概をみせるべきなんだけど、常識的に振る舞うと大して何もできずに終わるということなんだろう。
    1月6日の連邦議会襲撃事件を経てこのルポの時点よりアメリカの分断は進んでいてかなり手詰まり感が出てきていると思うし、2024年にトランプ再選になったらアメリカだけでなく、世界はどうなってしまうんだろうと思うほどに、絶望的な話ではある。

  • 記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂 単行本 – 2018/10/19

    自国優先主義の根っこにあるにはアメリカの地方の衰退
    2019年9月16日記述

    金成隆一(かなり・りゅういち)氏による著作。
    2018年10月30日第1刷発行

    1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
    (大学の恩師は久保文明氏)
    2000年朝日新聞社入社。
    大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、2014年9月からニューヨーク特派員。
    教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
    好物は黒ビールとタコス。
    他の著書に「ルポ トランプ王国➖もう一つのアメリカを行く」
    『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。

    著者のTwitterを確認すると現在、日本に帰国しているようだ。
    2014年9月~2019年3月までニューヨーク支局員として
    国連や米社会を取材。
    経済部員、経済産業省の担当をしている模様。

    金成氏の前回の著作であるルポ トランプ王国が面白かった為本書も読んでみた。
    紙面(新書)の都合上掲載しきれなかったこと。
    現地に滞在することでより深く取材できた事を記載している。
    新聞記者の書いたものはやはり読みやすい。
    本は書き手の力量次第で読みやすくも読みにくくもなるのだと改めて思った所だ。

    トランプ王国にはなかったトランプへの批判、
    白人至上主義者への取材などが入っている。
    よく野口悠紀雄氏の著作ではアメリカは新産業が生まれ経済は成長を続けていると解説される。
    ただそれは東海岸や西海岸などのアメリカの一部に過ぎない。
    結局アメリカ合衆国で新しい産業、高度サービス産業に従事しその恩恵を受けている層は極一部に限られていること。
    そして大半の人の収入は昔よりも減っているのだ。
    読んでいてバブル経済崩壊後の日本と同じかそれ以上の苦境だと思わざるを得なかった。
    (アメリカはインフレで物価が昔よりも高い)
    多くの低技能移民がいる為、その層と仕事の奪い合いも起こる。
    結果さらに所得が減っていく。
    悪循環に陥っている。
    有効な打開策が見つかっているとは言い難い。
    トランプ氏支持層の判断が急に変わるとも考えにくい。
    大統領選挙に限らず、選挙は現職有利だ。
    あれだけバッシングを受けたブッシュJrですら勝利したのだからトランプも当然再選されるだろう。
    もしどうしても民主党が政権を取り戻すのなら
    本書で示された問題をいかに解決するかを考えなくてはならない。

    印象に残った部分を紹介すると

    大陸の真ん中が真のアメリカだ。(中略)もはやオレたちはかつてのようなミドルクラス(中流階級)ではなくなり、貧困に転落する寸前だ。
    今回は、真ん中の勝利だ。

    他の先進国でも、米国内の他の人種や年齢層でも、医療の進化などで死亡率は落ちているのに、米国の白人の中年(45歳~54歳)だけは死亡率が高まっている、というのだ。
    死亡率の上昇の原因は、心臓病や糖尿病という典型的な疾病ではなく、自殺や薬物乱用に起因するものだった。

    アメリカの地方を取材していて、よく耳にする言葉が「ハンズオン」という言葉だ。
    「両手を動かしてする仕事」「手に職をつける」
    ぐらいの意味だが、共通の理解としては、わざわざ借金して大学を出なくても、少しずつ経験を積むことで素人にはできないことをできるようになり、食べていける仕事というニュアンスがある。
    具体的には、大工や調理師、配管工、溶接工、ヘアスタイリストなどで高学年になると在学中に職業訓練をするコースを選べる公立高校もある。

    アメリカが世界で郡を抜いて裕福な時代に海外援助で先頭に立つのは許容できた。
    でも目の前の道路すら整備できなくなった時代に、
    なぜ他国を支援し続けないといけないのか。
    しばらくはアメリカの地方の惨状を改善するため、「アメリカ第一主義」を前面に掲げたっていいんじゃないか。
    そんな主張だ。
    私の2年半に及ぶ取材を通じても、このエリアの高齢者の思いが凝縮されたような話だ。
    ここに「自国優先主義」の根っこがある。

    かつて常識だった時給20ドルほどの職場はなくなり、街全体から活気が失われ、前後して薬物の蔓延も始まった。
    薬物の過剰摂取で若者が搬送されるのは日常茶飯事だ。

