生を祝う

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.70
  • (54)
  • (85)
  • (81)
  • (13)
  • (6)
本棚登録 : 1314
感想 : 100
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022518033

作品紹介・あらすじ

「あなたは、この世界に生まれてきたいですか? この世界に生まれてきてくれますか?」子どもを産むためには、その子からの同意が必要となる世界を舞台にした衝撃作。『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞した著者による、芥川賞受賞第1作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 胎児の「生まれない権利」がテーマ。
    なんだそりゃ?

    違和感を持ちながら読み続けたが、最後までそれは解消されなかった。
    もう少し長くてもよかったかもしれない。
    アイデアが書き殴ってあるけど、言葉足らずで終わってしまった感がある。

    芥川賞受賞作家だけに期待しすぎたのかもしれない。


    西暦2075年の日本を舞台としたディストピア小説。
    母親がこどもを産むには、胎児の生まれたいという意思を確認しなければならない、という合意出産制度がある。

    妊娠9か月での胎児への意思確認。もしそこで胎児からを生まれることを「リジェクト」されたら、産むことを「キャンセル」しなくてはならないー、

    って…

    9ヶ月かけて育った健康な胎児を堕胎するなんて、母親の精神状態のダメージは計り知れない。精神を病んだり、中には自死を選択する人もいるだろう。
    そんな残酷なこと、いくら国家が認める正義だとしても、受け入れ難い。

    めっちゃ、気分悪いなぁ、と思った。

    仮に、胎児が生まれてくる世界と適合性が低くて生存難易度が高かったとしても、2075年なら、メタバースの世界で心地よく生きていくことが可能だよ、きっと。

    だから、安心して生まれればいいんだよ、と思った。

    • 土瓶さん
      たけさん、こんばんは~^^
       
      なんていうツッコミどころ満載の設定でしょうか。
      お母さんのお腹の中の世界しか知らない胎児に生まれたいか...
      たけさん、こんばんは~^^
       
      なんていうツッコミどころ満載の設定でしょうか。
      お母さんのお腹の中の世界しか知らない胎児に生まれたいかどうかの意思確認???
      どうやって外の世界を説明するの?
      確認された意思は本物なの?
      胎児の人権うんぬんの話なのかもしれませんが……。
       
      とある時代劇の話の中で、出産のことを「身、二つになる」と表されていて、なんとはなしに好きだった。
      2022/09/10
    • たけさん
      土瓶さん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。

      そうなんですよ。
      ツッコミどころ満載の設定。
      胎児にどうやって外の世界を説...
      土瓶さん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。

      そうなんですよ。
      ツッコミどころ満載の設定。
      胎児にどうやって外の世界を説明するのか、は作中に説明がありますが、欠陥がある方法のような気がしました。
      従って、確認した意思が本物かはあやしい、と僕は思いました。

      「身、二つになる」ですか。
      深い言葉のような気がします。
      2022/09/11
    • アールグレイさん
      たけさん(^.^/)))~~~
      土瓶さん(^_^)/*゙。:*
      こんにちは!

      身、二つになる・・・・いい言葉ですね。
      息子を産む時に知りた...
      たけさん(^.^/)))~~~
      土瓶さん(^_^)/*゙。:*
      こんにちは!

      身、二つになる・・・・いい言葉ですね。
      息子を産む時に知りたかった・・・・20年以上経ってしまいました!
      ( ̄0 ̄)∬:*~、~
      2022/09/11
  • 驚き、考え、納得したと、納得せざるを得ない…と言ったほうが良いのか。

    近未来、胎児の同意が得なければ出産できないという
    「合意出生制度」が法制化された。
    出生を拒んだ胎児を出産した場合は、「出生強制」の罪に問われる。

    衝撃的ではあるが、自身がその立場になったときどうするのか?
    それ以前にこどもが欲しいという段階ですべてクリアにならないのか?
    とかいろいろなことを思ってしまった。

  • 11月25日(木)京都精華大学オンライン公開講座「「あいうえお」から「芥川賞」まで——言語と文学の冒険の旅路」を開催。ゲストは李 琴峰氏(作家/日中翻訳家)|京都精華大学のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000011014.html

    朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:生を祝う
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=23139

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      胎児が出生選択 近未来からの問い [評] 後藤聡子(書評家)
      <書評>生を祝う:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokk...
      胎児が出生選択 近未来からの問い [評] 後藤聡子(書評家)
      <書評>生を祝う:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/636969?rct=s_books
      2022/01/24
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      李琴峰『生を祝う』 芥川賞受賞後第一作で問うたものとは | ananニュース – マガジンハウス
      https://ananweb.jp/ne...
      李琴峰『生を祝う』 芥川賞受賞後第一作で問うたものとは | ananニュース – マガジンハウス
      https://ananweb.jp/news/398379/
      2022/02/15
  • 『安楽死』の是非は考えたことがある。けれど生の始まり、生まれたいのか生まれたくないのかを自分で決めることを考えたことはなかった。命の誕生は祝福そのものと思い込んでいたから。
    『生まれない権利』『生の自己決定権』が保証される。『合意出生制度』を衝撃を持って読み考えさせられた。
    子どもを望むのは「家業を継いでほしい」「年取ったら面倒をみてほしい」「働き手を増やしたい」などはもちろんのこと「自分の血を受け継いでほしい」さえも全て自分勝手な願望だと考える近未来社会の話だ。
    改めて考えてしまった。自分はなぜ子どもを望んだのか。自分勝手な願望だったのか。
    彩華と佳織の二人の選択に複雑な思いが残る。賛成も批判も安易にできずにいる。

  • 胎児の合意がない出産を禁止する「合意出生制度」が法制化された、近未来の日本の話。
    子どもたちは「自ら選んで生まれてきた」事実が支えとなって、人生を受け入れることができる。
    親たちは、自分たちのエゴで産んだという罪悪感から解放され、子どもの出生を晴々しく祝福することが叶う。
    長らく続いてきた生の強制という重大な人権侵害は解消され、人類はついに生死に関する自己決定権を完全に手に入れた。万歳!

    という社会が舞台だが。
    とっくに成人してる自分でも、生と死を提示されて「さあ今この瞬間にどちらか選べ」なんて難しい。
    恐怖と戸惑いに支配されて、やけっぱちになりそう。
    自己決定権は確かに大事だ。個人の意思が尊重される世の中であるべきだ。
    けれどそんな重い判断は、少なくとも私の手には負えない。
    なにか大きなものに委ねている、という他力本願な気持ちでいるからこそ、今まで生き延びてこれた気もする。
    そもそも、生と死なんて天秤にかけ得る?
    チキンかビーフを選ぶのとはワケがちがうのに。
    なんて疑念を抱くのは、私が令和の日本に生きてるから。
    この物語の時代に生まれていたら、絶対的な正しさを感じていたと思う。
    倫理観なんてそんなもの。

    物語のなかでは、生まれることを拒否した子どもの母親たちが、悲しさや絶望や、言葉では表しきれない気持ちを慰め合うために密かに集い、だんだんと過激化していく。
    正しさに口を塞がれた人々の痛みが迫ってきて、読んでて辛かった。
    自分のエゴかもしれない。でも会いたかった。
    我が子の意思を尊重したい。でもこの気持ちのやり場はどこ?
    間違ってるけど、許されざることだけど、産みたかった。
    制度側から見れば、この女性たちは「身勝手」「親失格」「子どもを所有物だと思ってる」愚かな存在だ。
    当事者の心情との乖離がひどい。
    正しい制度の暴力性を感じる。

    この制度下だったら自分は生まれてなかったかも。
    そう思ったときにゾッとしたのは、今の生を肯定できてるからだろうか。
    意思によらず適当に流れ着く人生もあるけどどうだい、制度よ。
    それも私の場合でしかないけれど。

  • 9ヶ月の胎児に、出生の可否の意思を問うという合意出生制度、判断材料は生存難易度という数値のみ。天愛会の主唱する自然出生主義を否定することで合意出生制度の不条理を描いているように思えた。少し設定に無理やこじつけが感じられて、消化不良の読後感でした。

