天下大乱

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 213
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022518644

作品紹介・あらすじ

「生々しく蘇った関ヶ原の戦い。これぞ本物。堂々たる名作誕生だ!」(ブックジャーナリスト・内田剛氏)。ついに徳川家康率いる東軍と毛利輝元を総大将とする西軍が関ヶ原で対峙する……。最新史料を駆使し、家康&輝元2人の視点で描く戦国歴史巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 秀吉の死から関ヶ原に至るまでを、「正史」を忠実にトレースしながら、その裏で交わされていただろう家康と本多昌信や、毛利輝元と安国寺恵瓊などの会話を通じてストーリーが進んでいく。
    「知っているお話」がなんでそうなったのかを、会話で追っていくので、つまんなくはないんだけど、途中かなりかったるい場面があったり、いやさすがにそういう話しにはならんだろうとツッコミたくなるシーンが積み重なっていき、だんだん読むのが億劫になってしまった。
    しかし、解説的な文章も多いため、戦国ものを読み始めたばかりの人には入門編としては、親切な内容と言えるのかもしれない。そもそもの物語自体は骨太だから、もちろん読み応えはあるのだけど。

  • 関ヶ原の戦いの全てが解る、決定版に間違い無しでした。家康は凡庸だったから天下人になれた、という考え方に深く共感してしまいました。輝元にも惹かれる所がありました。

  • 本の雑誌が選ぶ、2022年度時代小説第2位
    に挙がっていたため購入。
    天下分け目の決戦までの輝元、家康の総大将
    の心の動きや取り巻く知将たちとの交わりが、
    テンポ良く場面ごとに繰り広げられていて、
    何とも面白い。
    これを機に他の伊東作品もチェックしたいと思った。

  • 面白い。心理戦がいい。司馬遼太郎の関ヶ原も似たような感じですが。司馬遼太郎の方は長く感じて一回読んだらいい。こちらの方は何回読んでもいい

  • 関ヶ原に至るまでの駆け引きを、徳川家康と毛利輝元の視点で描いた作品。
    家康目線や石田三成目線の小説はあまた存在しますが、毛利輝元は珍しいですよね。一応西軍の総大将なのですが…。
    作中の「戦は戦う前に勝敗を決してなければならぬ」という家康の言葉が印象的でした。そして毛利家臣の吉川広家が本多正信ばりに頭がきれっきれなところも面白かったです。
    この本についてツイートしたら、伊東潤先生ご本人が引用ツイートしてくださって感激しました。

  • 「御予約受付中」(=近日発売)という様相で発見し、発注して入手した。そして早速に紐解いて愉しんだ。好かった!
    本作は「関ヶ原合戦」を背景にした時代モノの小説である。
    「関ヶ原合戦」ということになると、物凄く知られている戦いである他方、色々と小説家の想像の翼が羽ばたく余地も多々在るかもしれない出来事であると思う。旧いモノから近年のモノまで、合戦そのもの、合戦の前後のこと等を色々と取り込み、様々な人物を中心視点人物とする小説等の作品が在ったと思う。が、本作はそれらの何れとも「似ているようでいて、全然似ていない」という面白さが在る。
    本作は2人の主要視点人物が設定されている。そして2人の視点による物語の一部が交互に綴られ、そして事態が少しずつ展開している。
    2人の主要視点人物というのは、徳川家康と毛利輝元である。東西の各陣営が形成されて争ったとされる「関ヶ原合戦」だが、徳川家康は東の、毛利輝元は西の“総大将”である。東西各々の「最高指揮官」の目線で語られる戦いの物語ということになる。
    物語は、豊臣秀吉の病床に呼び寄せられた徳川家康というような場面から起こる。そういう場面の後には、太閤薨去の報に触れている毛利輝元という場面が続く。本作は、こういう様子で「東西交互」という感じに展開している訳だ。
    太閤薨去の後、色々な出来事が在って、徳川家康が「五大老と五奉行による統治」というような体制を蚕食し、加賀の前田家を屈服させ、会津の上杉家を討伐しようかという動きが続く中、「次はこちら?」と思案する毛利輝元が在る。そして「反徳川家康陣営形成の構想と挙兵」という話しに身を投じる、または巻き込まれる。更に様々な思惑で動く、色々な人達が在る。
    本作は東西各々の「最高指揮官」の目線で、進行中の出来事や回想も含めた作中の時代や、様々な思惑で動く、色々な人達の様子が分厚く語られている。
    「関ヶ原合戦」に纏わる物語は多々在るのだが、本作のように「毛利輝元」に大きな光を当てた小説等は、過去例が思い浮かばない。或いはそこが「新しい!」かもしれない。
    本作の徳川家康は、長く苦楽を共にした、または台頭した少し若い世代の家臣達に支えられ、相談しながら次々に断を下すと同時に、当時として最大の知行地を有する最有力大名として求心力を持つ人物と描かれていると思う。
    この徳川家康に対する毛利輝元である。過ぎる程に偉大な祖父の後継者であるが、中国地方の領国は「諸勢力の連合体」という様相で、その“神輿”というような存在感で、一族、一門という近しい人達の間でも何かと軋轢が在る中で色々と考えている。そして毛利輝元が代表ということになる西の陣営は、様々な思惑が行き違い勝ちになる。そういう様子が或いは劇的だ。
    少し「ネタばれ」に近くなってしまうかもしれないが、本作では「毛利輝元の目線で語られる豊臣秀頼」という劇中人物が少し面白い存在になっている。また、両陣営が夥しい軍勢を動員した他方で「1日の決戦」というような様相にもなった合戦だが、その「何故?」に答えるような内容も本作には含まれていると思う。
    古くから多く取上げられている題材である「関ヶ原合戦」だが、「それでも新しい」という本作であると思う。本作は“変化球”のようなモノを駆使するのでもなく、力の籠った“直球”で真正面から挑むような空気感が在る。
    非常に愉しかったので、広く御薦めしたい。