    オレたちの時代は、今の感覚でも時給20~25ドルは当たり前に稼いでいた。
    1つの工場に行くだろ?解雇されるかもしれないけど、
    そうなれば隣の工場に行くだけだ。
    翌日には隣の工場が雇ってくれる。
    それほど仕事があふれていて、勤労倫理が街全体に浸透していた時代だった。

    当時は高卒の18歳で働き始め、30年間働き、48歳で引退する人が多かった時代だよ。
    それが普通の時代だった。
    みんな「30年働き、去る(You got 30 years in,you can leave.)」
    と言っていた。
    私もそうしたわけだ。
    それで十分な貯蓄ができたし、社会保障も年金も十分にもらえるからね。
    とてもよい仕事がこの街にはたくさんあったが、
    今では全部なくなってしまったね。

    米国内で「オピオイド(Opioid)」と呼ばれる薬物の過剰摂取が社会問題となっている。
    オピオイドそのものは医療用鎮痛剤として
    使われてきたが、常習性が強く、依存症が広がった。
    さらにヘロインなどの過剰摂取に陥るケースも多い。

    薬物の過剰摂取とオピオイド関連の死者が米国で増え続けている。
    薬物の過剰摂取による死者のうち、6割以上にオピオイドが関係している。
    2016年にオピオイドが関連した死者(ヘロインを含む)は1999年比で5倍に増えた。
    1999年~2016年に全米で63万人以上が薬物の過剰摂取で死亡した
    2016年の死者は全米で6万3千人以上。
    毎日172人が死亡している計算だ。

    アメリカの地方を車で走っていると、どこも風景が似ている。
    同じ道を以前通ったような錯覚を覚える。
    フランチャイズのファーストフード店、コンビニ、ガソリンスタンド、モーテル、「1ドル均一ショップ」が並んでいることが理由だ。
    (個人的な感想だが、これは日本国内も殆ど似た感じだと思う)

    トランプが「おぞましいフロリダの銃撃の被害者とそのご家族に祈りと哀悼の意をささげます。生徒、先生、その他、誰であれ、アメリカの学校で危険を感じるべきではありません」とTwitterで
    発信したところ、生徒から「哀悼の意などいらない」
    「何人もの私の級友が死んだのた」
    「祈る代わりに何かやれ(Do something instead of sending prayers.)」
    「祈りは問題を解決しないが、銃規制は事件の発生を防ぐだろう」
    との反発が相次ぎ、それらが瞬く間に拡散した。
    特に「祈る代わりに何かやれ」とのメッセージは、おそらく多くの人が以前から感じていたのだろう、その後の集会でも盛んに掲げられるようになった。

    せっかく仕事を覚え、技術を身につけても、工場そのものがなくなってしまえば、どんな積み重ねも無意味だよ

    アメリカの製造業はいずれ海外に出て行く運命にある。
    そう思い知り、2度目の解雇の後は長距離トラックの運転手になった。
    勤務は過酷だった。
    シカゴ-カリフォルニア間の3500キロをレタスなど野菜を満載にした大型トラックで毎週往復した。
    1度自宅を出ると2ヶ月間は車内での暮らしが続く。
    自宅に戻れない。
    「ずっとトラックと自宅だけ。(孤独が)きつかった。子供の成長にも立ち会えない。クリスマス休暇も留守なので、妻が私のために食事をオハイオの自宅からシカゴまではるばる運転して届けてくれた」
    オハイオからシカゴまでは640キロあり、車で片道7時間かかる。
    家族との暮らしを犠牲にしても週給600ドルほどだった。
    年収に換算して3万ドル(330万円)。
    ジャーメインは、長距離トラックの仕事は自らあきらめた。
    すでに30歳代半ば、なかなか思うように仕事が見つからない。
    やっと知人が営む建設会社で雇ってもらえた。
    それが今の仕事で、そろそろ丸2年になる。

    ジャーマインは高卒後の20年間の年収を振り返った。
    製鉄工場とアルミニウム工場で働いていた時は年収5万ドル(550万円)あったが、トラック運転手で3万ドルに落ちた。
    「そして40歳目前の今、最低賃金で働いている。
     20歳代の頃より半分ぐらいにまで稼ぎが落ちている。今、工場の仕事を見つけても時給8~9ドルでのスタートだ。危険な重労働でもファーストフード店と変わらない。あんまりだろ?悲しいだろ?会社が稼いだ金はどこに消える?この地域で今も時給20ドルを払っているのはGMだけになった。GMには今も組合がある。とはいえ、まもなくそれも終わるだろう。GMが組合の排除に成功すれば、ほかの工場と同じ水準まで落ちる。なんで時給20ドルも払う?メキシコなら5ドルじゃないか となるわけだ。組合がなくなれば、車の製造ラインで働くのも、みんな非正規労働者になるだろう。オレが働いていた製鉄工場もアルミ工場も当初は組合がしっかりしていたが、組合が一層されたとたんに会社が買収された、社名が変わると聞かされ、労働者がクビになり、運良く残れても労働条件が下がった。周囲からも同じパターンの話ばかりが聞こえてきた。やっている仕事はほとんど変わらないのに」

