ニッポンのコメ: 崩壊に向かう複雑なその仕組み (朝日選書 680)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022597809

作品紹介・あらすじ

私たちにとって身近なコメと、複雑怪奇なコメの世界という二面性を制度と実体経済の動きから概観する書。

感想・レビュー・書評

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  • 「ニッポンのコメ」大泉一貫(著)
    戦争中の1942年に制定された食糧管理法が、戦争が終わっても、続けられ1995年まで続いた。コメの売買が自由となった。なぜコメの管理に日本はこだわったのだろうか?という疑問があった。また、それに変わって、食糧法になっても、あまりコメの管理統制は変わっていないようだった。1970年から、生産調整という減反政策が始まり、2018年にやっと減反政策が廃止された。
    農水省のコメの管理が続き、そしてコントロールしようとしている。なぜなのか?とにかく、コメをめぐって、日本の複雑な事情がよくわからないので、この本を読んでみた。
    農水省のコメ政策の一番問題は、コメ余りが明らかになった1970年に生産調整(減反政策)を取ったことかもしれない。その時点で、余ったコメを海外に売るという方向を持つことが重要だった。つまり、外に目を向けるべきだった。それを内に向けることで、怪しげな政策を取らざるを得なかった。
    農水省はコメは日本の文化であり、日本の命のようなものだから、守らなければならないという思いと「需要の安定と価格の安定」の思いが強かったのだろう。コメの分脈を変えることができなかった。
    この本では、食糧管理法がなぜ廃止になったかということが鮮明書かれていた。①食糧管理法が、実態と乖離していた。②ウルグアイラウンドの決着。③93年に自民党単独政権の崩壊。規制緩和の流れが、食糧管理法にも及んだ。④93年の冷害に端を発して、平和米騒動がおこった。
    時代背景は、「市場原理」「民間流通」「規制緩和」だった。
    それにしても、国がコメを管理して、農民から買い、ブレンドして、売り渡すという統制する仕組み(官僚主導型業界強調体質)にこだわり続けた。
    農業経済学者の東畑精一は「農業は幼稚(劣弱)産業である」として、中央集権的、保護主義的、業界協調的、均質的で啓蒙的な護送船団を構築した。農政は「大きな政府」の伝統を持っている。その中で、農協は政府の代理人的な役割を果たしている。農水省と持ちつ持たれつの関係となった。
    食管法を廃止して、食糧法に始まったが、「主要食糧の需給および価格の安定に関する法律」ができ、「自主流通米価格形成センター」が設置され、引き続き統制を残した。
    自由に売れるようになり、単一銘柄で購入できるようになった。コメを売るには許可がいったが、それがなくなることで、多くあった小売業の米屋さんが倒産してすくなくなり、スーパーやコンビニでコメが売られるようになった。各県の「産地品種銘柄」が数々のブランド米が作られるようになった。国の統制と生産者の管理が基本で、消費者がどんなコメを食べたいかということが無視される文脈と消費者が美味しいと思うコメが欲しいという矛盾の中に、コメの存在があることが理解できた。

  • 始めから終わりまで、前提知識のない人が読むには難しかった。が、最後の5ページからは良いヒントが得られたと思う。

  •  サブタイトルに「崩壊に向かう複雑なその仕組み」とある。

     国際的にみても米は優れた主食として、人気が高い。他方で、廉価、外国米輸入、減反課題も多い。

     意外であったとのは米を蘇民が食べるようになって200年ほどという事実、食管制度の始まりが昭和17年とは戦時食糧確保。

     しかし、産官政はその緻密な食管制度の「うまみ」も、手放したくないのだそうだ。

    本書は食管法が廃止され、食糧法が施行された後で書かれている。平成7年に米不足もあった。法改正の背景にはウルグァイランド受け入れによる外国米輸入義務というのがあったそうである。

     食糧制度の根幹にふれる部分について、背景と利害関係者の内部事情をうかがうことができる。

  • 1995年「食管法」が廃止され、それに代わって「食糧法」が制定・施行された。本書は、食糧法がコメの世界にもたらした変化を、生産現場・卸・小売・消費者の立場からレポートする。コメをめぐる複雑な状況の理解に最適な一冊。これから市場に求められるコメの条件もわかる。
     食糧法制定当時、農水省などはコメを一気に市場原理に託すのは危険だと考えた。そのため食糧法は一方で自由化を進め他方で管理流通制度を残す、二面性を持つ法律になった。

     だが、縮小産業での構造改革が必要なら、中途半端な改革は事態をさらに複雑化し、産業再生の芽さえ摘み取る、というのが著者の主張だ。

     自由な市場を求める量販店・外食産業と、流通の管理を求める全農のあつれき。その中で日本の稲作産業は販売額の減少に直面している。農家が、市場に合わせたコメを作り販売できる体制の構築が急務である。

    (日経バイオビジネス 2001/10/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)

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著者プロフィール

宮城大学名誉教授

「2023年 『農林水産法研究 創刊第1号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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