第二次世界大戦秘史 周辺国から解く 独ソ英仏の知られざる暗闘 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951618

作品紹介・あらすじ

人類史上かつてない広大な地域で戦闘が行われた第二次世界大戦の欧州大戦。ヒトラー、スターリン、チャーチルの戦略と野望、そして誤算──。彼らに蹂躙された、欧州・中近東19カ国「周辺国」の視点から、大戦の核心を多面的・重層的に描く。

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦を周辺国の動きから見た歴史として記している点が新しさを感じる。

    戦争に参戦した国もそうでない国も何某か関わりがあり、大義を唱えても腹の中では自国の成し遂げたいことを有意に進めるものへの糸口だったりした。

    ナチに翻弄され時代が流れ人権を無視して疑心暗鬼になるなか、国や地域単位の考え方の差異がもたらす影響についてもふれている。

    この書を読むには時間が足りず後半ナナメ読みであり評価するには恐縮なのですが教科書には載らない奥深くを違った角度から調べてある大変読み応えある一冊。

  • 大国中心の戦争観では、周辺国を「大国の争奪対象」としか見れない。
    しかし、陸続きって大変。

  • 今回のロシアの暴挙に触れて、という訳ではなく、もともと読むつもりだったもの。だけどたまたま、タイミングもバッチリということになってしまったけど。本書を読み進めると、プーチンが目指している国家像が、この時代にあるのだということがよく分かる。ただ、本書の中心は独ソなど主たる参戦国でなく、好むと好まざると巻き込まれた周辺国。各国ごとに纏められているんだけど、その順序が実に秀逸で、読者の理解を大いに助ける。またときには、一次大戦とか、あるいはもっと前まで歴史が紐解かれ、各国が置かれた立場も分かりやすく示される。一般の倍くらいの分量だし、あまり掘り下げて勉強したこともない分野だから、正直読めるかなって心配もあったけど、著者の手にかかる限り、それは全くの杞憂でした。大戦関連の他著も是非読んでみたい。

  • 山崎雅弘という戦史・紛争史家の作品を初めて読みテイストが合い、考え方や内容にに共感できた。彼について、ネットやYouTubeで人となりや作品・活動を検索すると、今活躍中のリベラルな文筆家であることがわかる。『アイヒマンと日本人』『ある裁判の戦記』『歴史戦と思想戦』などの作品も読んでみたいと思う。この分野における学者ではない気鋭の研究者との遭遇は大いに嬉しいが少し不安もよぎる。面白く読み易そうで興味が唆られ、予定の読書計画との調整が悩ましい。時間は益々限られてくるのに‥‥。
    この本は彼の専門とする第二次大戦時のヨーロッパ各国の詳細な実態分析である。当時の大国の動向や思惑と翻弄された周辺国群の推移が指導者はもとより国民大衆の目線から冷静に描写されている。各国とも民族や宗教・歴史も複雑で国家間の関係が場面によって離合集散し錯綜し、指導者の思惑や手の内も大胆で赤裸々に暴かれる。歴史の抽象性よりも人や事件・現象から組み立てる論述スタイルはテンポよく気持ち良い。従来の遠く漠然としたイメージの欧州大戦が身近になり、新たな認識が迫られる。過去に遡って因果関係を紐解く分析も新鮮だ。
    戦時にあってはリーダーの個性や見識にその国の運命が左右されるという点で、やはりヒットラーとスターリンそしてチャーチルとトルーマンなどの存在は大きく、ドゴールやチトーも気になる存在である。一方ナチスドイツとソ連に分割占領されるポーランドの帰趨と国民の抵抗は印象的である。ルーマニアやベネルクス三国、バルト三国、チェコスロバキアそして中東アラブなどの動向もわかり易く描かれている。今、火を噴いているウクライナやパレスチナ・イスラエルの問題も第一次大戦から続く火種が埋め込まれていたことがよくわかる。
    戦勝国とはなるがソ連のスターリンの政策と行動はナチスのヒットラーと同じく酷いものであった。歴史上初めての社会主義建設という隘路での対応ではあったが、彼独特の思想や政策によって犠牲は著しく増幅した。三千万の人命を奪っただけでなく、社会主義や共産主義実現という人類の歴史の可能性をも閉ざした。
    最近プーチンがソ連当時の歴史をナチスと同等に扱わないという法律を決めたが、これはまさに反対のことで、「ソ連のスターリン時代」を「ナチスのヒットラー」のように、世界中で徹底的に総括しないので、今回のウクライナ侵略のような理不尽な暴挙が行われてしまう。歴史的な「誤り」に学ぶどころか、それを誤りと認めず曖昧なまま正当化する。だから同じ誤りを繰り返す、歴史修正主義そのものである。
    山崎雅弘氏であれば、この辺のことをどう考えているのだろうか、既に書いているのかもしれない。

  • これまであまり知らなかった主要国以外についても簡潔に分かりやすくまとめられている。

  • 大国の歴史を主役で扱うことが多い中、周辺の中小国の歴史は語られることが少ないけど個人的に関心が高くて本書を購入。
    多民族が入り混じっている上に宗教や政治思想まで加わってくるから大変。侵略に対する抵抗勢力があるのは当然としても同調する勢力も各国でみられたとは。その抵抗勢力も1つに纏まらないから内戦に発展もするし、それも大国の都合であったりもする。
    強引に併合した大国を追い払った別の大国もやはり占領軍であって独立させてはくれないとか翻弄され続ける小国。
    今のウクライナ戦争このともあり、各国をもっと掘り下げて勉強したくなった良書です。
    大陸の端の島国である日本はまだ恵まれた立地だったのだと思えます。

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著者プロフィール

山崎雅弘(やまざき・まさひろ) 1967年生まれ。戦史・紛争史研究家。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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