ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書 132)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022732323

感想・レビュー・書評

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  • 企業倫理について問う一冊。
    利益至上主義のため、顧客・サービスよりも自分達組織や会社のメンツのために動く経営陣。

    大手企業だからといって、正しいことをしているかと言えば別。その影には、多くの人の苦渋と血が流れていることを思うとやり切れない。
    内部告発者の権利保護が急務で、消費者を守っている方こそ守るべきだと感じた。

    近年では、
    ・有名ホテルー表示偽装問題
    ・ベネッセコーポレーションー派遣社員による情報流出
    ・マクドナルドホールディングスー仕入れ企業の品質問題
    など例を挙げればきりがない。

    情報面
    今後も、ビックデータの活用やSNSによって大量の個人情報が手に入り、様々なものに悪用される可能性がある。

    食品やサービス
    経営陣の一存で、都合の良いものが手を変え、品を変え、出てくることは必須。

    安いことが必ずしも良いのではなく、安心・安全であることを含めた物でないと消費者に受け入れられないような制度設計も大切では。

    第三者機関・市民オンブズマンなど外部機関による調査や監視も求められてくる。

  • ホイッスルブロワー 三菱自動車工業 河添克彦(元社長) クラッチハウジング しわ傷 赤羽喜六(ミートホープの元社員。内部告発者の一人) 石屋製菓(白い恋人で有名な会社) 船場吉兆 ニチアス(耐火用建材の不正を行っていた) 栗本鐵工所(高速道路に使われる円筒型枠の不正を行った) 公益通報者保護法 帝人(徹底したコンプライアンスを行うと記されている) 大阪トヨタ自動車(虚偽の所有者登録を行っていることを告発したが、弁護士の手違いで出社停止を言い渡された) 課徴金減免制度(リーニエンシー) 仙波敏郎(警察内部の裏金に言及し、配置換えなどをされた) 三井環(検察官。先輩検事との仲違いから奇妙な人事移動をさせられる。検察内部の豪遊を告発しようとしたが、逮捕された) 打出喜義(金沢大学附属病院に勤務。患者の同意なしに治験を行ったことに触れ、院内で煙たがられてしまう) 神崎安太郎(千代田生命の元社長。通常では考えられない横暴な業務取引で会社に損害を与えたのみならず、内部告発者相手に裁判を起こした) 滝沢隆一郎『内部告発者』(この事件をモデルにした小説) 串岡弘昭(トナミ運輸に勤務。業界のカルテルに触れ、32年もの間、雑用・脅迫・精神的なパワハラを受けてきた)

  • 会社というのは自己保全のためには個人に対してこれほどひどいことをするかということがよくわかります。自分がもし会社の中で同じような状況に置かれた時に内部告発ができるかという問に対しては、自分の信念のためにはごく普通の小市民的幸福を追い求める人生を捨てる覚悟がないとできないという厳しい問いかけに答えなければならないことになります。

  •  自らが属する組織の腐敗を告発した者たち、彼らはなにを想い告発に踏み切ったのか。組織は彼らの想いにどう応えたのか。内部告発をめぐる個人と組織の葛藤に迫ったルポルタージュ。
     内部告発というのは、本当に人間くさいものだと思う。告発者の多くはおのれの良心と現実とのはざまで苦しんだ末に告発に踏み切る。組織はときにそんな告発者を憎み、迫害する。トナミ運輸のケースでは、個人と組織のあまりに人間くさい闘いが展開されている。
     残念だったのは、数多くのケースを紹介しているせいか、一つひとつのケースの印象が薄くなってしまったこと。もう少し数を絞って、深掘りしたらもっと良いルポになる気がする。

  • 朝日新聞に掲載された記事を元にまとめられた一冊。様々な内部告発の事例とその後が綴られている。一部冗長なところもあるもののそれぞれの事件を端的に学ぶにはちょうどよい。時流に乗っているからではないがオリンパスの内部告発の事例も読みたかったなぁ。どうしても辞めない、という心境はあんまり理解出来ないけど、当時はそういうものだったのだろうか。

  • これはなかなか面白かった。
    企業コンプライアンスと内部告発の連鎖には関心があったので。

  •  著者はすべて新聞記者。本書はタイトル通り、企業の内部告発についてのルポルタージュです。新書形態でのルポルタージュも増えましたねえ。このようなものって、テーマが大きいものでは分量が足りないし、小さいものだとマニアックになって売れないし難しいところ。そういう意味で、「企業の内部告発」はよいテーマなんでしょうね。

     内容ですが、三菱自動車、ミートホープや船場吉兆から検察裏金まで豊富な事例を提示したものとなっています。一応、企業が取り組んでいる対処法なども紹介しているのですが、それは面白くないんです。新聞記者の取材ものなので、報道される限りのものがスリリングに書かれており、資料としては買いです。

     内部告発の難しさは、告発をすることそのものもそうなのですが、その証拠をどのように得て、証明するかにあること、そのため慎重に行動しなくてはならないところにあることがわかります。

     ただし、それ以上のものを知りたいと思えば、内部告発者本人の著作か、フィクションにするしかないでしょうね。告発者がマスコミに情報を流すところから逮捕や裁判まで丹念に書かれていますので、ますますその時の人物心情やホンネを知りたいと感じる良書です。

  • 実際の内部告発に関わった人たちへの取材が綿密に行われており,非常に臨場感があって読みやすくなっている。
    未読の方はぜひ一読されたい。

  • ミートホープ事件をスクープした朝日新聞取材班のルポルタージュ。
    コンプライアンス制度確立の契機を作ったジャーナリスト達の活躍の裏側。

  • 2008/12
    朝日新聞の記者が取材した内部告発についてをまとめたルポタージュ。大手メディアの限界と言える部分もあるが、豊富な取材力で多くの事例についてまとめてある。あくまでも素材の一つとしての本としてはなかなか使える。

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