- Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022517883
作品紹介・あらすじ
死後440年、蹴りに蹴り続けられた男、宇喜多直家。その実像を浮き彫りにする。『光秀の定理』『室町無頼』『信長の原理』――歴史小説界に革命を起こし続ける著者が描く、戦国史上最悪と呼ばれた梟雄の素顔。自分は何故、零落した武門に生まれたのか。どうして自分は、このような孤独な星のもとに生まれたのか……答えは出ない。豪商・阿部善定は、没落した宇喜多家の家族をまるごと引き取る決意をする。まだ幼い八郎の中に、稀有な非凡さを見い出したがゆえである。この子であれば、やがて宇喜多家を再興できるのではと期待を寄せた。一方、八郎は孤独な少年時代の中で、商いの重要性に早くから気付き、町や商人の暮らしに強く惹かれる。青年期に差し掛かる頃、年上の女性・紗代と深く関わり合うことで、自身の血に流れる宿命を再確認する――八郎は、やがて直家となる。予め定められた星の許に生まれ、本人が好む好まざるにかかわらず、常に極彩色に血塗られた修羅道を突き進むことになるだろう。歴史は、常に勝者の都合によって捏造され、喧伝される。敗者は、彼岸にて沈黙するのみである。少年は、運命から自由になりたかった。だが、幼少の頃から武門の再興を定められていた。織田と毛利を天秤(はかり)にかけ、夢と現(うつつ)の狭間をあがき続ける。宇喜多家の存続のためには、どんなことでもする。我が死でさえも、交渉の切り札に使う。世間でいう武士道など、直家にとってはどうでもいい。そんなものは、犬にでも呉れてやる。直家は宇喜多家を再興し、石山城(岡山城)を国内商業の拠点と定める。同時に、近隣の浦上や三村と激しくつばぜり合いをくり返し、彼らの背後にいる巨大勢力の毛利・織田の狭間で、神経を削りながら戦い続ける。直家の生来の臆病さを良く知る妻のお福。生涯の恩人となった阿部善定。旧縁である黒田満隆と官兵衛の親子。直家が武士に取り立てた商人・小西行長……様々な人との関わりから、直家は世の理(ことわり)に気付いていく。――人の縁で、世は永劫に回り続けていく。
感想・レビュー・書評
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雑誌のインタビューで著者自身が次のように語る。「斎藤道三・松永久秀と並んで悪名高き備前の戦国大名・宇喜多直家の生涯。悪人である宇喜多直家は、言われているほど非道でもなく、むしろとても現代的でモダンだ。いわゆる武将の枠をはみ出す異色の経歴。いち早く戦国の世において武士道的な非合理性より経済合理性を追求するその姿勢。かつて司馬遼太郎の『竜馬がゆく』が無名だった坂本龍馬の位置づけを変えたように、本作は日本史上の宇喜多直家の位置づけを転換させる大胆な解釈を施す」
歴史好きだけではなく、恋愛小説としての読みどころもある第一級のエンタメだと。『信長の原理』や『光秀の定理』で有名な垣根涼介氏。私はこの二作も読んだが、本作も面白くないわけがない!という一作。まだ上巻だが、期待を裏切らない。
触れ込み通り、主役の宇喜田直家に行為的、同情的なストーリー展開ゆえ、作者の意気込みがそのままネタバレっぽい気もするが、展開が織り込み済みなのは歴史小説ゆえのご愛嬌だろう。尚且つ、戦国時代ならではのスリリングなドラマ、何故か過度にエロティックな官能小説風味なシーンもあり〝エンタメ“を意識したサービス精神も感じる。下巻も楽しみに読めそうだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
木下昌輝さんの「宇喜多の捨て嫁」を読んで以来、気になっている宇喜多直家。
仕物(暗殺)を得意とし、特に娘を嫁がせてはその家を滅ぼすという、武士としてはダークなやり方にネガティブなイメージを持っていた宇喜多直家を木下さんは様々な視点で新たな印象に変えてくれた。
今回の垣根涼介さんの「涅槃」は450ページ超上下巻という大作。
上巻では不遇の少年時代から宇喜多家再興までを描く。
