- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784023309203
感想・レビュー・書評
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真実を伝えることで、世の中の人に尖閣諸島問題について考えてほしいとの思いから、動画をアップロードしたと説明している。
愉快犯でもなく、衝動的な行動でもなく、著者なりに判断しての行動であったことが分かります。
日本の外交が弱腰であること、一般人の防衛、安全保障に対する意識について問題提起をしている。
勇気のある行動であったと思います。すくなくとも自分にはできない。 -
まさに「外患内憂」の一言に尽きる一冊。
名もなき一海上保安官の憂国、勇気、葛藤、苦悩の記録。
多くの国民が疑問と不満と憤りを覚えた、中国漁船による尖閣諸島での違法操業に対する日本政府の対応。法治国家、主権国家であることを放棄したような政府の不可解な姿勢に対し、自らの法知識と立場を冷静に捉え、問題の本質を国民に知らせるべく勇気を振りしぼって行動している。
問題の本質からはずれた扱いをされることを懸念し、マスコミを利用せず、第三の選択としてインターネットを用い、広く世間に知らしめるという当初の目的を完遂している。
秩序を守る海上保安官として以外にも夫として、父として苦悩し、それでも正義を信じ、自分の信条を押し付ける為ではなく、国民が考えるきっかけとしての行動であることが良く伝わってきた。
これはほんの少しでも国防、外交、領土問題、または単純に尖閣諸島の違法操業に関心があれば必読の書である。
そして彼の意見に耳を傾け、それぞれが判断すべき問題である。 -
ブクログで当選しました!
尖閣諸島の中国籍の船と、日本の海上保安船が衝突した映像を、
動画サイトに投稿した本人の手記。
筆者が単なる衝動や思いつきで映像を流出させたわけでなく、
事前に犯罪に当たるのか、社会への影響がどう出るのか考えて、
悩んだ上での行動であったことがわかる。
まあ、中国や韓国の漁業権を奪いかねない強引さを記し、
日本の外交政治の弱さに警鐘を鳴らしています。
最初は、筆者の言い訳が続く本なのかな、と思ったけど、
中国や韓国、アメリカの言いなりになっている日本という図式に
筆者が怒っているのがよくわかり、興味深く読めました。 -
ブクログの献本キャンペーンで頂きました。
あの映像を最初に見た時、まだ再生数は100行くか行かないかくらいだったので、てっきり「何だガセか」と思ってスルーしましたが、翌日見てみたら凄い再生数になっていて驚いたのを覚えています。自分はほとんど一切TVのニュースは見ないので、この映像の元となった事件のことも映像が出た後どんな変化があったのかも知りません。けれど「悪法も法」という考え方を持っているので、この人に対してはどちらかと言うと悪い印象を持っていました。でも今この本を読んで、何度も泣いてしまいました。何が正しいのか分からなくなりました。何を信じれば良いのかも分からなくなりました。この国に対して、世界に対して、どうしようもない虚無感が襲ってきました。だけどこの本を読んで、本当に良かったと思っています。 -
尖閣ビデオを公開した元海上保安官が講演
http://www.ustream.tv/recorded/12686714
一色正春氏の会見で石原都知事もエール
http://news.livedoor.com/article/detail/5341810/
「sengoku38」こと一色正春氏記者会見
http://news.nicovideo.jp/watch/nw34075 -
真実というものは事実に複数の角度からアプローチしないと
なかなか見えてはこないものである。
世に情報はあふれているが、
選り分けてみると一次情報は案外少ない。
憶測、カット&ペースト、
はたまた限りなく「ねつ造」に近い情報。
自分の頭で考え、判断するためには生鮮材料が必要になる。
元海上保安官、
一色正春『何かのために sengoku38の告白』を読む。
一色が昨年12月に海上保安庁を退官していたことも
僕は見逃していた。
尖閣諸島のビデオがYouTubeに流失した事件で
あれほどの情報量が巷に流布していたことを考えると
まるで比較にならない扱いだ。
一方、一色が国家公務員の職を離れたことで
こうして著書を通じて自分の考えを
世間に伝えることもできるようになった。
一色がなぜ尖閣ビデオを流したか。
国を憂い、未来を憂い、
海上保安庁の誰もが閲覧できていた映像が
あるときを境に国家機密になる不条理を憂いている。
職務に熱心だった男が自分のクビを賭けて
映像公開に踏み切った心情がよく理解できた。
そもそも一色はC社(おそらくCNN)、
A社(おそらくアルジャジーラ)のどちらかに
尖閣ビデオを託そうと考え、
結局C社に素材を送るが公開されなかった。
また自分が逮捕されたときのことを想定して
なぜこうした行動に出たかをビデオメッセージにして
読売テレビ記者に預けていた。
自分の逮捕と同時に放映してもらう条件である。
C社ですら公開できないのであれば、
大手メディアに頼るのは無理だろう。
一色は意を決して漫画喫茶のPCからYouTubeに投稿する。
後はみなさん、ご存知の通りだ。
いったん、YouTubeで公開された後は、
NHK始めほとんどすべてのマスコミがその映像を再利用した。
一色はこう疑問を表明する。
それはテレビ局が自らの手でニュースの情報源を探さないで、
インターネットからの情報からニュースを作っていることに
ほかならないからである。本来、あの衝突事件で中国漁船が
何をしたのかを、自らが取材して正しく国民に伝えるのが
メディアの役割ではないのか。
(同書p.128より引用)
僕はこの本を読みながら、
国家と個人とメディアの三角関係について考えていた。
メディアが国家の側についてしまえば、
個人にはほぼ勝ち目はなくなる。
中国に対してどんな外交行動を取るかより、
海上保安庁の機密扱いの問題と、
情報漏洩の犯人捜しに論調がすりかえられていったのは
いつものメディアのやり口のように僕には思えた。
一色は自分の考え、迷惑をかけた関係者への謝罪、
応援してくれた人の感謝については率直に書くが、
ハンドルネーム、sengoku38の意味だけは黙して語らなかった。
尖閣事件を忘却の彼方に追いやらず、
もう一度自分でその意味を考え直すために、タイムリーな出版。
朝日新聞出版の仕事である。
(文中敬称略)