何かのために sengoku38の告白

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023309203

感想・レビュー・書評

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  • 当人の言葉で語ってくれるこの本はとても信用できる。どっかのマスコミとか専門家の客観的で信用できない話とは違う。この本でも語っているが、事件当時は情報管理にスポットが当てられていて、著者の意図とは程遠かったのだと今にして残念に思う。彼が伝えたかった事、そして各々が考えなきゃいけないことを教えてくれた。平和ボケ日本人には良い本じゃないかな。あと本書内で多く感謝の言葉を述べているのは、著者の人間性がでてて自分は好きだなぁっと。

  • 真実を伝えることで、世の中の人に尖閣諸島問題について考えてほしいとの思いから、動画をアップロードしたと説明している。
    愉快犯でもなく、衝動的な行動でもなく、著者なりに判断しての行動であったことが分かります。
    日本の外交が弱腰であること、一般人の防衛、安全保障に対する意識について問題提起をしている。
    勇気のある行動であったと思います。すくなくとも自分にはできない。

  • ブクログさんから献本として頂いた本
    普段はなかなか本を読まないので時間が掛っちゃったうえ、地震でそれどころじゃ無かったけど、なんとか読み切れた。

    読む前は一冊まるます事件の事に関して書いてあるのかと思ったが、そうではなく事件の背景から、海上自衛隊の入隊方法まで今回の事件に関連したことすべてが書いてあった。

    特に、ニュースだけでは分からない事件の背景にある歴史的背景などが書かれており、今回の事件を本当の意味で理解するのにはもってこいの一冊だった。

    また、文章が丁寧で読みやすかったので、読みやすくてよかった。

  • まさに「外患内憂」の一言に尽きる一冊。
    名もなき一海上保安官の憂国、勇気、葛藤、苦悩の記録。
    多くの国民が疑問と不満と憤りを覚えた、中国漁船による尖閣諸島での違法操業に対する日本政府の対応。法治国家、主権国家であることを放棄したような政府の不可解な姿勢に対し、自らの法知識と立場を冷静に捉え、問題の本質を国民に知らせるべく勇気を振りしぼって行動している。
    問題の本質からはずれた扱いをされることを懸念し、マスコミを利用せず、第三の選択としてインターネットを用い、広く世間に知らしめるという当初の目的を完遂している。

    秩序を守る海上保安官として以外にも夫として、父として苦悩し、それでも正義を信じ、自分の信条を押し付ける為ではなく、国民が考えるきっかけとしての行動であることが良く伝わってきた。
    これはほんの少しでも国防、外交、領土問題、または単純に尖閣諸島の違法操業に関心があれば必読の書である。
    そして彼の意見に耳を傾け、それぞれが判断すべき問題である。

  • ブクログで当選しました!
    尖閣諸島の中国籍の船と、日本の海上保安船が衝突した映像を、
    動画サイトに投稿した本人の手記。
    筆者が単なる衝動や思いつきで映像を流出させたわけでなく、
    事前に犯罪に当たるのか、社会への影響がどう出るのか考えて、
    悩んだ上での行動であったことがわかる。
    まあ、中国や韓国の漁業権を奪いかねない強引さを記し、
    日本の外交政治の弱さに警鐘を鳴らしています。
    最初は、筆者の言い訳が続く本なのかな、と思ったけど、
    中国や韓国、アメリカの言いなりになっている日本という図式に
    筆者が怒っているのがよくわかり、興味深く読めました。

  • 2011/03/06~2011/03/06
    星3.4

     ブクログの献本で頂いた。sengoku38という人物が、何をどう考え、なぜ行動したのかということに興味があったから応募した。読みやすく、文章を書くのが上手いと感じた。

     本には、尖閣諸島についての客観的考察にはじまり、"sengoku38"の行動に終わる、一連の騒動の内容が書かれていた。
     とはいっても著者はビデオ流出肯定派なので、もしかすると事実に客観性がないかもしれない。
     だから僕は、この本をビデオ流出肯定派の、1つの意見と考えて読んだ。

     結果としては、予想していた理由の1つが当たっていたことを知れた。
     どういう流れだったのかはネタバレになるのでここには書けないが、僕より年上の人がどう考え、どう行動したか詳細に書いてあったので、簡単に想像できた。

     これは感想になっているのかな……?