木下版ではサラッと描かれていた少年時代に130ページを割いている。落城した砥石城から落ち延び、豪商・阿部善定に庇護された数年間は直家の人間形成や考え方の基礎を作ることになる。
父・興家は全く頼りにならないばかりか善定の娘と懇ろになり二人の息子まで儲けた末、宇喜多家の再興を直家に託し自害。直家は武士になることに希望を持てず、むしろ善定のように商いをすることに興味を示す。
だが宿命には逆らえず武士として仕官することが決まり、慌てて武芸に励む。
不遇の少年時代を過ごしたが、様々な人々との出会いがあり人の慈悲を受けるありがたさを知る。
だからこそ直家は槍働きが苦手で、だが商いを起点とした政治が上手く、家臣や民をまとめるのが上手い。
次の青年期では紗代という運命の女性との日々が描かれる。結局は結ばれない彼女との性愛の日々を何故執拗に描くのかは疑問だが、別れた後も紗代が直家の心に居座っているために、逆に直家の正妻や娘たちに対する淡白さが理解出来るように仕向けてあるのだろう。
つまり直家にとっての女性は紗代であり、正妻は武士として断れぬ相手から持ち込まれた縁組で娶っただけで、間に生まれた娘たちにしても大した思い入れはない。さらに言えば家を継ぐべき嫡男を儲けるつもりもなく、弟・忠家の子どもを養子にしたいと考えている。
だからこそ、正妻の父・中山信正を仕物する時も正妻に対する後ろめたさは感じていない。正妻も直家に恨みを残しながら家を出ていく。
だが一方で中山信正や仇敵・島村盛実を滅ぼす原因は主君である浦上兄弟の短絡さにあり、直家が独断で行ったり己の利益だけのために行ったわけではないことも描かれている。
多分下巻でも様々な仕物が描かれると思うが、そこにもやむを得ない理由が付けられることになるのだろうか。
確か、垣根さんはこの作品を書く理由に宇喜多直家の再評価を挙げていたと思う。
一見、仕物という卑怯な手で成り上がった嫌なヤツというイメージの直家だが一方で家臣や民には随分と慕われていたらしい。つまりそれだけ家臣や民を大切にしたということだろう。
この相反する二つのイメージをどう折り合いをつけ新たな宇喜多直家像に結実させるのか。
上巻ではやっと宇喜多家再興を果たしたものの、周囲は大きな敵だらけで常に領地を脅かされている。この後、下巻ではどのようにこのピンチを乗り越えて行くのか、注目しながら読んでいきたい。
とは言え、まだ下巻は手元にないのだけれど楽しみに待ちたい。 -
宇喜多直家かあ、
さすが垣根涼介は目の付け所が良い。
西から毛利、東から織田の足音が聞こえてくる下巻へ。
作品紹介・あらすじ
死後440年、蹴りに蹴り続けられた男、宇喜多直家。その実像を浮き彫りにする。『光秀の定理』『室町無頼』『信長の原理』――歴史小説界に革命を起こし続ける著者が描く、戦国史上最悪と呼ばれた梟雄の素顔。自分は何故、零落した武門に生まれたのか。どうして自分は、このような孤独な星のもとに生まれたのか……答えは出ない。豪商・阿部善定は、没落した宇喜多家の家族をまるごと引き取る決意をする。まだ幼い八郎の中に、稀有な非凡さを見い出したがゆえである。この子であれば、やがて宇喜多家を再興できるのではと期待を寄せた。一方、八郎は孤独な少年時代の中で、商いの重要性に早くから気付き、町や商人の暮らしに強く惹かれる。青年期に差し掛かる頃、年上の女性・紗代と深く関わり合うことで、自身の血に流れる宿命を再確認する――八郎は、やがて直家となる。予め定められた星の許に生まれ、本人が好む好まざるにかかわらず、常に極彩色に血塗られた修羅道を突き進むことになるだろう。歴史は、常に勝者の都合によって捏造され、喧伝される。敗者は、彼岸にて沈黙するのみである。少年は、運命から自由になりたかった。だが、幼少の頃から武門の再興を定められていた。織田と毛利を天秤(はかり)にかけ、夢と現(うつつ)の狭間をあがき続ける。宇喜多家の存続のためには、どんなことでもする。我が死でさえも、交渉の切り札に使う。世間でいう武士道など、直家にとってはどうでもいい。そんなものは、犬にでも呉れてやる。直家は宇喜多家を再興し、石山城(岡山城)を国内商業の拠点と定める。同時に、近隣の浦上や三村と激しくつばぜり合いをくり返し、彼らの背後にいる巨大勢力の毛利・織田の狭間で、神経を削りながら戦い続ける。直家の生来の臆病さを良く知る妻のお福。生涯の恩人となった阿部善定。旧縁である黒田満隆と官兵衛の親子。直家が武士に取り立てた商人・小西行長……様々な人との関わりから、直家は世の理(ことわり)に気付いていく。――人の縁で、世は永劫に回り続けていく。 -
