テレビ最終戦争 世界のメディア界で何が起こっているか (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737694

作品紹介・あらすじ

【社会科学/経済財政統計】「見たい番組がない」「面白くない」いまのテレビ。一方でAmazon、ネットフリックスが日本の放送業界をのみ込もうとしている。再生の道はあるのか? 米国巨大メディア企業の動向を探りながら、"メディアの王様"テレビの未来を見通す。

感想・レビュー・書評

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  • 電通が出すデータを見れば2020年に至る前にインターネットメディアの市場規模が、テレビをはじめとしたメディアの市場規模を超えています。

    その少し前の時代、ネットフリックスやアマプラが躍進してきている状態と旧態依然としたメディアの対立構造がよく理解できますし、ビジネス戦略も学べます。

  • 人間ドックの結果報告書のような2018年夏現在の「メディアの健康診断」レポートです。たぶんクオータリー、マンスリー、いやデイリーに症状というか、状態は変化していくのだと思います。だから、今、読まなくちゃどんどん古くなっていく本です。しかし、これからの変化のベクトルはハッキリクッキリ。そのキーワードは動画で、現在のキープレイヤーはネットフリックス。日本でチコちゃん的「ボーっと生きてんじゃねぇよ!」なテレビ視聴態度だとまだまだ存在感を感じない企業ですが、ケーブルテレビや衛星放送をなぎ倒し、三大ネットワークを飲み込み、GAFAを巻き込み、勢力を拡大しているメディア台風であることがよくわかります。これ、2020年のオリンピックの5G時代には日本はすっかり暴風域に巻き込まれること必至。迎え撃つ国産メディアの状況がまるで幕藩体制末期のような地域フランチャイズシステムになったいるのはいかにも非力に感じます。ちょうど今、NHKと日テレのテレビ放送65周年のコラボ企画がオンエアされていましたが、ホント今まで考えられなかったような再編が起こらないと、と感じました。それよりなにより、そのネットフリックス台風の目の創業者リード・へイスティングスが、ボウディン大学→海兵隊→平和部隊→スタンフォード大学→ネット会社→起業という、世界の多様性と各地域の特性をキャリアの中で体験し、逆境からの発想によってビジネスを作っていることに、このメディア革命の本質があるのだと思いました。

  • 批評・提言はなく、業界地図とカタログ一覧という感じ。

  • 2018年の本。2023年現在では、いろんなことが変わってしまってコロナ前夜の歴史本として楽しめた。

  • サブタイトルに「世界のメディア界で何が起こっているか」とあるように、日本のテレビ業界だけでなく世界各国のメディア事業者による猛烈なビジネスの様子を伝えている。

    本書の大半が、欧米のメディア、ネット企業による買収合戦の話だ。額の巨大さと、新興企業が短期間に世界中で影響力を行使する展開の速さが凄まじい。

    日本に限らず、どこの国でも既存メディアを守る規制と、新興勢力への反発がある。しかし消費者の強力な支持の下、色んな問題が発生してもなお拡大していくトップランナー達のエネルギーは大したものだ。

    日本のテレビはどうか。同じようなネタ、同じような番組構成で、ただ放送枠を埋めるための惰性で番組を作ってるものが多すぎる。ますます、勢いのある新興勢力へ視聴者はシフトしていくだろう。「最終戦争」はまだまだ終わらない。

  • テレビ生き残れるのかなあて本
    これをきにもう一回よみなおしたい

  • 比較的に初心者向けを意識して書いたのだろう。分かりやすく、概略を知るには充分だ。
    結局「世界」と言いつつ、メディアはアメリカを中心に回っている。
    そして、アメリカで起こっていることは、確実に日本でも起こる。(というか、すでに起こっている)
    その状況をどう分析し、把握するかだ。
    もうすでにインターネットが世界のメディアになっている。
    そう、インターネットは、決して世界に開かれたフラットなテクノロジーではない。
    つまりメディアはすでにGAFAに牛耳られているのだ。
    (もちろんメディアだけでなく、富も、個人情報すらもGAFA独占だ)
    この状況で、さぁ日本はどうするか?
    完全に出遅れたこの国で再起はあるのか?
    ついにインターネット広告がテレビ広告を超えていき、益々苦境に立たされていく。
    最終章は「さあ、どうする日本の放送業界」というお題だが、そこに著者の明確な答えは無い。
    長くメディア業界を身を置いた人だからこそ、「テレビ関係のみなさん、どうしますか?」という問いだ。
    過去の経験が全く通用しない未来だからこそ、次の世代を担う人たちに対して「自分たちで答えを見つけて生き残れ!」と

  • テレビ業界は衰退していくだろうと感じた。
    NetflixやAmazonプライムピデオの普及によりテレビを点けない人たちも増えてきており、スマートフォンで動画を見る時代に移っていくだろう。
    そんな中、テレビ業界はこの状況をどう打破していくかが今後に影響してくるだろう。
    また、Netflixなどの社長は生活していて不便に感じたことを少しでも改善して社会に貢献できるように起業し、今では大きな会社となっているが、自分で何かやるチャレンジ精神は大事になってくると感じた。

