記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515759

作品紹介・あらすじ

【社会科学/政治】トランプ大統領を誕生させた強力な支持地帯、ラストベルト。選挙中から足を運んで取材を重ねてきた記者が、こんどは実際に現地に暮らし始めた。失業、貧困、ドラッグ……住民たちのトランプへの期待と失望、後悔。トランプ王国熱狂の後の1年半を追う。

感想・レビュー・書評

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  • ニュースで「ラストベルト」と聞くことが多くなったけど、
    お恥ずかしながら私、この本を読むまで
    Last Belt (最後のベルト)だと思い込んでたら…
    Rust Belt=錆びついた工業地帯(アメリカ中西部の工業地帯)だったのね…(恥)

    朝日新聞の記者・金成隆一さんが実際にRust Beltと呼ばれる地域の一つオハイオ州トランブル郡にアパートを借りて住み、トランプ就任後の変化についてリポートをするというルポ。

    この本を読むまでは私も「トランプに一票を投じた人はどんな人たちなんだろう?」「やっぱり熱狂的な白人主義が多いのかな?」なんてふわっと思っていたのだけど、そんなに単純な話でもなかった。

    ラストベルトでトランプに一票を入れた人たちは
    熱狂的な白人主義というわけでもなく
    真面目に働き、それでも日々の生活に困り
    経済的な変革を求めている市井の人たちだった。

    鉄鋼業が斜陽になった工業地帯の悩みの一つは
    働き場がないこと
    トランプが大統領就任後に偉大なアメリカの鉄鋼業を復活させると約束した。
    しかし、今もって復活はしていない。
    変革を期待し、希望を持って一票を投じた人たちは失望しかないという

    大学を卒業しても就職先がない
    仕事があってもファストフード店で時給は低く、
    給料は自分たちの両親や祖父母たちの時代の半分ほどしかない。(物価は上がっているのに給料は上がらない)
    酒や薬が安易に手に入る
    そしてそれらで心身を崩し早死にする…
    それが悪しきループとなってしまっている
    このループを断ち切りたいと投じたのがトランプへの一票だったと多くの人は言う

    しかし、トランプの大統領就任後、何も変わらない
    むしろ医療費負担が増え(オバマケアの廃止、メディケアプログラムの削減、医療費破産の増加)、貧困率が高くなり、貧富の差がますます大きくなっている。

    この現実を実際の人々の言葉で聞くとリアルなアメリカの姿が見えてくる。

    「国際情勢のことは俺らにはわからないけど、自分の経済状況はわかる」という言葉が深い。

    トランプ大統領が空調の大手会社のメキシコ工場移転を思いとどまらせた話があったけど、それは一時的なことにしかならない。

    世の中のオートメーション化は進む
    そして石炭の需要も減ってくる
    だからこそ、次世代の働き場が必要なのに
    その必要性を知っていながら目先の派手で分かりやすい改革に手を付ける。

    アメリカで起きている多くのことは日本でも同じことが起きている。経済にしても政治にしてもそう

    でも、暗い話ばかりではない
    トランプ大統領が就任後、女性の政治家進出活動が増えた
    そして高校生たちを中心に「銃規制」運動への活動が活発になった。彼らはいう「もう子供じゃない!私たちには2年後には選挙権があるんだ!」
    この銃規制の話を読んで思わず涙してしまった。
    子供たちがスマホで遺書を書かないといけない日…
    こんな悲しい話はない

    もうすぐ大統領選。
    アメリカの人々はどんな決断を下すのだろう。
    そして、多くの人々が懸念する「わかりやすい成果を上げる派手なイベントのためだけに無益な戦争をしないで欲しい」

  • トランプを支持する意味がわからない!!
    ... と、日々BBCを聞きながら悶々としていましたが、本書を読んで納得したと同時に、「もうひとつのアメリカ」に深く根をはる問題について考えさせられた。

    舞台はラストベルト(the Rust Belt)、かつて炭鉱や鉄鋼業で栄えたアパラチア山脈沿いの地域。やがてグローバル化の波をうけて産業が途上国に流出してしまい、地域経済は空洞化する。見捨てられ、アル中、ヤク中と自殺がはびこるこの地域で生きるトランプ支持者たちの物語だ。

    私はアメリカに約3年住んだ経験があって、アメリカの事はよく知っているものだと思っていた。でも考えてみれば、私はリベラルな州にしか住んだことがないし、留学中も大学という極めてリベラルな環境で生活してた。私の友人は当たり前のように大学を出ており、当たり前のようにリベラル。「高卒」や「労働者階級」の人と接したこともなかった。

    私はアメリカのごく一部分しか経験してないんだなと、改めて痛感した。だから、2016年の選挙結果予想が外れたのと同じように、「トランプを支持する人がいる」という現実をいかに処理すればいいのかがわからなかったのだ。

