常識的で何か問題でも? 反文学的時代のマインドセット (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737922

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】先の見えない時代をどう生き抜くか? 判断力、教育、政治、グローバル資本主義など「人間の生き方」をめぐりウチダ節が炸裂! キケロ、トクヴィル、カミュ、カントら古典的至言も随所にちりばめる。「AERA」連載を新書で一気読み!

感想・レビュー・書評

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  • 発刊から数年経ち、時事としてはちょっと古い話題ではあるものの内容に関しては全く遜色ないばかりか、今の政治や世事の状況を鑑みつつ読めば発見や自分では思いもつかない見識が満載です。
    私には目からウロコの見識がたくさんありました。

    先生の、「未来に対する仮説を立てて検分する」という世の中に対するあり方は私たちに、もっと広く物事を見よ、考えよ、本当のありかを見極め嘘や誤魔化しを見抜けよ、と訴えているかのようと感じました。
    たとえ仮説が外れたとしてもそれは問題ではなくて、そういう風に物事を関心を持ってみる姿勢がなくてはならないという啓発だと。
    流されてばかりではあかんですね。何が出来る出来ないの前にきちんと考えて判断するアタマをまず自分で作らなくては。

    今のような空気感の世の中では「正常性バイアス」を解除できるかどうかというのも大変大切なことですね。
    これから読んでもためになること満載な一冊です。

  • 2019年6月16日 75冊目(6-5)

  • AERA連載のコラムをテーマごと時系列に並び替え。いつもの感じ。
    想定外に応じた判断を自分で下せるようになるのは大切だけど、イエスマンほど偉くなれることを政治家とメディアのヒトが体現してるのを横目に頑張るのはしんどいよ…

  • 危機的時代の判断力とサバイバル力
    真の知的成熟とは何か
    「属国」日本とアメリカ
    地方と経済効果とお金の話
    国民国家はどこへ行くか
    情理を尽くさない政治に未来はあるか

    著者:内田樹(1950-、大田区、フランス文学)

  • いろいろな時事問題をについて、それぞれの問題をとらえる際にわたしたちが忘れてはならないことは何かということを気づかせてくれる貴重な書である。
    どれも900字の文章であるが、その内容は900字をはるかに超える重みを持っている。

  • 41 常識的で何か問題でも?