  • 話がわかりやすくてよかった。アメリカのテレビ史が学べたのはよかった。

  • 著者は元NHKの記者で、90年代前半にはTBSからニューヨーク特派員として米国でメディア関係の取材をしていた。現在はメディア関連のフリーのジャーナリストである。
    本書の目的は、グローバルに大きな変動期にある世界のメディア業界の動向をまとめ、新しいテレビの展望を示すことだという。2018年7月刊行のものだが、日欧米のメディア業界の状況がこの断面でよくまとめられている。
    特にこの数年においてはグローバルには米国企業を中心に大きな業界再編の動きが見られたため、こういうまとめは頭の整理に役にたつ。そして、グローバルでの動きに引き換え、日本ではメディア企業の再編の動きはとてもにぶいことがよくわかる。グローバル=アメリカであり、日本は特殊な事例ではないのかもしれないが。

    本書では、「テレビ最終戦争」と言いながらもNetflixとAmazonなど巨大IT企業の話が軸になっている。日本にもDAZNも含めてオンデマンドのVODサービスがかなりのペースで入ってきている。こういった企業がコンテンツに多額の資金を投入することにより、ハリウッドやスポーツ産業を含めた業界が大きく変容しようとしているのがわかる。もはや「テレビ」との境界はあいまいになり、コンテンツをいかにして届けるのかという勝負になっている。昔、マルチメディアという言葉が流行ったが、テレビ含めて複数のデバイスで映像サービスを楽しむのはもはや当たり前になった。

    また、あまり知られていないことだが、アメリカではFacebookもNFL、NBA、MLBなどのメジャースポーツコンテンツに多額のお金をつぎ込んでいる。Twitterでも、NFLをタイムラインで放映するなどアプローチを強めている。SNSとリアルタイムで行われるスポーツコンテンツは非常に相性がよいことはわかる。

    Googleも負けてはおらず、YouTubeという最大の武器を活用して、YouTube PremiumやYouTube TVで新しい映像コンテンツの楽しみ方を積極的に提供している。先日発表されたStadiaというゲームプラットフォームも上手くYouTubeのプラットフォームに組み込まれた形になりそうだ。もちろん、GAFAの一翼であるAppleもApple TV+を発表して、得意の後出しじゃんけんでの市場進出を狙っている。

    こういった新興勢力の攻勢を受けて、ケーブル業界や衛星放送業界やテレコム業界でも大きく再編されたのもアメリカのダイナミズムだ。CharterがTime Warner Cableと買収したことで、業界1位のComcastとの二社で市場の7割を占める寡占市場になった。テレコムの雄であるAT&TもDirecTVを傘下に収めるとともに、コンテンツホルダーであるTime Warnerも買収している。コンテンツ産業側でもDisneyが21世紀Foxを買収し、独自のルートで配信を模索するなど対抗する動きも見える。ケーブル会社のComcastがNBC Universalを保有しているなど、コンテンツ産業も含めて市場再編が進んでいる。こういった業界では、ルパード・バードックやジョン・マローンといった大物がまだ幅を利かせているのもこの業界ならではという感じがする。テレコム業界のAT&Tと並ぶVerizonはAOLやYahoo!を買収してVerizon Mediaという別会社として再編するなど別角度からのアプローチを行っており、この後の展開がどうなるか興味深い。こういった流れの中でも、Discovery、CNNなどの特定のコンテンツに強みを持つ事業者も活躍しているところもまたアメリカらしい。

    最終章では、日本のメディアへの期待と希望が語られる。
    広告市場では、日本でもモバイルがインターネットを抜く日が近い。市場の変化を前にして焦りが行動につながっていないように見える。もちろん、日本でも、hulu、Abema TV、TVer、NHKなどがインターネット上での映像配信に力を入れている。ケーブル業界でもJ:COMがNetflixとの提携を発表しているのをはじめ、ネットへのシフトが進んでいる。しかし、アメリカで見られるような大きな業界再編の流れは見えない。そういった観点でも日本の課題はローカル局かもしれない。本書では、インバウンド需要がローカル局の機会と語るが、おそらくはそれが大きな流れとなることは難しいだろう。アジア市場への進出の希望を著者は語るが、その前にアメリカの巨大企業がそれらの市場に乗り込むことだろう。すでに日本でも取り組んでいるように、コンテンツのローカライズを着々と進めている。

    久しぶりにメディア業界の動向をざっとまとめた本を読んだが、ものすごく新しい視点や内容があるというものではないが、情報がまとまっていて役に立つ本だと思う。

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    この本でNetflixのヘイスティングもアフリカに縁があったということがわかった。イーロン・マスク、ピーター・ティール、リチャード・ドーキンスもアフリカに住んだことがある。アフリカに住むということは、どこか視点を拡げるような原体験になるのかもしれないと、ふと思った。

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著者プロフィール

デジタルメディアウォッチャー。
1954年生まれ。早稲田大学卒業後NHK入社。BS放送の発足に参画した後、TBSに移籍。ニューヨーク特派員など海外ニュース記者を務める。その後CSデジタル放送の立ち上げなどに携わる。14年、TBS退職。以後、海外のメディア動向の調査・執筆を続けている。メディア関連審議会の委員等歴任。

「2021年 『ネットフリックス vs. ディズニー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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