寂聴 九十七歳の遺言 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 298
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022950444

感想・レビュー・書評

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  • R4.4.30 読了。

     寂聴様の本当の遺言になってしまいました。この本にあるようにこの世に生を受け、生きること、そしていつかは死んでいく存在であることをあらためて教えていただいた。朗らかな笑顔でいること、他者を思いやることなど、大切な教えが詰まったこの本をまた疲れてきたらそっと開いて読み返してみようと思う。

    ・「愛することは許すことです。ほんとに愛したら、何でも許せます。(中略)愛がなくなった時に、人間は許せなくなる。」
    ・「和顔施(わがんせ)」
    ・「過去を追うな、未来を願うな。過去は過ぎ去ったものであり、未来はまだ至っていない。今なすべきことを努力してなせ。(中部経典)」
    ・「人は、ほんの些細なことで自信を失って、すぐに自分を標準以下だと思って、つい『私なんか』と言いがちです。自信がないというのは自分を信じていないことです。でもね、そんな情けないことをいっていても、ほんとは誰にでも、いろんな才能があるんです。だから私なんかと思ったらダメなんです。それは自分自身に対して失礼だと思って下さいね。せっかく生まれてきたこの命を誇りにして自慢して、そして大事にしましょう。私なんかではなく『私こそ』と思って生きていきましょう。そうしなかったら罰があたりますよ。」

  • 瀬戸内寂聴さんが永眠される1年半前、京都「寂聴庵」で朝日新聞社の単独インタビュ-に応えた「九十七歳の遺言集」 ▷「自分は不幸だ」と思って笑顔を忘れた時に、不幸が倍になります。だからなるべく笑顔で楽しいことを考えて下さい。不幸が逃げて幸せなことがくっ付いてきます ▷世の中は矛盾や理不尽だらけです。死を思い煩うことはやめて、その与えられ生涯の一刻一刻を大切にして、実りある生き方をするように ▷皆さん、私が死んでもどうか悲しまないで。私はこの命の限り、愛し、書き、祈ったのだから、喜んで死んでいきましょう。

  • 笑顔が幸せを運んでくれる。分かっていてもなかなか出来ない。
    自分のやりたいことをしてもいい。好きな事をしてもいい。そうする事で、自分を大切に出来、他人にも優しくなれ、笑顔に繋がっていくと思う。
    そんな思いになれたこの本に感謝です。

  • 97歳になられた寂聴さんが、世の中や人間関係をどう見ているのか知りたくて読んだ本。

    痛快で、アハハ!と読めるけど芯をついた言葉たちでした。しんどくなったらまた読みたい。

    人間みな孤独
    優しさについて

  • 自分では選ばない本だけど、たまたま人生の先輩が貸してくれたので読んでみた。ごく当たり前の事ばかりの事柄が殆どなのに なんとなく気持ちが楽になった。

  • 第二章 「ひとり」は寂しいか
    で、救われました。

    誰かと繋がっていないと不安になってしまう、孤独がどうしようもなく辛いなど、ひとりでいる事に何かしら難しさを感じている人は、きっと少し晴れやかな気持ちになれると思います。

  • もっと長生きしてください
    「生きすぎた」なんて言わないでください

  • 瀬戸内寂聴が97歳になった2019年刊行。平成の天皇(現在の上皇)が皇太子(現在の天皇)に譲位され、元号が平成から令和になった年。
    その年からまだ4年しか過ぎていないのが、今では信じられないほど。もちろん、コロナ禍になる前。
    「愛」についての瀬戸内の思い。生涯の信念であった「生きることは愛すること」という思いは、令和の時代を生きる若い人たちにも受け継がれていってほしいと思う。

  • 昨年亡くなられてから手に。人間の業と向き合いつつ、あっけらかんと言い切るスタイルはいつもながら、歳を重ねるごとにメッセージはよりシンプルになっているような気がします。その分、心の奥深くにまっすぐ刺さり、そのままでいいんだと思え救われました。寂聴さんのように自然と人が寄ってくるにはどうしたらよいか考えさせられます。

  • 2019年に寂庵で行われた朝日新聞による単独インタビューを基に構成した語り下ろし作品。死生観、愛、孤独、人間関係など、様々なテーマについて語っている。柔らかくも真っ直ぐに流れる川のような語りが心地いい。

    死ぬことよりも今を切に生きること、愛されることよりも愛すること、その大切さを説いている。不安障害を抱えているぼくは、死への恐怖や愛されないことに絶望を感じたりすることが多い。その不安を包み込むように、表紙の寂聴さんが笑顔で寄り添って声をかけてくれているような一冊で励まされた。

    愛する人の話で、「そばにいなくても、心でその人の面影を描いて、『ああ、いい雨よ』と語りかける。片想いでもう十分。そういう存在があった方がいいですね、死ぬまで。」という言葉が素敵だった。愛することの真髄ってこういうことなのかなって感じられるエピソードだった。

    勉強になった言葉がたくさんあるので、最後に引用して終わります。

    人間が生きるとは、どういうことでしょうか。この年まで生きてきて、はっきりいえるのは、それは「愛する」ことです。誰かを愛する。そのために人間は生きているのです。

    やはり愛というのは、どの程度で自分があきらめて、相手を許すかということなのでしょう。十愛して、三返ってきたら大儲けです。それくらいが愛の相場だと覚悟した方が間違いないと思います。ただほんとは、何も返ってこないのが愛なんです。

    渇愛は私たちの煩悩の中で一番強い煩悩、抗しがたい煩悩です。見返りを求める愛情の苦しみや迷いが最も大きいと仏教では説いているのです。

    私は人間について書きたいと思い、小説の中に描いてきました。人間を書くということは、要するに人間の愛と孤独について描くことです。
    実は愛のうえにも、皮膚のように孤独が張りついています。だから孤独を飼い馴らすことこそ、私たちが生きるということなのかもしれません。

    でも、人間は孤独という同じ宿命を持っているからこそ、お互いに理解しあえるし、愛しあえるのだと思います。

    大切なことは、「ほんとは自分が何をやりたいか」ということを考えることです。そして、そのほんとにやりたいことをやったら、自分が幸せになるだけでなく、自分以外の誰かを幸せにするかどうか。そこを考えてください。

    「人間はどんな人でも、誰でも生まれてくる値打ちがあって生まれてくる。だから自分をバカにするもんじゃない。私なんかなんて、二度と言うんじゃない。今度いったらクビにするよ!」

    人間は、死ぬ時にその人の一番いい顔になる。生きている間にこびりついた何か嫌なものがすっかり消えるのかもしれません。

    ただ、世の中に矛盾や理不尽があるから、私たちは「どうしてそんなことがあるの?」と真剣に考える。するとそこに哲学が生まれる。世の中を疑問に思い、考えたくなって物語を書く。これが文学なんです。

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著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞、92年『花に問え』で谷崎純一郎賞、11年『風景』で泉鏡花賞を受賞。2006年、文化勲章を受章。2021年11月、逝去。

「2022年 『瀬戸内寂聴 初期自選エッセイ 美麗ケース入りセット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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