カフカの恋人たち

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022570550

作品紹介・あらすじ

きみなしにはいられないが、きみとともにも生きられない。20世紀最大の謎の作家は、狂おしいまでに手紙を書いた。恋人に愛を語る以上に、自らの不安を綴ったカフカ。時代に翻弄された女たちが守りぬいた貴重な手紙と日記でたどる、不思議な愛の「かたち」。カフカの素顔と作品を深く知る、待望の恋文集。

感想・レビュー・書評

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  • ‪カフカはリルケと同じように大量の手紙を残したらしい。個人的に生涯孤独であったと思っていたカフカだが、結婚を2度し、破綻し、そうして孤独であったと同時に女性達を盲愛していたのだね‬

  •  カフカという作家がいる。奇妙な話をいくつか遺し、無名のまま死んだ。死んでから、ひどく有名になった。そしてその奇妙な恋愛が明るみになった。<br />
     本書は、カフカとその恋人たちにまつわる無数のエピソードが語られていく。有名な話だが、カフカの恋愛というのは実に奇妙だ。一度しか会ったことのない人物に恋をする。それでおそろしい勢いで手紙を出す。それも一日に何度も出す。さらに「早く返事をください」と要求までする。全くもって困った男だ。ところがいざ会うとなると、ふと我に返る。ふたりの生活習慣の違い。そして結婚が「小説を書くこと」の障害となること。カフカは臆病になる。決断をせず、会うことを避ける。引き延ばしにするのがカフカの常套戦略だ。やがて愛想を尽かされ、あるいは自ら愛想を尽き、恋は終わる。(しかし手紙は書き続ける)<br />
     ただし、ここにもうひとつ奇妙なことがある。なぜカフカの恋愛エピソードがこれほどに有名なのか? それは簡単な理由による。恋人達のほとんどが、別の男と結婚してからもカフカの手紙を保存していたからである。たとえばある女性は、ユダヤ人迫害のため移住を余儀なくされた。にもかかわらず大量の手紙をその身から離さなかった。遠いアメリカの地で、カフカの手紙は大切にしまわれていた。理由はよく分からない。<br />
     本書の記述は、いたずらにカフカ本人とカフカ文学を結びつけたりはしていない。だからカフカ文学をまったく知らなくても読むことができるだろう。「フランツ・カフカ」というひとりの人間の人生として、十分に面白いものだと言える。(ただ、カフカ文学を知らなくても面白い、というのは言い過ぎか。やはり興味のない人間の恋愛話など退屈なのが普通かもしれない)

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