抑留を生きる力 シベリア捕虜の内面世界 (朝日選書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022631176

作品紹介・あらすじ

飢え、酷寒、重労働という「三重苦」に耐え、シベリア捕虜たちが生き抜いた強さはどこから生まれたのか。残された絵画、俳句・川柳・短歌のほか沿海地方などの楽劇団の活動から、苦難の体験を「生きる力」に変えた芸術表現や精神性をたどる。

感想・レビュー・書評

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  •  シベリア抑留の過酷な状況は前提の上で、本書では抑留自体よりも収容所での文化活動、ロシア人との交流、ロシアに留まった人々などを取り上げる。収容所でも楽しみはあった、などとは軽々しく言えないが、一定の文化活動はあったことが分かる。数は少ないが日本とロシア双方の妻の間で葛藤したという、映画「ひまわり」のような話もある。
     著書は、「民主運動」は必ずしも共産主義思想の教育ではなかったとしているが、「人民裁判」と称する吊し上げがあったのも事実。またいずれは日本でも社会主義移行という戦略がソ連にはあったようだ。特にアクチヴは日本共産党に加入すべきものとされていたという。一方で1949年当時、日本共産党はソ連を礼賛し、抑留者の望郷を描く歌や映画に抗議したという。イデオロギーがいかに目を曇らせるかが分かる。

  • シベリア抑留を理解する8つのポイント
    第1部 収容所の文化活動
    「異国の丘」誕生話
    楽・劇団の登場
    絵画は宣伝の道具か
    俳句・川柳と短歌

    第2部 日本人とロシア人の交流
    ロシア語と通訳たち
    名通訳の南信四郎と戸泉米子
    コムソモリスク墓参と交流
    アムール州墓参と交流

    第3部 望郷、一時帰国か永住か
    ハバロフスクに生きて―吉田明男と田中猛
    二つの愛、二つの祖国―蜂谷彌三郎
    祖国で暮らし異郷へ

    第4部 資料ゼロから始めて
    あるソ連帰化者―ロシア紙記事から
    ある満鉄調査マン―外国発メールから

    運動史―要求から記憶の伝承へ

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著者プロフィール

1945年福島県生まれ。成蹊大学名誉教授。専門はロシア・ソ連政治史、日ソ関係史。東京大学法学部卒業、同大学院社会学研究科博士課程満期退学。予備校講師、大学非常勤講師などを経て成蹊大学法学部教授、同法学部長などを務める。著書『歴史としての東大闘争――ぼくたちが闘ったわけ』(ちくま新書、2019年)、『スターリニズムの統治構造――1930年代ソ連の政策決定と国民統合』(岩波書店、1996年)、『戦間期の日ソ関係――1917-1937』(岩波書店、2010年)、『シベリア抑留』(中公新書、2016年、アジア太平洋賞特別賞受賞)など。

「2022年 『ものがたり戦後史 「歴史総合」入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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