    トランプ支持者は、他人に対する「共感力」に欠けて、差別主義者で、社会問題に興味がない「勝ち組」の人たちだ!! と思っていたけど、「共感力」がなかったのはこの私かもしれない。トランプ支持者にもいろんな人がおり、ラストベルトで喘ぎながら生きる彼らのような「忘れられた人たち」が、選挙を大きく左右するんだなと思った。

    最後に、筆者である金成隆一氏のコミュニケーション能力・人間関係構築能力の高さと勇気には、とても感動させられました。

  • アサヒガーと毎度同じ批判しか出来ない人たちは、一回ぐらい誠実な取材を通じて書かれた作品を読んでみたがいいんじゃないかな。
    (確かに、最初からトランプ批判という視点が記者に内在化されているから、そこは偏見と言えば偏見なんだろうけど)

    今回の分析が面白いのは、従来の政治学があえて見落としてきた社会構造(白人ミドル層、取り残される「ラストベルト」、黒人・ヒスパニック系、大都市エリートへの反発)とうアメリカに縦横無尽に走る亀裂(断層)に求めた点は、EUのポピュリズム、ブレジットとも共通していて面白い。

  • オハイオ州トランブル郡ウォーレン。東海岸からアパラチア山脈を越えた先で、合衆国全体から見れば東側に感じるが、ここが「中西部」なのだと初めて知った。ことほどさようにアメリカのことはよく分からないが、このラストベルトと呼ばれる地域の普通の人々、具体的には、高校を卒業して「手を動かす仕事(Hands-on Job)」をし、時給を稼いで請求書をきちんと支払う(paying the bills)という形で自立することを誇りにする人々の生き様が生々しく伝わってきた。そして、昔は容易にできたそういう生活が次第に厳しくなり、貧困への転落を心配しながら不安の中に暮らしていることも。その意味で、中西部のアメリカ人の価値観と不安が少し理解できた。

  • これまで民主党に投票してきた白人の労働者が、ヒラリーのエスタブリッシュ性に反感を抱いたことと、悪くなっていく社会情勢に嫌気がさして、何かを変えるためにトランプに投票したのだということが、ラストベルトに住み込んで取材して浮き上がってくる。
    トランプになってから、不満が目覚ましく改善している訳ではないが、高関税を掛ける等の行動を評価していて、民主党支持に戻る人は思ったより少ないようだ。
    トランプのイメージ戦略が思ったよりうまく行っているようで、二期目を阻止する事は簡単ではなさそうだ。

  • 2019年9月19日読了

  • 前著の続編。大統領選後の動きを追う。前著とかぶる部分もあるが、白人民族主義や女性候補者の激増など新しいトピックも盛り込まれている。ミドルクラスの没落は悲惨につきる。

  • 2016年の大統領選でトランプを支持した人たちは、トランプ当選後、どのように感じているのだろうか。章を追うごとに、ベールに包まれていた地方のアメリカ人の暮らしぶりが明かされた。かつては製鉄業や製造業が栄え、ラストベルトと呼ばれた地帯のひとつであるオハイオ州。移民の増加、低賃金、解雇、蔓延する薬物中毒やアルコール依存症。このような環境を変えてくれると信じ、長年の民主党支持者が、共和党のトランプに流れたようだ。アメリカ人の積極的な政治への参加ぶりも知れたし、記者がオハイオ州のアパートを借り継続取材をしているので、データで見るアメリカよりもよっぽど身近に感じられた。日本では大きく報道されないアメリカ社会の小さな声が取り上げられている一冊だった。

    p161
    (前略)2045年には白人が全体に占める割合がついに5割を切り、ヒスパニックが24.6%、黒人が13.1%、アジア系が7.8%となる。さらに興味深いのは、世代別の見通しだ。マイノリティーのほうが若いため、若い世代の白人ほど過半数を割るのが早くなる。18歳未満の白人は2020年に、18~29歳は27年には、30~39歳は33年に過半数を割ると予測されている。つまり、高校生以下のアメリカ人は間もなく過半数が白人ではなくなるわけだ。

    p222
    何かに対して不満を覚えたり、怒ったり、希望を失ったり、悲しんだりするよりも、何か前向きなことにそれらのエネルギーを使いたい

    p307
    アメリカでクリスマスの時期にキリスト教徒以外に配慮して「ハッピー・ホリデー」という言い方が広まっている

  • 何故、トランプに熱狂的な支持者層がいるのか、何故、トランプはNAFTAを目の敵にするのか。大統領の行動原理の一端が垣間見られる一冊

  • 資料ID:21802879
    請求記号:312.53||K
    新聞記者による優れた現地取材。今のアメリカを知ろう。読みやすい。

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著者プロフィール

金成 隆一(カナリ リュウイチ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞経済部記者。慶應義塾大学法学部卒。2000 年、朝日新聞社入社。社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員などを経て2014 年から2019 年3 月までニューヨーク特派員。2018 年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)、『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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