     余談だが、この本では"sengoku38"というIDの由来は分からない。著者は"sengoku38"について触れてはいるが、結局最後まで由来を述べていない。

  • ブクログの献本キャンペーンで頂きました。

    あの映像を最初に見た時、まだ再生数は100行くか行かないかくらいだったので、てっきり「何だガセか」と思ってスルーしましたが、翌日見てみたら凄い再生数になっていて驚いたのを覚えています。自分はほとんど一切TVのニュースは見ないので、この映像の元となった事件のことも映像が出た後どんな変化があったのかも知りません。けれど「悪法も法」という考え方を持っているので、この人に対してはどちらかと言うと悪い印象を持っていました。でも今この本を読んで、何度も泣いてしまいました。何が正しいのか分からなくなりました。何を信じれば良いのかも分からなくなりました。この国に対して、世界に対して、どうしようもない虚無感が襲ってきました。だけどこの本を読んで、本当に良かったと思っています。

  • 尖閣ビデオを公開した元海上保安官が講演
    http://www.ustream.tv/recorded/12686714
    一色正春氏の会見で石原都知事もエール
    http://news.livedoor.com/article/detail/5341810/
    「sengoku38」こと一色正春氏記者会見
    http://news.nicovideo.jp/watch/nw34075

  • 真実というものは事実に複数の角度からアプローチしないと
    なかなか見えてはこないものである。
    世に情報はあふれているが、
    選り分けてみると一次情報は案外少ない。
    憶測、カット&ペースト、
    はたまた限りなく「ねつ造」に近い情報。
    自分の頭で考え、判断するためには生鮮材料が必要になる。

    元海上保安官、
    一色正春『何かのために sengoku38の告白』を読む。
    一色が昨年12月に海上保安庁を退官していたことも
    僕は見逃していた。
    尖閣諸島のビデオがYouTubeに流失した事件で
    あれほどの情報量が巷に流布していたことを考えると
    まるで比較にならない扱いだ。
    一方、一色が国家公務員の職を離れたことで
    こうして著書を通じて自分の考えを
    世間に伝えることもできるようになった。

    一色がなぜ尖閣ビデオを流したか。
    国を憂い、未来を憂い、
    海上保安庁の誰もが閲覧できていた映像が
    あるときを境に国家機密になる不条理を憂いている。
    職務に熱心だった男が自分のクビを賭けて
    映像公開に踏み切った心情がよく理解できた。

    そもそも一色はC社(おそらくCNN)、
    A社(おそらくアルジャジーラ)のどちらかに
    尖閣ビデオを託そうと考え、
    結局C社に素材を送るが公開されなかった。
    また自分が逮捕されたときのことを想定して
    なぜこうした行動に出たかをビデオメッセージにして
    読売テレビ記者に預けていた。
    自分の逮捕と同時に放映してもらう条件である。

    C社ですら公開できないのであれば、
    大手メディアに頼るのは無理だろう。
    一色は意を決して漫画喫茶のPCからYouTubeに投稿する。
    後はみなさん、ご存知の通りだ。
    いったん、YouTubeで公開された後は、
    NHK始めほとんどすべてのマスコミがその映像を再利用した。
    一色はこう疑問を表明する。

      それはテレビ局が自らの手でニュースの情報源を探さないで、
      インターネットからの情報からニュースを作っていることに
      ほかならないからである。本来、あの衝突事件で中国漁船が
      何をしたのかを、自らが取材して正しく国民に伝えるのが
      メディアの役割ではないのか。
                     (同書p.128より引用)

    僕はこの本を読みながら、
    国家と個人とメディアの三角関係について考えていた。
    メディアが国家の側についてしまえば、
    個人にはほぼ勝ち目はなくなる。
    中国に対してどんな外交行動を取るかより、
    海上保安庁の機密扱いの問題と、
    情報漏洩の犯人捜しに論調がすりかえられていったのは
    いつものメディアのやり口のように僕には思えた。
    一色は自分の考え、迷惑をかけた関係者への謝罪、
    応援してくれた人の感謝については率直に書くが、
    ハンドルネーム、sengoku38の意味だけは黙して語らなかった。

    尖閣事件を忘却の彼方に追いやらず、
    もう一度自分でその意味を考え直すために、タイムリーな出版。
    朝日新聞出版の仕事である。

    (文中敬称略)