  • 胎児に出生の意志を聞くなんて、そんなことあり得ないじゃない、と一笑に付すような話である。登場人物たちだって、時代が変わるとこんな「常識」通用しなくなるかも、と思っている。そう、その通りだよ(笑)バカな法律をまことしやかに信じちゃってと思いつつ読者は読むのだが。最初は。


    読み進むにつれ、どの時代でもそんな「常識」が罷り通ってきたってことに気づくことで、現代を生きる自分たちも同じように多くのおかしな「常識」にがんじがらめになっているのだということに否応なく向き合わされる。
    その時代時代でコンセンサスを得た「常識」が、時代が変わり視点を変えると脆く、奇怪なものであることは、過去の歴史から知っているはずなのに、いざ自分のこととなると、なんと俯瞰で見ることができないことか。

    それを近未来の視点から現代を見ることで、現代の「常識」の滑稽さが炙り出される。
    近未来の登場人物たちが、過去である現代を突き放して語ることで、私たちもまた自分の時代をメタ認知する。近未来の「常識」に縛られている滑稽な人々を笑えなくなる。価値観がどんどん揺さぶられる。

    スカートを女性がはくこと、制服で学校に行くこと、ハイヒールなんてものがあること、受験なんてものがあること、満員電車で通勤していること…。あの時代の人たちって、なんでそんな大変な思いにしがみついてたんだろうね、放り投げればすむだけなのに、と後世の人々は私たちを笑うのだろうか、と。

    この手法、面白い!

    桐野夏生の後継者現れたかな。

  • 自由意志、人権、それは生きていく上で当たり前の事なのかもしれないけれど、生まれてくること自体を自分の意思で決定するのはこの世界ではできないことで。それを自分で選択していたのなら、私は「死にたい」とは思わず生きてこれたんだろうかと考えたりした。
    親はきっと産まれてくる子を「幸せ」にしてやる、と決めて産むんだろうと実感して、自分の親もそういう思いで産んでくれたんだろうと思えた。

    人生という名の無期懲役という言葉がすごく腑に落ちて、死ぬまで縛り続けられているのが人間だなと思った。

  •  思考実験としての設定というわけでしょうか。小賢しい編集者と、スキャンダラスな展開で読者をひきつけるお話の作り方に、全く納得がいかない作品でした。
     まあ、いろんな考え方があっていいのですが・・・・。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202207110000/

  • 30代の既婚者です。
    自分が子どもを欲しいのか未だにわからず、何か考え方の参考になるかと思ってこの小説を読み始めました。

    私自身は生まれないほうがよかったなと思っている人間です。街で遭遇する子どもたちをみると「こんな大変な世の中に生まれてしまって可哀相」と感じます。

    自分自身生きるのがつらいので、自分の子どもにはそんなつらい思いをさせたくないなら生まないほうがいいのではないかと思うときもあります。

    このお話を読んで、合意出生制度も、生むという選択も生まないという選択も、「生」を操作しようとする行為はすべて、結局は今、生きている人間のエゴでしかないのだと感じました。

    もし実際に合意出生制度なんてあったら、今の社会よりもさらに自己責任論を押し付けられる社会になるだろうな。
    生きることに弱音を吐いたら、「自分の意思で生まれてきたくせに…」と言われそう。

    生前の意思なんて生きている人間側の捉え方次第で、大事なのは生を受けた人間が少しでも生に対してポジティブになれるようどうするかってことなのかなと思いました。

全100件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1989年生まれ。中国語を第一言語としながら、15歳より日本語を学習。また、その頃から中国語で小説創作を試みる。2013年、台湾大学卒業後に来日。15年に早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程を修了。17年、「独舞」にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー(『独り舞』と改題し18年に刊行)。20年に刊行した『ポラリスが降り注ぐ夜』で第71回芸術選奨新人賞(文学部門)を受賞。21年、「彼岸花が咲く島」で第165回芥川賞を受賞。その他の作品に『五つ数えれば三日月が』『星月夜』『生を祝う』などがある。

李琴峰の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×