戦争責任と追悼 (朝日選書 810 歴史と向き合う 1)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599100

作品紹介・あらすじ

東京裁判から60年を経た終戦記念日、首相が靖国に参拝した。いまや「歴史認識」は重大な政治の争点となり、外交のかたちとして表れる。歴史は過ぎ去った昔にすぎないのだろうか?過去に何があったか、なぜそうだったのかをまず知ること。日本に、アジアに、多様な見方や思いがあることを知ること。「歴史」をどうとらえるかは、いまを生きる私たちに突きつけられた最新のテーマとなってきた。本書は、朝日新聞連載企画「歴史と向き合う」から第1部〜第3部を収録。「東京裁判」「パル判事」「戦争責任」「靖国問題」をテーマに、国内外の識者へのインタビュー、歴史意識をめぐる世論調査結果、写真資料などを交えた渾身の取材の成果である。

感想・レビュー・書評

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  •  新聞連載企画を元に06年刊。東京裁判、戦争責任、靖国神社の3部構成からなる。日本遺族会会長のインタビュー、保守に讃えられるパル判事についてはその論の多角性、など割と多面的に取り上げる。
     東京裁判に対しては、評価する人々の中でも全面的に肯定するような意見は今は見られなくなり、様々な問題点を認めた上で歴史的意味を捉え直しているという。証拠を広く集め日本人自身に知らしめた「歴史への大きな貢献」とする論や、ニュルンベルク裁判と合わせ国際人道法の発展に大きな役割を果たしたとする論。0か1かではない世界なのだろう。
     新聞の戦争責任にも触れているが、虚偽の軍発表をそのまま報道、発禁不安の下での萎縮などが強調され、消極的協力に過ぎなかったという姿勢が透けて見えるのが気になった。

  • 太平洋戦争に対して、日本に残る問題点を示した本。
    朝日新聞 2006年の「歴史と向き合う」という企画をまとめたものらしい。
    「はじめに」によれば、現代の日本人の歴史認識と国際的な比較、という視座を考えたとのこと。

    本書のテーマは三点。

    「東京裁判」
    「戦争責任」
     -パル判事( 東京裁判で無罪の意見を述べた人)
     -天皇
     -メディア
    「追悼 靖国神社」

    当時や現在の記録、関係者のインタビューなども交え、多角的な状況と視点が示されています。

    新聞記事が元になっていることもあるのか、短文でまとめられていてとても読みやすかった。
    それだけに表面的な理解に留まった感じではありますが、どんな問題があるのかを知るきっかけには最適かと。

    戦時の不完全な政治システムがいまだに尾を引いていることと、それを正面から検証できていないことが歯がゆい感じです。

  •  新聞掲載の「歴史と向き合う」シリーズの単行本化。新聞に載った文章らしく、必要な情報がコンパクトにまとまっていて読みやすい。欲を言えば、もうちょっと文量がほしい(もっと詳しく解説してほしい)とは思ったが、紙面に限りがある新聞記事をベースにしているから、しょうがないのだろう。

     「戦争責任」について、東京裁判の意味やパル意見書の真意、メディアの責任(特に朝日新聞社)などを公平に解説している、という印象。よく議論になる「靖国」や「首相参拝」に関することで知識を頭に入れるためには、必須と言っていい本だと思う。

     心に残ったのは、「メディアの戦争責任」の章だ。朝日新聞をはじめとするメディアが、いかに国民の戦意をあおり、戦線拡大を後押ししたか、ということがかなり詳細に書かれている。

     そしてその理由として①「軍官による報道統制や、そのベースともなる用紙統制」②「青年将校や右翼による暴力テロの脅し」③「新聞経営者や記者一人ひとりの勇気の欠如、保身」④「新聞人の不勉強と世界観の狭さ」⑤「新聞人のなかに積極的な戦争推進論者もいたこと」⑥「新聞が資本主義的な商品であり利潤追求動機が優先しがちなこと」が挙げられている(166p)。そうした上で、これを書いた記者は、現状と比べた上で次のように言う。①②はほぼないが、⑥は変わっていない。そして③~⑤は「新聞経営者や記者ら自身の意識や努力次第で変わり得る事柄だ」(167p)。

     つまり、新聞が資本主義的な商品である以上、③~⑤の条件が満たされ、「勇気が欠如し、不勉強で世界観が狭く保身に走りがちで戦争推進論者の新聞人」がいれば、あのときの条件がほぼ揃うわけである。産経新聞のように、もうそうなっちゃってる新聞もあるくらいだし、朝日新聞が再びそうならない保障は、実はどこにもないのだ。

     記事の盗作だの飲酒運転だの、という朝日新聞の最近の不祥事報道を見るたびに、「この会社、本当に大丈夫か?」と思う。ちょっとしたきっかけで、この会社が昔のようなゴリゴリの好戦新聞に右旋回する恐れを、なしとしない。

     そうなれば、この国は終わりだ。

  • [ 内容 ]
    東京裁判から60年を経た終戦記念日、首相が靖国に参拝した。
    いまや「歴史認識」は重大な政治の争点となり、外交のかたちとして表れる。
    歴史は過ぎ去った昔にすぎないのだろうか?
    過去に何があったか、なぜそうだったのかをまず知ること。
    日本に、アジアに、多様な見方や思いがあることを知ること。
    「歴史」をどうとらえるかは、いまを生きる私たちに突きつけられた最新のテーマとなってきた。
    本書は、朝日新聞連載企画「歴史と向き合う」から第1部~第3部を収録。
    「東京裁判」「パル判事」「戦争責任」「靖国問題」をテーマに、国内外の識者へのインタビュー、歴史意識をめぐる世論調査結果、写真資料などを交えた渾身の取材の成果である。

    [ 目次 ]
    第1部 東京裁判(ナショナリズムに揺れる政治;東京裁判を読み解く ほか)
    インタビュー 海外からみる目(リチャード・マイニア氏に聞く―東京裁判とはなんだったのですか;ケント・カルダー氏に聞く―「靖国」を米国はどうみますか ほか)
    第2部 戦争責任(「無罪」を言い渡したパル判事;天皇をめぐる論争 ほか)
    第3部 追悼のかたち(靖国神社と政治;新たな担い手を求めて ほか)

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