    内田樹の新刊。ここ4年ぐらいの内田樹の研究室ブログで書かれたことのトリビュート(いつものスタイル)。情報の鮮度ということで、すぐに積読の最上段へ。
    ・師を持つということからスタート。源泉から流れ出るものに身を浸すためには、心と体を解放状態にしなければならない。おのれの狭隘な思考の枠組みを打ち破ってまっすぐに受け入れ、次世代に繋げる。それが師を持つということである。毎回読む話であるけど、人は決まった話を何度も繰り返し聞くのが好き(これも内田老師の教えではあるが)なので、いちいちうなずいてしまう。
    ・レバレッジを探す人たちという話が面白かった。レバレッジを探すことが大切だが、レバレッジに既製品はなく、誰かにプレゼントされるものでもない。目の前にあるありものをまず使ってみることを通じてしか、レバレッジを探すことが出来ない。ブリコロールの話の変種かなと思う。話を聞いて変種であると判断するのは簡単だが、ブリコロールの話からレバレッジの話に持ってくるのは難しくてできそうもない。自分は中高が曹洞宗系の仏教校であったから脚下照顧という言葉になじみが深く、時折思い出す。意味は、まず自分の足元を見つめなおす自己反省を促すということであるが、自己反省を促すことは、同時に自分の身の回りにあるものや人へ感謝することも含まれているのではないかと自分は解釈している。その点、脚下照顧はブリコロールの話にも近いと思った。もう一つ、脚下照顧に近い発想を持つ物語が思い当たる。東京ディズニーランドのスプラッシュマウンテンの話だ。主人公ブレアラビットは、「笑いの国」という桃源郷を求めて旅に出る。その間、悪者のブレアベアとブレアフォックスに狙われ、返り討ちにしながらも最後は捕まってしまう。危機一髪のブレアラビットは機転を利かせ、「あのいばらの茂みにだけは投げ込まないでくれ」と叫ぶ。理由は単純で、いばらの茂みとはブレアラビットの故郷の事であり、いばらの茂みにだけは投げ込まないでくれと懇願すれば、悪者は投げ込むと相場が決まっているからである。晴れて、いばらの茂みに投げ込まれ(ここでアトラクションの最大の山場、フリーフォールが訪れる)、故郷に帰還したブレアラビットは故郷でいきいきと音楽を奏でるかつて友人たちを見て、そこが実は自分にとってのかけがえのない「笑いの国」であったことに気づく。これが、スプラッシュマウンテンの話である。ここから得られる教訓もまた、自分の足元を見つめよ、である。かなり脱線したが、読書感想文の続きを。
    ・成熟の話。成長とは、複雑さを甘受し、重層的になることであると本書で書いてあった。同時にそれは、戦争の未熟性を提唱するものである。戦争とは、全ての者を敵か味方かという2種類の箱に峻別し、敵であれば殺し、味方であれば守る。かなり少ない、単純なオペレーションで済む産物である。戦争は、世界から驚くほど複雑性を縮減する。そして、戦時中、そのさなかで全く戦争に影響を受けず、小説を書き続けた人物がいる。それが太宰治である。太宰は複雑性が縮減していく社会に生きていながら、自らの書き物の個別性と複雑性で対抗していたのである。これが成熟した日本人の像であった。
    ・言論の自由=好きなことを人々が言う権利ではなく、異論が飛び交う「場」、様々な政治的発言がなされる「場」に対する敬意と信認である。
    ・属国であるという事実。日本はアメリカの属国である。この言説に反駁できる論拠はないが、証明する事実は多くある。しかし、日本政府は日本が主権国家であることを声高に主張する。その為、日本国民の中で日本が主権国家であることに疑問を感じないこと人は多く、日本がアメリカの属国であるという人は少ない。しかし、そもそも、日本が主権国家ではないことを自覚しなければ、主権国家になる道筋は開かれない。己の欠性に気づくことが、成長のチャンスである。
    ・政府は、政策の失敗を認めず、現政策の強化でしか苦難を乗り越えられないと努力を訴える。しかし、そろそろプランBに切り替えるべきではないかという文章があった。これは難しい。組織の人間として、それが絶対的真理ではなくても一定の目標を暫定的真理として採用して全員が同じ方向を向く組織と、絶対的真理を各々が求めて様々な方向に向いている組織では、明らかに前者の方が強い。ただ、前者の組織が採用した暫定的真理の賞味期限を見極めるのはとてつもなく難しく、並みのバランス感覚では務まらない。リーダーの宿命としてその困難は降りかかる。プランBに切り替える、つまりプランAの賞味期限を見極めるのは言うは易く行うは難しだと思った。
    ・無駄にならない思考習慣。リスクヘッジとは、最悪の事態を免れる為に、一定のコストをかけることである。それでいて、最悪の事態が来なかった場合は、そのコストは100%無駄になる。しかし、それはリスクマネジメントを考える上で、当然のことである。それは今の社会において常識ではないのかもしれない。リスクマネジメントにコストをかけて、最悪の事態が起こらなかった時に、そのコストについて無駄ではなかったと認識する思考習慣を社会の共通了解にしなければならない。

  • アグリー

  • 成長しない社会を生き延びる術、金ではなくどうすれば人間らしく生きられるか?その手立てを人々は直感的に日本の豊かな山河に求めた。
    頭で考える幻想は節度がなく無限、身体には節度があり、身体を優先させる人間は、戦争を始めたり、宗教やイデオロギーに目を血走らせたりしない。
    衰退の特徴は単純になり、成長するものは変化し複雑になる。

  • 89前思春期、別名チャム世代、自分にも当てはまってびっくり。

    あとがきより
    競争社会では、誰でも可能なことを周りよりも上手にできる人が評価されるのである。
    僕は嫌だけどね。

    247長期政権が必ず腐敗する理由を説明できますか?

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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