  • トランプを支持する意味がわからない!!
    ... と、日々BBCを聞きながら悶々としていましたが、本書を読んで納得したと同時に、「もうひとつのアメリカ」に深く根をはる問題について考えさせられた。

    舞台はラストベルト(the Rust Belt)、かつて炭鉱や鉄鋼業で栄えたアパラチア山脈沿いの地域。やがてグローバル化の波をうけて産業が途上国に流出してしまい、地域経済は空洞化する。見捨てられ、アル中、ヤク中と自殺がはびこるこの地域で生きるトランプ支持者たちの物語だ。

    私はアメリカに約3年住んだ経験があって、アメリカの事はよく知っているものだと思っていた。でも考えてみれば、私はリベラルな州にしか住んだことがないし、留学中も大学という極めてリベラルな環境で生活してた。私の友人は当たり前のように大学を出ており、当たり前のようにリベラル。「高卒」や「労働者階級」の人と接したこともなかった。

    私はアメリカのごく一部分しか経験してないんだなと、改めて痛感した。だから、2016年の選挙結果予想が外れたのと同じように、「トランプを支持する人がいる」という現実をいかに処理すればいいのかがわからなかったのだ。

    トランプ支持者は、他人に対する「共感力」に欠けて、差別主義者で、社会問題に興味がない「勝ち組」の人たちだ!! と思っていたけど、「共感力」がなかったのはこの私かもしれない。トランプ支持者にもいろんな人がおり、ラストベルトで喘ぎながら生きる彼らのような「忘れられた人たち」が、選挙を大きく左右するんだなと思った。

    最後に、筆者である金成隆一氏のコミュニケーション能力・人間関係構築能力の高さと勇気には、とても感動させられました。

  • アサヒガーと毎度同じ批判しか出来ない人たちは、一回ぐらい誠実な取材を通じて書かれた作品を読んでみたがいいんじゃないかな。
    (確かに、最初からトランプ批判という視点が記者に内在化されているから、そこは偏見と言えば偏見なんだろうけど)

    今回の分析が面白いのは、従来の政治学があえて見落としてきた社会構造(白人ミドル層、取り残される「ラストベルト」、黒人・ヒスパニック系、大都市エリートへの反発)とうアメリカに縦横無尽に走る亀裂(断層)に求めた点は、EUのポピュリズム、ブレジットとも共通していて面白い。

  • オハイオ州トランブル郡ウォーレン。東海岸からアパラチア山脈を越えた先で、合衆国全体から見れば東側に感じるが、ここが「中西部」なのだと初めて知った。ことほどさようにアメリカのことはよく分からないが、このラストベルトと呼ばれる地域の普通の人々、具体的には、高校を卒業して「手を動かす仕事(Hands-on Job)」をし、時給を稼いで請求書をきちんと支払う(paying the bills)という形で自立することを誇りにする人々の生き様が生々しく伝わってきた。そして、昔は容易にできたそういう生活が次第に厳しくなり、貧困への転落を心配しながら不安の中に暮らしていることも。その意味で、中西部のアメリカ人の価値観と不安が少し理解できた。

  • これまで民主党に投票してきた白人の労働者が、ヒラリーのエスタブリッシュ性に反感を抱いたことと、悪くなっていく社会情勢に嫌気がさして、何かを変えるためにトランプに投票したのだということが、ラストベルトに住み込んで取材して浮き上がってくる。
    トランプになってから、不満が目覚ましく改善している訳ではないが、高関税を掛ける等の行動を評価していて、民主党支持に戻る人は思ったより少ないようだ。
    トランプのイメージ戦略が思ったよりうまく行っているようで、二期目を阻止する事は簡単ではなさそうだ。

  • 2019年9月19日読了

  • 前著の続編。大統領選後の動きを追う。前著とかぶる部分もあるが、白人民族主義や女性候補者の激増など新しいトピックも盛り込まれている。ミドルクラスの没落は悲惨につきる。

