新世代努力論 「恵まれた世代」は判ってない。これがぼくらの価値観だ。
- 朝日新聞出版 (2014年7月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784023312760
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学評論随筆その他】「努力すれば報われる」というのは、破滅的な考え方だ──86世代の人気ブロガー・イケダハヤトが、同世代の生き方、考え方を掘り下げて紹介。読めば、若者の行動が浮き彫りになる。現代社会を読み解くための必読の書。
感想・レビュー・書評
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「最近の若者は欲がなくてダメ」
年配のおじさまたちがしばしば口にする言葉です。
40歳の私は若者ではないですが、この言葉を耳にするたびに不快になります。
若者が置かれている現状を、ご理解ないのではないでしょうか。
経済は低迷し、雇用は不安定、人口減少で経済のパイは今後も縮小することが確実で、年金だってどうやら満足にもらえそうもない。
上り坂を上っていた時代とはまるで違います。
まず現実を直視してください。
そんな厳しい状況なのに、たとえば今の若者がかつてのバブル世代のようなギラギラとした欲望を抱え、かつまたその実現に邁進しようとしたらどうなるでしょう。
犯罪は増加し、社会が不安定化するのは容易に想像がつきます。
そうなったら責任を取ってくださいね。
私自身は、現代の若者に欲がないのは生来賦与された性質ではなく、外部環境への順応なのだと数年前から考えるようになりました。
さらにいうと、私は、倹約的でつつましやかな生活を送る今の若者に、古き良き日本人の姿の一端を垣間見ます。
例によって、前置きが長くなりました。
本書は1986年生まれのプロブロガーの書いた「努力論」。
「努力すれば報われる。頑張れば、夢は叶う。そういう古い考え方は、もうやめませんか」(「はじめに」から)。
―と主張している本です。
私は共感を覚えます。
ただ、抵抗のある方は多いでしょう。
「努力を否定するとは何事か」
とお叱りを受けそうです。
でも、どうでしょうか。
厳しい時代と、先ほど書きました。
「こういう時代に、『努力すれば報われる』という考え方を内在化してしまうと、まず第一に自分の身を、次に他人の身を滅ぼすことになります」(P27)
イケダさんは「努力はスキル」だとも述べています。
「他者から認められ、自己肯定感を適切に育んでもらうことから伸びていく」(P70)後天的な才能です。
ですから、他人を「努力不足」と批判するのは間違っています。
イケダさんは「努力」ではなく、「没頭」を勧めています。
イケダさん自身はかつてサラリーマンでしたが、仕事に没頭できなかったそうです。
でも、ブログには没頭することができ、ついには生業にしてしまいました。
ブログで生計を立てるなど、20年前なら想像もつかなかったでしょう。
インターネットのおかげで職業が多様化しているのは、好ましい変化かもしれません。
ちなみにイケダさんは今年6月に東京から高知市に移住したそう。
徒歩と自転車で完結する生活、段違いによい野菜の品質、情報へのアクセスもインターネットがあれば問題なく、収入もブロガーなので問題がなく、それどころか移住したことで「収益性が高まっていく予感がしています」とのこと。
東京の喧騒を離れ、田舎(イケダさんによれば、それほど田舎でないそう)生活を存分に楽しんでいる様子を「あとがき」に書いてます。
そして、こう語ります。
長いですが、とてもとてもとてーも共感したので引き写します。
「そんな新天地で今後、仕掛けていきたいのは『クリエイター移住』です。ぼくのように『ネットとPCさえあれば生計が立てられる』人は間違いなく増えていますし、今後も増えていくでしょう。そういう手に職を持った人々が全国に『散って』いけば、間違いなく、日本はワクワクする国になっていくと思うのです。クリエイティブな力が東京に一極集中している現状は、とてももったいないのです」
先日、日本創成会議が、人口減少でほぼ半数の自治体が消滅する可能性があるとの衝撃的なレポートを発表しました。
地方ではまるで明るい未来が描けない昨今ですが、イケダさんの話には勇気づけられる思いです。
私もワクワクします。
イケダさんは書いています。
「まだ東京で消耗してるの?」
知事、ぜひとも北海道に東京からクリエイターを呼び寄せましょうよ。
長くなりました。
年配のおじ様たちにとっては歯がゆく映る若者たちですが、社会貢献意識の高さなど旧世代にはなかった美点と呼べる特性も備えています。
温かく見守ってあげようではありませんか。
そして、必要とあらば手を差し伸べましょう。
タイトルからは想像もつかないかもしれませんが、そんなふうに前向きにさせられる読書体験でした。 -
努力すれば報われる、は幻想。
「セカイラボ」にアウトソーシングする。
『21世紀の歴史』下層ノマドが登場する。
雇用の総量の減るスピードが速すぎる。創造的な仕事、または肉体労働だけが残る。
やっても駄目だったとき、だれに責任が擦り付けられるのか。努力すれば報われる、は傲慢な考え方。
「リブセンス」の村上社長。普段のお金は使わない、からこそかっこいいと感じる。
ブロガーはノマド化できる。ツイッターやFacebookは情報収集の道具としてだけ使う。
そもそも人間は平等ではない。みんな一緒ではない以上、努力だけで結果は決まらない。
「ハームリダクション」より危険性の少ないドラッグを与える=努力不足を責めない。炊き出しと同じ。努力は客観的に見ることは不可能、という前提に立っている。
他者からの影響を受ける。
ダメなのは自分がダメ、だからではなく環境がたまたま悪かったから。
努力すれば叶う、は嘘だが、夢をかなえたければ努力するしかない、は本当。
競争に勝つこと、は困難。競争から降りること。
努力すると自分に言い訳ができる=結果に対して甘くなる。半面で他人に厳しくなる=結果が出ないのは努力が足りないから。
努力して向かわれるとは限らないが、努力を何気なくしましょう。没頭することは努力にはならないはず。 -
努力が恵まれるということはあるわけではない。
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イケダハヤトの考え方が個人的にとても好きなので面白かった。時代の変化を分かりやすく噛み砕きながら、今後の生きるすべを教えてくれる良書だった。
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努力し過ぎて心が疲弊してしまっている人が読むと、新たに前向きになれて良いかも。
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ブログの読者ではないし、努力が報われないということに新しさを感じたわけではないけれど(認識済み)、イケダハヤトさんの本を読んでみたく手に取った。収入と生活、働き方の関係という点については、共感する部分が多く、いくつかヒントをもらったのでメモしておく。
・この国で働くことが辛くなったら、生活のハードルが低い新興国に移住するのもあり(←私とパートナーにとっては、割と現実的に考え得る話し)
・ノマドの働き方に関して、出勤しなくても働けるのに満員電車にのることに理不尽さを感じる、という点に共感(←感じるポイントに共感。たいがいPCがあればどこでも仕事ができる。ここ数年、自分もそんな働き方)
・教育についてもコストは着々と下がっている(→確かに!出てくるSkype英会話やMOOCs、ドットインストール、チェックしてみよう)
この本を読んで...
自分にとって幸せとは何か。
そのために、どんな努力ができるか。
改めて考え始めている。
(一番に浮かんだのは、家族が笑顔で、その人にあったペースでのびのび生きていることだった。私はそのために何ができるか。度々、時間をおいて考えてみよう)
私自身、こうした意見を建設的に語れるよ...
私自身、こうした意見を建設的に語れるようになった時代にも羨望すら覚えることがありますが、実に共感することができる内容だと思います。70年代って、そういうことを主張しきれない弱さがあるとも感じています。
でも、60年代以前と80年代以降をやさしく強くつないでいくことに意義のある年代でもある、と感じています。