諷刺画で読む十八世紀イギリス ホガースとその時代 (朝日選書)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599841

作品紹介・あらすじ

それまで貴族のものとされていた絵画が、中産階級の手にもわたるようになった18世紀イギリス。のちに「イギリス絵画の父」と呼ばれるウィリアム・ホガース(1697‐1764)は、当時の貴族階級や政治家を諷刺し、中産階級の道徳観を訴える絵画や版画を数多く制作した。その作品には、娼婦に身を落とした女の姿や悪人の無残な末路など、18世紀イギリス、そして大都会ロンドンの社会風俗が生き生きと描き出されている。本書は"南海泡沫事件""ジン横丁""残酷の四段階""娼婦一代記""放蕩息子一代記"など代表的な作品を読み解きながら、18世紀イギリス社会を紹介した、網羅的かつ本格的な新しいホガース論である。

感想・レビュー・書評

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  • 18世紀のイギリスを、ホガースの生涯と彼の描いた諷刺画を
    読み解きながら、その当時の歴史や政治、人々の生活等を探る。
    序章 絵が語る時代の姿  
    第一章 十八世紀のイギリスに生まれて
    第二章 歴史と伝統を継ぐ者  第三章 腐敗政治と混乱する選挙
    第四章 来世への信仰と現実の楽しみ?  第五章 大都会の実像
    第六章 男と女の性と堕落  第七章 ささやかな日常の美を描く
    終章 ホガースの子孫たち
    カラー口絵8ページ。文中にモノクロ画像。
    ホガース年表、参考文献有り。
    諷刺画家ホガースの生涯と作品を絡め、18世紀イギリスの姿を探る。
    ひと昔は王政復古とスチュワート王朝。ハノーヴァー王朝へ。
    政治はホイッグ党とトーリー党の対立と腐敗政治。
    上流階級に台頭著しい中流階級。底辺の貧困層。
    そんな当時の世相、風俗、宗教が絡む対立、残酷な愉しみを
    ホガースの諷刺画の画面から探り、語っています。
    当時のイギリスの内情については詳細で、興味深いものがあります。
    また、ホガースが諷刺画家として名を残した道筋がわかります。
    その努力と商才、人道や美術の業績。人への視線も鋭い。
    著作権法の元になったホガース法制定に奮闘したことも。
    しかし、ホガース関連になると、著者の思い入れが強くて、
    熱い推測が多過ぎる感じがします。
    また、本文中のモノクロ画像が小さく、文章とリンクしても、
    細部が見えないのが難点。
    蔵書から『ホガースの銅版画』森洋子/編著を
    引っ張り出して、細部を確認する羽目になりました。

  • 18世紀のロンドンの状況であるけれど、音楽以外の英国文化が盛り上がらない訳がない。絵画史的にはそれまで英国が多くを学ぶ対象だったイタリアから、1746年に画家カナレットがロンドンに来て、その後9年間にロンドンで絵を描きまくっている。もう一人、英国絵画史の立役者、1697年生まれのホガースが活躍し、英国絵画史が始まるともいえるのが、この時代でもある。ちなみに英国画家ターナーは1775年生まれ。

    ウィリアム・ホガース(William Hogarth)はロンドンで活躍した英国画家で、風刺を交えて精緻に描かれる版画や絵画は当時の英国の姿をInstagramで切り取ったように活写する。

    例えば、英国はスペインを追い落とす一方、 1720年に国内では無茶な投機証券が横行し、そのバブルがはじけてして中産階級が経済的に大きな痛手を被る。この「南海泡沫事件」を風刺画でホガースは生き生きと描写し、彼自身の評価を高めるきっかけになった。
    その絵を見てみると、中央の回転木馬に跨がることを奨励する煽り文句の下、木馬には南海事件の渦中にある様々な位の人物が跨がっている。そして、木馬の下は我も我もの大騒ぎの状況。左手奥には投機に勝った者と結婚する富くじが開催されており女性が並ぶ。手前左では女神が悪魔に切り裂かれ、その肉が大衆に投げ与えられている。けたたましくも、儚い状況が1枚の絵に見事に納められている。

    詳細はコチラ↓
    BBCプロムス最終夜は英国万歳のプログラム / 『諷刺画で読む十八世紀イギリス ホガースとその時代』 を読む
    https://jtaniguchi.com/bbc%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%a0%e3%82%b9%e6%9c%80%e7%b5%82%e5%a4%9c-%e8%ab%b7%e5%88%ba%e7%94%bb%e3%81%a7%e8%aa%ad%e3%82%80%e5%8d%81%e5%85%ab%e4%b8%96%e7%b4%80%e3%82%a4%e3%82%ae%e3%83%aa%e3%82%b9/

  • 18世紀イギリスの諷刺画家ホガースの評伝。ホガースの人物像、代表的な作品を時代背景と共に学べます。ホガース自身、作品ももちろん面白いのですが、この本の文自体が、ホガースっぽいです。分かりやすくて諷刺が効いていて、毒があって、でも奥底に知性ろ優しさが感じられる、ホガースの絵と共にこの本はそんな文章で出来上がっています。

  • 早く読みたいです。

  • とにかく翻訳が最低最悪。アマゾンにレポったので読んで下さい。

  • ウィリアム・ホガースの諷刺画から、1700年代のイギリス社会の様子を読み解く。風刺画は当時の社会における貴族や中産階級の実態を風刺し、社会に起こっている問題をあぶり出す。しかし、それは単に彼らを揶揄し、面白おかしく笑い飛ばす事が目的であっただけでは無く、人々の道徳心の向上とより良き社会の実現を願う物であった。名も無き市井の庶民がコツコツと日々の日常を生きる姿の中にこそ美を見い出した彼は、社会の矛盾が大きくなることによりそのような庶民の暮らしが脅かされてしまうことに警鐘を鳴らすため、諷刺画を描いた。諷刺画に込められたホガースの願いと精神は現代の社会にまで連綿と受け継がれているのであろう。矛盾点が大きく、更に社会格差の拡大が危惧される今の時代。今後そのような視点で自分も諷刺画を読み解きたいと思う。

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著者プロフィール

小林章夫(こばやし・あきお)
1949年東京生まれ。
上智大学文学部英文学科教授・博士(文学)。
同志社女子大学教授などを経て現職。
18世紀のイギリス文学を足がかりに、
近代イギリス文化を多彩な視点からとらえる。
主な論文・著書
「憂鬱な詩人 アレグザンダー・ポープと
政治諷刺」
『チャップ・ブックの世界』(講談社学術文庫)
『イギリス紳士のユーモア』(講談社学術文庫)
『コーヒー・ハウス』(講談社学術文庫)
『田園とイギリス人—神が創りし天地で』
(NHKブックス)
『東は東、西は西—イギリスの田舎町からみたグローバリズム』(NHKブックス)
『おどる民 だます国—英国南海泡沫事件
顛末記』(千倉書房)
主な訳書
ヒュー・ジョンソン『ワイン物語』(平凡社
ライブラリー)
テリー・イーグルトン『アフター・セオリー
—ポスト・モダニズムを超えて』(筑摩書房)
ドミニク・チータム『「くまのプーさん」を
英語で読み直す』(NHKブックス)など。

「2009年 『アメリカ〈帝国〉の苦境』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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