  • 国が滅ぶ、その瞬間を見て行動した一人の証言。

     Sengoku38にとって、ルールを徹底的に破った対応によってねじ曲げられた対応に対して、公の務めを果たす人々が思っていることを、ルールに則って公開したのは、彼にとっては公務だったのだ。
     最後まで公務員として、一部の利益ではなく、国全体の福祉のために尽くしたのだ。
     奥さんがまた立派であった。韓国人であってもこの国という共同体を、秩序を守る職務に就くSengoku38を尊敬し、支える心は、まさにかつてのよき日本人の妻である。良い家庭、良い妻を危機に晒すことがどれだけ辛かったか。それでももっと守るべきものがあると冷静に手を打っていったSengoku38。
     公務というものは何であるか。組織と個人の合間にあって、横槍や見えない意図で、この事件と問題をもみ消されていくと悟ったとき、彼にとっては義憤とかそんな感情的なものは浮かばなかった。ただ冷静に、おかしいことをおかしいと告発した。
     そしてそれは多くの公務員が、歯を食いしばってこの見えないおかしな意思決定に従いながら、いつか正しい方法でその意思決定が正しく変わるとまだ信じているのだ。
     黙々と職務に努め、国民の平和と安全のために身を省みず働いている彼らの姿。その彼らを何度もな何度でもそれを裏切ってはばからない見えない意思決定のレベルの存在。
     今の日本はその見えないレベルが制御しているならまだいい。制御もせず、場当たりに思いつきでルールを破り、思いつきで個人を傷めつけ、そのやり口がもうはっきりと見えているのにもかかわらずまだそれをしている。
     指揮も統率もそれによってすでに崩壊していても、Sengoku38もその周りも、みな堪えて踏ん張っている。上司の方も周りの方も、そして事案を起訴できなかった検事も、みな裏切られてもまだ最後の一線で国民を信じている。
     その国民と公務員の間を引き裂くその見えない何かと、Sengoku38の告発を握りつぶし、中傷や矮小化してごまかそうと結託した多くのマスコミ。だがそのマスコミの中にもこの事件のおかしさに気づける人が未だいる。
     だが、その「すべてがそうじゃない」という中にまぎれ隠れた見えない何かが、呪縛のように日本を、国を、社会を縛り、まともな判断を潰しにかかる。
     少なくともSengoku38をそうさせたのは、間違い無くその見えない何か、呪縛だったのだ。その呪縛を解き、正しいことをし、国民との信頼関係のために、Sengoku38は行動した。それは彼にとって公務だったのだ。彼に私的な思いはない。
     国益とは国民と国家の間の信頼である。その信頼があるからこそ、国民は機密を政府に管理させることを許すのである。ところが国民を見下し愚弄したその見えない何かは、何かを守ろうとしたのかしないのか意味不明な決定で、すべての信頼関係を破壊したのだ。
     矮小化されたこの問題は、その後見当違いの多くの言葉で隠蔽されつつあったが、この本は、決して「私」のよどみない慎みの中で冷静にその信頼を回復するという役割のために綴られている。Sengoku38にとって、この本もまた公務の一環であり、彼は職としての公務員をやめてもなお、公務を続けているのだ。
     告発は多くの場合全てと引返えであり、Sengoku38も海保を辞めることとなった。それがわかっていて、なおせねばならなかったほど、この日本という国・政府と、それを否定も肯定のどちらにせよ付和雷同するばかりのアジテーターとマスコミが導く未来は絶望しかない。そのなかのさらに見えないなにかがルールを法を破り、意に沿わないものを短慮で処断しておきながらそれを部内の秩序の問題であるなどというのはまさに噴飯であるが、現在の日本政府と深く考えない一部はそれをあいかわらず是としている。この国の呪縛と腐食は明らかである。それに少しでも抵抗しなければと思うに至った苦しみと心理は非常に納得出来るものであった。海の男として、公務員として、考えた末での行動だったのだ。だがそれは徹底的に矮小化されてしまった。
     最後にSengoku38に部内部外かかわらず多くの同意する意見があったことが救いに思えた。もう誰にも正せないこの秩序と信頼の崩壊を考えると、Sengoku38が船の食堂のテレビで見た中国人船長の釈放の一報は、まさにこの国が滅ぶまたひとつの姿だったのだ。同僚たちのどよめきがそれを表していると読んだ。
     だがそれでも彼らは信じ続け、守り続け、そして裏切られ続ける。
     国が滅びるということは、こう言うことなのだ。
     ただ、こういう人々がいる限り、国が滅びても本質的な国は滅びないと私は確信する。たとえ焼け野原になろうとも、またやり直せる。
     読了後、そんなかすかな希望を持った。

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