街道をゆく 15 北海道の諸道 (朝日文庫 し 1-71)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644619

作品紹介・あらすじ

道南の函館では『菜の花の沖』の高田屋嘉兵衛、この町で布教したロシア正教のニコライ神父の生涯を考える。江差港には、幕府海軍の主力艦で、沈没に榎本武揚が戦意を失った開陽丸が眠る。旅のクライマックスは道東の陸別。『胡蝶の夢』の主人公のひとり、関寛斎の終焉の地でもある。晩年に極寒の地を開拓、深く慕われつつ劇的に生涯を閉じた。今は妻と眠る寛斎への筆者の思いは深い。

感想・レビュー・書評

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  • 米によって日本が同質化を強いる社会になったのを考えながらの旅。あと、自分の軍隊経験を踏まえての明治の行刑や屯田兵制度への批判

  • 発刊順でまたもや本州の外。もはやとめられない(笑)

    本州が島であることを時として忘れてしまったりする程度の度量の我が国民は、長い間その周辺の多くの離島を「遠国」としてのラベルを貼って分類してきた。そのラベルには否定的な意味合いが込められており、真綿のごとき人道心を持ち合わせているシバさんのような人がその地に立つとき、その大地にこぼれている涙という液体をぐしょぐしょになるまで吸ってしまうようだ。こうした時のシバさんの語り方というものは、最近では佐渡を訪ねた時、天草を訪ねた時、唐津の浜に立った時に同じものを感じた。そういう意味では本巻は元気のない時には読んじゃいけない。その渦にのまれてしまいかねないから。

    本巻におけるペアリング考については序盤函館紀行の部分については「菜の花の沖」を、中盤新十津川のくだりにおいては「街道をゆく 12巻 十津川街道」を、そして終盤、内陸部への行程においては「胡蝶の夢」を挙げねばならない。最後の選は自身にとっては未読の作品。紙数としては少ない登場であったのだがかなり重度の衝撃を受けてしまったため、久々の「並行読み」に挑むか否かをただいま脳内審議中。

    奇しくもその一巻が既に本棚で待っていることもあり…(苦笑)

  • 北海道という土地がどのように日本化されてきたのか、さまざまな人物を軸に語られる話の一つ一つが深い

  • 函館近辺、札幌、新十津川、陸別への紀行文。
    関連する人物は、高田屋嘉兵衛、榎本武揚や関寛斎。
    また、開陽丸、屯田兵、十津川村の開拓者等の話が語られる。

  • 北海道を旅行する前に読みました。
    歴史のマニアックなところがわかるので好きなシリーズ。これを読んでからいくと、旅先がもっと感慨深くなる。今回の旅とは関係ないが、関寛斎がきになる!

  • 明治前後の開拓に話の中心があり、それはそれで面白かったが、あまり触れられていないアイヌの歴史に興味がわいた。

  • 同シリーズの十津川街道ともあわせて読みたい。どんな「辺境の」場所にも人は住んでいて、どうしてもっと住みよいところへ移住しないのだろうかという疑問がいちいち湧き起ってきた。でもそれは、決して非難めいた疑問ではなくて、肯定的な、それだからこそ、というような感覚で。

  • 前にDVDで『北の零年』を見ていて、ストーリーはともかく移民たちの住居が本州のそれと変わらないので、
    「そんなわけないやろぉ」と見てました。
    特に、役柄は忘れましたが香川照之さんの屋敷は江戸の旗本のようでした。
    この本に、開拓民達が戸板一枚の家に住んで結核と肺炎で溶けるようにして死んで行った、と言ったような事が書いてあって、なるほどと妙に納得してしまいました。

  • 道南の函館、松前、江差から始まり札幌、旭川へと抜けるルートをとっている。日本の歴史を考える時、稲作とは切っても切り離せない関係になる。冷涼な気候のため、北海道はこの稲作による文化の画一化から逃れ、アイヌ文化という非稲作要素を残すことになった。

    著者は、奥羽や北海道にいた和人が冬の寒さをしのぐための建築様式を持たず、本土の南方建築をそのまま移植して合せてきたことにふれ、中央と均一化したがる意識がオンドルのような寒冷地用の家屋を採用することを阻んできたのではないか、と触れている。

    もちろん函館の価値を初めて見出した江戸期の商人、高田屋嘉兵衛も登場する。彼が主に活躍し、拿捕されて囚われの身となっていたロシア船の船長ゴローニンを解放したが、ゴローニンが記した「日本幽囚記」を読んで来日したのが、東京駿河台にニコライ堂を建てたのがロシア正教の大主教ニコライである。

  • 司馬遼太郎は良くも悪くも日本の政体を語る作家である。特に造詣が深いのは氏の「日本史は、史料の多さからいっても、また人情が通うという点からいっても室町期からほぼ見えやすくなってくる。」という言葉通り、室町から近代大正にかけてあって、日本の政体に明確な形で組み込まれるのが遅かった沖縄や北海道といった土地への造詣は、他のそれと比べていささか薄いのではないか。この書を読むまでそう思っていた。現に、同じシリーズの沖縄編は少なくとも私にとってはシリーズの他の書にくらべて、心躍ることが少なかった。

    しかし、ごめんなさい。
    司馬遼太郎先生。
    私が浅はかでした。

    あえて旅の行程を逆さにしてまで幕末から語り起こし、締めを明治開拓期に持ってくる筆力に脱帽。

    非常に興味深く、一気に読ませていただきました。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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