  • 面白かったです!話が進んでいく中、毛利輝元と、徳川家康の二人の視線から描かれた物語。どちらかと言うと毛利輝元側の視点の方が面白かったです。関ヶ原の戦いが始まる前が主に書かれていたけど、お互いに色々な仕掛けや作戦などを考えていて、やはり関ヶ原の戦いは他の戦いと違ってスケールが大きいんだと実感しました。【小5】

  • 関ヶ原の戦いを西軍の総大将毛利輝元から描いた作品。

  • 関ヶ原の戦い前後を、家康目線、毛利目線で交互に語られる。後半はスピード感が増して一気に読んだ。信長は、家来を牛馬の如く扱い、挙句に家臣に反乱されて命を失った。秀吉は甘言を言う家来しか好まなかった。というような文が心に残る。家康には葉に絹着せぬやり取りをする家来があり、最後は家康が決断したようだ。また読み返す時は、正信、広家に注目して読みたい。

  •  豊臣秀吉が亡くなってから関ヶ原の戦いまでを、徳川家康と毛利輝元の視点を中心に描いた時代小説。
     秀吉死後、名うての大名たちがひしめく群雄割拠の危ういバランスのなかで、やるかやられるかの空気が刻々と醸成されていく様子がリアルに書かれており、面白かった。

     信長や秀吉の苦労を見て天下など要らぬと思っていた家康は、自身の領地と徳川家を守るために権力を拡大し危険分子を排除していくうちに、必然的に天下統一のために最終決戦に向かわざるをえなくなる。幼いころに人質にされ苦労を舐めてきた家康が、徳川家を安泰にするために豊臣家や邪魔になりそうな大名たちを徹底的に排除していく冷酷さと猜疑心は、この頃の混沌の中で生まれたのかもしれない。
     また戦場の経験が少ないのに、家康への対抗意識からいつの間にか西軍の総大将になってしまった毛利輝元は、関ヶ原にも本格参戦できないまま家康に屈し、もっとも貧乏籤をひいた形となって不甲斐なかった。
     運命を手なずけ引き寄せた人間と、運命に翻弄された人間を主人公に据えたことで、戦場で武勲をあげる時代から権謀術数が幅をきかす世の中に変わりつつある天下の情勢と、渦中の人間の心理描写はとても臨場感があった。
     本来はクライマックスにもっていくべき関ヶ原の戦いや、首謀者の石田三成にはほとんどフォーカスをあてずに書いているのも潔かった。

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著者プロフィール

1960年神奈川県横浜市生まれ。私立浅野中学、浅野高校、早稲田大学卒業。日本IBM(株)入社後、おもに外資系日本企業の事業責任者を歴任。
著書に『戦国関東血風録 北条氏照・修羅往道』(叢文社)、『悲雲山中城 戦国関東血風録外伝』(叢文社)がある。
加入団体に『八王子城とオオタカを守る会』『八王子城の謎を探る会』『ちゃんばら集団剣遊会』『三浦一族研究会』等。
趣味 中世城郭遺構めぐり 全国合戦祭り参加 ボディビル エアーギター アマチュア・ウインドサーファーとしてソウル五輪国内予選に参加(8位) 「湘南百年祭記念選手権」優勝等各種レース入賞多数
*ご意見、ご感想等の連絡は下記のメールアドレスへ
jito54@hotmail.com

「2006年 『虚けの舞 織田信雄と北条氏規』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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