お洋服のちから

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.10
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本棚登録 : 22
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022577177

作品紹介・あらすじ

シャネル、ダナ・キャラン、ドリス・ヴァン・ノッテン、コム・デ・ギャルソン、プラダ、ヨウジ・ヤマモト…ブランドは数あれど、…これを読めば、あなたの"お洋服のちから"がアップする。

感想・レビュー・書評

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  • 20年前の文章なので、ある程度古い部分もあるけど、お洋服好きな作者のつづるエッセイは今でも十分面白い。

    服を次々に買っていく中毒的な、ひたすら好きという側面もありつつ、ファッションに対する批評的、客観的な面も兼ね備えていて。

    気になったところを少し引用します。

    ●コムデギャルソンのコブドレス。
    ____
    ショーを見ただけで批評することが平気なジャーナリストは、口じゃなんだかんだ言ってたって袖を通してみもしなかったに違いない。でもね、あれ、意外に気持ちよかったのよ。まるでざぶとん背負っているみたいで、頭を肩にのせるとやわらかかった。知ってました?

    脱いだり着たりすることができる。これがお洋服のもっとも普遍的な特性なのだ。それは身体ではない。身体はお洋服を脱いだり着たりする主導権お握っている別次元の存在なのである。

    マルジェラのデザインは、ごく簡単に衣服を身体の一部、もっと進めて「皮膚」などと極論してしまう浅はかなファッション哲学をあざ笑っているかのようでもある。
    ____

    ⇒ 
    一般的なよいスタイルというのは一般的な概念によってきめつけられて、服のデザインにそった肉体にすること(昔だったらコルセットありきの矯正)が強いられている。そんな制限だらけのファッションから自由になった、コブドレスやマルジェラの服の素晴らしさ。
    確かに。
    ただのファッションというよりも、これは現代アートの世界だな。
    みなを自由な気持ちにさせるファッション。

    ●わかづくり
    ____
    心は同じなのに、入れ物のからだの方が変化していくのにきづかされると、からだが自分の意志の元にないことを思い知らされてびっくりしてしまうのが普通だろう。その結果現れるのが「若づくり」という現象なのかもしれない。
    ____

    ●ユニクロ
    ____
    おしゃれじゃなくちゃいけないという世間の常識にすっかり疲れてしまった人、あるいはもともとついていけない人たちが、ユニクロに飛びついたのはまったく頷ける成り行きだったのかもしれないっていうこと。お金も頭も使いたくない。たかが服じゃないか。ユニクロでいいじゃない。安いしさ。アイテムが少ないからコーディネイトに迷うこともないし、とりあえずサマになっているし。とにかく上から下まで揃えられる」そんな気持ちかな。

    よそいきとおめかしの衰退だ。(中略)公共の場と私的な場の境が消えていく現代の日本。じつにユニクロは、その驚くべき傾向に「カジュアル」という古典的なファッション用語で食い込んでいったのである。
    「もはやコンビニ感覚なのかもしれませんねえ」

    「カジュアル」と「シンプル」という便利な言葉は、平凡な普段着におしゃれない目地を持たせることに成功した。今までのファッション批評が、これらの言葉を消化できない人は達人ではないかのおうにふるまってきたせいだろう。わたしたちは言葉を着るわけえではないのに、やはりまだ言葉に惑わされているのだ。だから誰も「ユニクロなんて着ないよ」とは言えなくなってしまっているのである。

    うーん、なんだかしてやられてる感がするのはわたしだけだろうか。おもしろくないとおもうのはまちがいなのだろうか。まちがいじゃない、と誰か言ってよ。
    ____

    20年後の今は、すでにこの危惧を感じている余裕はなく、みながユニクロのコンセプトにしっかりとのせられて、染まりきっている。私たちはユニクロに飼いならされているのではないかと思うくらい。
    いかにユニクロが戦略的にコンセプトを考えて皆を支配したか。改めてすごい力だなと感じた。


    その他
    さすがその後小説を書くだけあって、小説とファッションの関係も多々記載があって面白い。

    村上春樹の選ぶファッションはさすが。
    だったり、
    ポールオースターや小島信夫がでてきたり。
    この人選がそもそも村上春樹から発している気もしますが。

    あとは
    ヨウジヤマモトのTシャツは変な形だけど着やすいというのが妙に気になった。 

  • お洋服が大好きなお洋服フリーク著者の、お洋服に対する愛と経験による確かな批評。
    思わずお洋服を買いに行きたくなる本。

  • かなり昔に買って、本棚の整理するたびに処分しようかと中身ぱらぱらっと見てやっぱり置いておこうって毎回なる本。

  • 593.8

  • なるほどねぇ・・・

  • ファッションに関する感想は置いといて←

    この本で言われたことだけど、日本の小説、というか私がよく読む小説には、あんまり服の描写がないなぁってことに気づいた。

    このブランドのこういう服で、って説明されてると長く感じる。引き合いに出されてたような、外国の小説の、服装からたたずまい、しゃべり方、態度、そういうものを全部説明されてるとくどい。それが翻訳物苦手な理由なのかも。

  • 読んでいて、お洋服狂いの著者に、なーんかムカついてきます。
    たぶん自慢話っポイところが多分にあるから。
    でも、まぁ、なかなか面白いですよ。
    洋服狂い、極めてますしね。

  • ここまで、お洋服のことが気になるところがスゴイ。自分の着ている洋服のみならず、人の着ているものもジ〜ッと観察しているんだろうなあ。
    決してそうは書いていないけど、やはりそれなりのお値段のものを評価してあるので、私の買える範囲のお洋服はあてはまらない話が多い。
    けれど、ココまで装うという事に執着するとそれを通して世の中が見えたりするのでしょう。
    装うことで自己表現をしたり、人の格好でその人を評価したりするのは事実ですから、読んでみて損はない本です。
    本当に洋服が好きな人や、そんなことに興味がない人には受け入れられない本かもしれない。
    私のように、中途半端にファッションに興味がある人間には「今度こうやって洋服を見てみよう」と思わせる本でした。

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著者プロフィール

1972年、秋田県生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(宗教学)。明治学院大学国際学部付属研究所研究員、テレビ番組制作リサーチャー。専攻は宗教学。著書に『オカルト番組はなぜ消えたのか――超能力からスピリチュアルまでのメディア分析』(青弓社)、共著に『媒介物の宗教史』(リトン)、『神道はどこへいくか』(ぺりかん社)など。

「2020年 『テレビリサーチャーという仕事』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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