- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022618863
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学評論随筆その他】『文藝春秋』昭和49年11月号に掲載された「田中角栄研究」は、時の最高権力者・田中角栄を退陣に追い込んだ。2本のレポートはどう取材され、日本の政治と言論をどう変えたのか。歴史的記事の真相を追究した傑作ノンフィクション。解説は池上彰氏。
感想・レビュー・書評
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田中角栄イヤー(生誕100年)といふことで、わたくしもここで一冊。
佐藤栄作長期政権に倦んだ国民が、新たなリーダーを求めていた頃(現在と同じ状況ですね。しかし現在、角さんに匹敵する人はゐない)、颯爽と出現したのが田中氏でした。高等小学校卒ながら、郵政大臣、大蔵大臣、通産大臣、党幹事長など、要職を重ねながら、福田赳夫氏との所謂「角福戦争」にも勝利し、庶民派宰相として政権を握りました。当時の「角さんブーム」は、まだ子供だつたわたくしもよく覚えてゐます。
実績としては、何と言つても日中国交正常化ですね。大平正芳外相らと共に北京へ飛び、周恩来・毛沢東と会談の結果、遂に中国との共同声明により、国交正常化が実現しました。同時に、中華民国(台湾)との国交は断絶したのであります。
日本へ帰る機中で、田中は大平に、よく生きて帰れたなあ、と語つたさうです。命懸けの外交でした。
これにより中国から友好のシンボルとして上野動物園にパンダ(カンカン・ランラン)が贈られます。忽ちパンダブームが起き、動物園では長蛇の列、ぬいぐるみや人形、学用品までパンダが登場し、特撮番組「ウルトラマンA(エース)」では、日本からパンダを盗む事だけが目的の宇宙人・スチール星人が出現するありさまでした。子供心にも、あんぐりした覚えがあります。
しかしその後は思ふ通りの政権運営ができなくなつてきたやうです。日本列島改造も、本人は実は積極的ではなかつたらしい。本書『田中角栄失脚』では、その退陣の原因となつた、「文藝春秋」1974(昭和49)年11月号に纏はるドラマであります。
同号には、児玉隆也「淋しき越山会の女王」と、立花隆「田中角栄研究」の2レポートが掲載されました。掲載されるまでのドキュメントが面白い。また、未だにかかる田中角栄のスキャンダル暴露について、「福田派の陰謀説」が流布してゐるといひます。これは完全に否定されてゐると思つてました。
当初、田中陣営はこの二編のレポートについて、それほど重要視してゐなかつたとか。当時の文藝春秋編集長(後の社長・田中健五氏)も、田中がカネをばらまいてゐると聞き、いつたいその金はどこから出てゐるのだらう、といふ疑問から、立花隆氏・児玉隆也氏を起用したものの、それほど反響があるとは考へなかつたさうです。
外国人記者の質問(インタヴュー?)をきつかけに、それまで静観してゐた各マスコミ(主に新聞社)が一斉にこの問題を取り上げ、退陣に繋がつたといふことです。
よく、田中角栄氏を評して、「功罪相半ばする人物」とよく聞きます。功罪どちらが勝つのか、この人については分かりません。わたくしはこの政治家をあまり好かなかつたけれど、現在の政界を見ると、「今、角さんがゐたら......」と想念するのも事実であります。
トランプやプーチン、習近平らとどんな交渉をするのか。或は金権政治に拍車がかかるだけかも知れませんがね。
デハデハ、本日はこれでご無礼します。
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推されてたけど本当にこの界隈が好きな人じゃないとちょっと厳しい。もっと読み物かと思ったが記録的だった。