商人になりたいと思いながら、侍の道を歩んだ、宇喜多直家の生涯を描く。
「週刊朝日」連載の書籍化。
上下巻でボリューム満点だが、読み応えがある。
夜襲で落城し、子供のころから商家で町人としてそだった八郎。
侍の考えとは異なる、広い視野を持つ。
戦国の世では稀有な、彼の指針が新鮮。
決して天才肌ではないけれど、執拗なほどに粘り強く物事に当たれる。
腹黒く二心もつ人物と言われた、直家の真意が自然で、とてもさわやか。
人を心底信用することがなくなった直家だからこそ、家臣たちの信頼と宇喜多家の結束に心あたたまる。
主人公はもちろん、まわりも含め、人物が魅力的だった。
ひとつだけ、執拗な性描写は必要だったのか、とは思う。 -
完全に歴史小説の名手になったように思う。上巻だけで既にお腹いっぱい楽しませてもらっている。前半から中盤までは直家の人となりが醸成していく様を丁寧に筆致していて、後半は当主としての振る舞いを鮮やかに描写している。幼少期からの苦労した経験が活かされ、更に善定や紗代などの一角の人物との出会いを通して名君になっていったのがよくわかる。色事に多くのページを割いていたが、単純に事象を書いているわけではない。蒙古タンメン中本の辛さの向こう側が見えるのと同じような感覚を味わえて驚いた。情報と経済を極めて重視しており、そして事前の準備と最悪の状況も想定して行動している点、そして言葉に嘘がないという点は非常に魅力的に感じた。それにしても興家の親としても当主としてもダメっぷりが凄まじい。
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おそよー!
べらの五つ星…絶対に面白いやつだね!
感想がとても良かった!
ベラの感想に星8個☆おそよー!
べらの五つ星…絶対に面白いやつだね!
感想がとても良かった!
ベラの感想に星8個☆2022/02/20 -
おそよー♪
ありがとう、松子☆
☆8つとは驚きだぜ(^_^;)
こちらの作家さんは、今でこそ歴史小説ばかりだけどそれ以前の作品も面白くておス...おそよー♪
ありがとう、松子☆
☆8つとは驚きだぜ(^_^;)
こちらの作家さんは、今でこそ歴史小説ばかりだけどそれ以前の作品も面白くておススメ♫
2022/02/20
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以前読んだ木下昌輝さん作『宇喜多の捨て嫁』で興味を持った戦国乱世の梟雄である宇喜多直家が主人公の1冊。
垣根涼介さんの作品初読み。
直家の生い立ちから次第に勢力を拡大し、宇喜多家再興までたどり着いた上巻。500頁近くではあるが、人物の説明などが適宜施されるので、「この人だれだっけ?」と戻ることもなく、時系列で物語が展開していく。
武家の棟梁の嫡流でありながら、流浪の身で豪商 阿部善定のもとに身を寄せ、商人や町人としての視点を持ち成長していった直家が、周囲から期待された宇喜多家の再興に目覚めていく様が丁寧に描かれる。
木下さんの作品ではことの善悪を排して、残忍残虐、非道も生き残るための方策として、頁を捲るごとにハラハラした印象。
垣根さんの直家は幼少期の親との不安定な関係、それゆえ育まれた冷静な洞察力が面白い。
街で出会った元女郎の紗代との出会いや関わりが彼のそれ以降の歩みに大きな影響を与えたのは分かるのだが、冗長な官能シーンが何とも…。
下巻も同量の頁数だとすると、もう少しテンポよくてもいいのかな。 -
垣根涼介さんの「信長の原理」が大好きでこちらも読んでいます。
とつぜんびっくりするくらいの濡れ場があるので、じゃっかん人にオススメしにくいですが面白くなるだろうと思って読んでる。 -
宇喜多直家が宇喜多家を再興し、領地を広げていく。
それにしても、性の修行、長すぎた!笑
下巻に続く。 -
戦国物。いやはや面白い!