  • 2016年の大統領選でトランプを支持した人たちは、トランプ当選後、どのように感じているのだろうか。章を追うごとに、ベールに包まれていた地方のアメリカ人の暮らしぶりが明かされた。かつては製鉄業や製造業が栄え、ラストベルトと呼ばれた地帯のひとつであるオハイオ州。移民の増加、低賃金、解雇、蔓延する薬物中毒やアルコール依存症。このような環境を変えてくれると信じ、長年の民主党支持者が、共和党のトランプに流れたようだ。アメリカ人の積極的な政治への参加ぶりも知れたし、記者がオハイオ州のアパートを借り継続取材をしているので、データで見るアメリカよりもよっぽど身近に感じられた。日本では大きく報道されないアメリカ社会の小さな声が取り上げられている一冊だった。

    p161
    (前略)2045年には白人が全体に占める割合がついに5割を切り、ヒスパニックが24.6%、黒人が13.1%、アジア系が7.8%となる。さらに興味深いのは、世代別の見通しだ。マイノリティーのほうが若いため、若い世代の白人ほど過半数を割るのが早くなる。18歳未満の白人は2020年に、18~29歳は27年には、30~39歳は33年に過半数を割ると予測されている。つまり、高校生以下のアメリカ人は間もなく過半数が白人ではなくなるわけだ。

    p222
    何かに対して不満を覚えたり、怒ったり、希望を失ったり、悲しんだりするよりも、何か前向きなことにそれらのエネルギーを使いたい

    p307
    アメリカでクリスマスの時期にキリスト教徒以外に配慮して「ハッピー・ホリデー」という言い方が広まっている

  • 何故、トランプに熱狂的な支持者層がいるのか、何故、トランプはNAFTAを目の敵にするのか。大統領の行動原理の一端が垣間見られる一冊

  •  ラストベルトで出会ったトランプ支持者たちは、「素朴で、控え目な人が多い。自分の暮らしぶりなど誰も気にしちゃいない、自分の意見など誰も聞いちゃいない――。そんなあきらめのような思いを持っている人が多かった、と感じる」「トランプ氏本人は差別主義者かもしれないが、少なくとも私が取材している支持者たちは違う。人種差別主義者が、アジア人の記者と2年も3年も付き合い、自宅に泊めたり、交際相手を紹介したりしないのではないか、と思う」(339)。
     
     2017年10月から「ラストベルト」のアパートで3ヶ月間過ごした定点観測をふくむ、「トランプ時代」のアメリカのルポルタージュ。しばしばニュースで耳にする「分断」のリアルをまざまざと突きつけてくるいっぽうで、これは5年後10年後の日本社会の姿ではないか、という疑問が離れなかった。もはや21世紀の合州国は、「国民国家」の体をなしていない。にもかかわらず人々は「ナショナリズム」にすがり、自分たちを「国民」として見て欲しい、という思いばかりを募らせていく。新自由主義的体制下における国家機構と資本主義の結合体は、ナショナリズムを成立させる基盤それ自体を破壊しているにもかかわらず、「ナショナリズム」は亡霊のように死なず、回帰してくる。この現象を、いったいどう考えればよいのだろうか。

  • 現在のアメリカにおけるトランプ支持はおおよそ4割程度なんだろうなとの当方の直感はあながち的外れでないことを再確認。
    選挙システムの問題はさておき、この国ってやっぱり自己中心主義だなと再認識。そして一番は良くも悪くも強国とはこういうものでしょうが、民の追い詰められ方が凄惨。トランプ云々の話では最早無い、問題の所在は。
    自分のいる場所も相当格差が激しくなっているとは思うものの、彼の国とはやはり次元が違い過ぎる。
    なかなかに考えさせてくれて、ジャーナリズムここに在り、です。

  • 「ルポ トランプ王国」の朝日新聞記者の続編。トランプ氏を選んだ人々は選挙戦を、大統領としてのトランプ氏をどう評価しているのか、現地に住み込んで取材したもの。
    大統領としての振る舞いや、自身の生活に目に見える改善がない故に、失望感をあらわにする人もいるが、多くは期待感を維持しているという。
    今回も肉弾戦を辞さないような体当たり取材から、ラストベルトの人びとの生々しい苦境、トランプ氏を選ばざるを得なかった現実がよく理解できる。トランプ氏の再選は不明だし、遅くとも6年後には新たな大統領が選ばれるわけだが、今のアメリカにはトランプ的な人の躍進を生む土壌があり、その分断が益々深刻になっていることが恐ろしい。

  • 東2法経図・6F開架 KW/2018//K

  • 週刊ダイヤモンド20181124掲載

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著者プロフィール

金成 隆一(カナリ リュウイチ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞経済部記者。慶應義塾大学法学部卒。2000 年、朝日新聞社入社。社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員などを経て2014 年から2019 年3 月までニューヨーク特派員。2018 年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)、『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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